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Hashirigaki

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I'm here.I'm glad your there 2003年4月から地域情報誌フジマニに連載している編集長コラム「Hashirigaki」をまとめました。
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#hasirigaki

とびきりのアイディア

came up with! 俺すごいこと思いついたんだよ! と連れの若者に電車の中で熱っぽく語る20 代くらいの若者がいた。 「雑貨とか洋服とかを売るお店を作るときに、いちばんキツいのは商品を買い揃えることじゃん?  売れたら儲けだけど、売れなかったら持ち出しで儲からないじゃん。だから、商品をお店が買うんじゃなくて…っていうビジネスなんだよ! 商品って、それを作ってる人はお店に商品が並ばないと売れないわけじゃん? だけど、お客さんはその商品を買ってくれるかどうかわからないじ

生まれゆく場所

the living room この世界を生きるためには支えや、よりどころが必要だ。 その支えがなんなのか。それはそれぞれの立場や、生きかた、あり方によって違うだろうけれど、でもきっと誰かに必要とされているという感覚や、家族や、大切な人、共に築こうとする誰かと描く未来のビジョンが、その支えになるのだろう。 そんな支えがある日突然消えてしまったら、一体どうしたらいいんだろうか。きっとおろおろして、一歩も動けなくなって、ぽろぽろ泣いて、自分も消えてしまいたくなるかもしれない。

ちいさな力の使い方

Greatful leverage power 「テコ」が好き。「テコ」というものが好き。「テコ」という言葉が好き。押しても引いても、ビクともしないような大岩をも動かし、大きな大きな「なにか」を作り出す、小さな力を大きく使う工夫。そこには、人間という弱い存在の必死さと、純粋さとを感じる。太古の昔から、人は大きな力を求め続けてきた。その努力の結晶が、今の科学技術の粋なんだろうと思う。人力。マンパワーというものを使わなくなって久しい。いつしかパワーの担い手は人力から家畜となり、

幸せのベクトル

fun to the life 最近の若い者は…というセリフは、紀元前エジプトの時代から吐かれてきたそうだ。 新人類とか、ゆとり世代とか、さとり世代とか、わけのわからないものをカテゴライズして安心をするのはいつだって怖がりの自称ナイスミドルたち。特に日本は民族も宗教も文化もほぼ単一だから、異質なものへの同調圧力が強いのだと思う。もちろん学校や会社といった組織に所属することは少なからずその文化に自分を合わせることだけれど、それがそもそも「変だな」って多くの普通のひとが気付き始

大きな手を持って生まれて

hand to hand ちょっと前、カフェウィークでいろんなひとの「手形」を並べるという出し物をしていた海樹というおみせがあって、その一群におれも加わって手形を飾ったことがあった。ピンク色のインクを塗って色紙に押し付けた手形。あとあと聞いたら、お店に並べた手形のなかで俺の手形が一番くらいにおおきかったんだそうだ。 大きな手を持って生まれた俺だけど、割と細やかな作業が好き。A型気質全開で、日曜大工とか凝って作っちゃう。だけどやっぱり、どんなに大きな手を持って生まれても持ちき

あきらめの悪さという名の才

eight years ago. 昔の日記が出てきたので、読む。高校三年の頃の俺は自分が子供であることがとにかく不満で、未熟者扱いされることが本当にイヤだった。だからどうにかして一人前に...一秒でも早く社会に出て自立する、そんなことをずっと考えていたような気がする。でも、それでいて十人並みの生活じゃ嫌だ...っていうからタチが悪い。自分はもっと他人とは違う道を行くんだって何の根拠もなく考えていた。いま思えば勉強もスポーツも、なにひとつモノになっちゃいなかったのにね。それか

肋骨という名の心のふるい。

Nice to meet you. 音楽や映画、スポーツなど、その全てが俺 は好きで、読んで、観て、楽しんで、その一 瞬心を奪われ満たされるのだけれど、気 付けばいつだって心の中から最初の感動 や希望はすり抜けて、あらためて拾い上 げる感動のかけらはこれっぽっちしかな い。でもそれは悲しみや、苦しみや、つら さも同じなんだ。心が打ち砕かれるよう な苦しみも、悲しみも、少しずつ薄れてい き、あの頃つらかったことのかけらは気 付けばこれっぽっちになっている。いい も悪いも、思い