最新学習歴を更新する
最近何人かの識者の方から、「最終学歴ではなく最新学習歴を更新しよう」というお話を聞きました。大変興味深い言葉だと思います。
「最新学習歴」の概念の提唱者は、京都芸術大学 副学長の本間正人先生のようです。本間先生が「最新学習歴」について説明している20分程度の動画があったため、見てみました。説明内容をいくつかご紹介します。
・最終学歴の貯金でずっと生きていくのは不可能。社会の変化がゆったりしている環境下ではそれでも通用したかもしれないが、これだけ変化が速くなると最終学歴の維持だけではやっていけない。
・変化に対応できる人や組織が生き残る。場合によっては、今まで常識とされてきた概念を捨てることも重要で、「アンラーニング」がますます必要となる。アンラーニングするためには、新しいことを学び続ける必要がある。
・学ぶことは本来、楽しいことであり、生きるために必要なこと。ただ、学校教育ではそのことが不十分で、本来「学ぶための場」であるべきなのが、「教えるための場」という講師主導の環境設定になってしまっていた。本来の場づくりのためには、講師の役割も、ティーチャーからファシリテーターになっていくこと、1対1で可能性を引き出していくコーチとしての関わりをしていくことが、従来以上に必要となる。
・かつては最終学歴も重要な判断要素のひとつとなって、管理職を務めることができると判断されていた。これからは、管理職を務めることができることを示すエビデンス(証拠・裏付け)が必要になってくる。そのエビデンスをつくるためにも、継続的な学習が必要となる。
・子供に「勉強しろ」と言っている親が学んでいないと、子供が勉強するわけがない。
上記の「子供」と「親」を「部下」と「上司」に置き換えると、企業内でも全く同じ構図になりますが、本間氏の指摘によると日本企業ではこの構図が起こりやすくなっていると受け止められます。次のような指摘もありました。
・日本と米国の大きな違いは、エグゼクティブ・デベロップメント(経営者教育)。部長以上の人たちに対する教育投資の厚みが全然違う。米国だと、例えば経営幹部個人が年額3万ドルを会社費用として払ってコーチを雇うのも当たり前で、AMP(幹部候補育成教育)に10万ドルかけることも一般的。これらが日本企業では非常に少ない。
・日本企業の人材育成投資は、「ふたこぶモデル」になっている。新入社員教育と管理職昇格時教育への投資が厚い(これら2つがピークのこぶ)が、それ以外は少ない。もちろんこれらの教育は重要だが、エグゼクティブ層に対する投資が費用対効果が最も高い。CEO、COOへの投資も極めて大切ながら、日本企業では極めて少ない。
日本企業の教育投資に関する現状は、そのまま米国企業と日本企業の力の差を生み出す要因のひとつになっていると想定されます。この現状を変えていく必要性について、本間氏は「最新学習歴の重要性」という切り口で説いているのでしょう。
先日のコラム「新卒社員向けの英才教育」では、新入社員向けに経営教育プログラムを行っている企業様を取り上げました。この取り組みは、まさに質の高い学習によって最新学習歴を更新する機会をつくり、そのことによる成長でパフォーマンスの向上と定着率の向上を高めた事例だと説明することができます。
https://note.com/fujimotomasao/n/nad293da5b6ed
加えて、同社様において2年目以降のステージでの育成が課題だということにも触れました。これは、「ふたこぶ」のうち最初のこぶ=ピーク以降の教育投資が仕組み化されていないため、ピークからの落差があるという、上記の視点にそのまま当てはまる課題だと言えるでしょう。
続きは、次回取り上げてみます。
<まとめ>
日本企業では、最新学習歴を更新する取り組みに改善の余地がある。