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肋骨という名の心のふるい。

Nice to meet you.

音楽や映画、スポーツなど、その全てが俺 は好きで、読んで、観て、楽しんで、その一 瞬心を奪われ満たされるのだけれど、気 付けばいつだって心の中から最初の感動 や希望はすり抜けて、あらためて拾い上 げる感動のかけらはこれっぽっちしかな い。でもそれは悲しみや、苦しみや、つら さも同じなんだ。心が打ち砕かれるよう な苦しみも、悲しみも、少しずつ薄れてい き、あの頃つらかったことのかけらは気 付けばこれっぽっちになっている。いい も悪いも、思いが全て心に残っていったら、 きっといつかはパンクしてしまう。だから、 思い出はひとりでに小さくなっていくの だ。...いや、もしかしたら、何かが知らな いうちにふるいにかけてくれていて、そ の感情の結晶だけしか残らないようにな っているのかも知れないな。例えばあの ザルみたいなカタチの肋骨っていうもの は、そのためにああいうカタチをしてい るのかも知れない。思い出の「ふるい」の 役目があるのかも知れない。でも、そうや ってせっかく残った大事なかけらも、注 意しないと知らないうちに肋骨のスキマ から転がり落ちてしまう。だから心を亡 くすほど忙しいときは危ないのだ。だか ら時折、自分の心の心配をしたいと思う のだ。自分の心のなかに、大事なものがち ゃんと無くならず、鎮座ましましている かどうか。自分を変えてくれた「かけら」が、 自分の中に、しっかりとあるのかどうか。

【地域情報誌フジマニvol.27(2006年3月)掲載の編集長コラムからの転載です】

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