とびきりのアイディア
came up with!
俺すごいこと思いついたんだよ! と連れの若者に電車の中で熱っぽく語る20 代くらいの若者がいた。
「雑貨とか洋服とかを売るお店を作るときに、いちばんキツいのは商品を買い揃えることじゃん? 売れたら儲けだけど、売れなかったら持ち出しで儲からないじゃん。だから、商品をお店が買うんじゃなくて…っていうビジネスなんだよ! 商品って、それを作ってる人はお店に商品が並ばないと売れないわけじゃん? だけど、お客さんはその商品を買ってくれるかどうかわからないじゃん? だからお店は商品を買ってくれないっていう負の連鎖があるわけ。だから俺のビジネスはそれを全て解決する方法を編み出したの。まず、俺はカッコイイお店をオープンするわけ。そうするとカッコイイから人が集まるじゃん? そうしたらそこに集まった人が商品を買う可能性があるから、俺はその可能性のある『場所』を商品を売りたい人に提供するのよ。場所代とかとると商品を売る人は売れなかった時にかわいそうだから、売れた時にだけその売り上げから半分とかもらうの。売れなかったら商品を返して、売れる商品だけを並べればいいわけだから、それだとお互いリスクないし、ウィンウィンじゃん? 売れれば売れただけ儲かるし、このビジネス最高じゃね?」
そう熱っぽく饒舌に語り、したり顔の彼。
やや大きめのスーツ姿。カラーシャツの上で踊る派手なネクタイとタイピンが、興奮した笑顔と同じくらいにキラキラしている。対して、黙ってそれを聞いていた濃赤のバックパックを背負ったTシャツの彼は無表情のまま、一瞬の間を置いて言った。
「それは委託販売という」
思わずうなずく俺。
でも、とびきりのアイディアなんてそんなもの。陳腐だろうがなんだろうが、大事なのは、それを形にしていけるか、だ。
【地域情報誌フジマニvol.129(2017年6月)掲載の編集長コラムからの転載です】
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