変な話『被告犬』

 ある日、犬の鳴き声が「ワン」から「メ〜」に変わった。
可愛い小型犬達は、今まで以上に可愛がられたのだが、猛犬や大型犬達の威厳はなくなってしまった。「猛犬注意」のシールは意味を無くし、調子に乗った人間達は猛犬達を可愛がろうとした。

 その結果、猛犬に噛まれ大怪我を負う若者達が続出し医療は逼迫した。この出来事は社会問題となり、国会では人間達の罵り合いが連日続いた。

 変化に馴染めなかった猛犬の中には、「メ〜」の鳴き声を恥じて自分の舌を噛みちぎる犬も現れた。

 この一連の猛犬達の振る舞いは、糾弾され法廷にも立たされることとなった。証言台に立たされた猛犬達は自分達の鳴き声では無いと、一切の発言をせず黙秘を貫いた。

 裁判に負けた猛犬達は羊達に混ぜられる事となった。

「羊が一匹。羊が二匹。犬が一匹。羊が三匹。羊が四匹。犬が二匹…。」

 三匹に一匹の回数で人間達が眠れない夜、登場させられる存在にまで成り下がってしまった。

 数日後、我慢の限界を迎えた猛犬達は、羊達を惨殺してしまった。
人間達はそのショックから不眠症に陥り、世界大不眠時代の到来を迎える事となるのであった。


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