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何処までもやせたくて

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#痩せ姫

何処までもやせたくて(1)ちゃんと食べない!

「ちゃんと食べてる?」

母からのメールに、そのフレーズを見つけた瞬間、浮き浮きしていた気持ちが一気に落ちた。
ちゃんと食べたくないから、一人暮らし始めたのに。
何も新生活がスタートして早々に、そんなこと言ってこなくてもいいじゃない、って。

でも、メールだけならまだマシか、と思い直してみる。
かれこれ二年以上も、そういう言葉、聞かされ続けてきたから。

ちゃんと食べてる?
ちゃんと食べたの?

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何処までもやせたくて(2)やせる街で、やせる生活。

東京に引っ越して、初めての日曜日。

生活に必要なものを買うために、渋谷に出た。

大学の下見や受験で来たときも思ったことだけど、東京のコって本当に細い。
春物の薄いコートをきゃしゃな感じで着こなしてる姿を見ながら、
自分がますますデブに思えてきて・・・
短めのスカートをはいてきたことを、後悔した。

でも、その分、やせなきゃっていうモチベーションも上がるから、
私にとってはちょうどいい。
甘いも

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何処までもやせたくて(3)栄光の記録

新生活も少しずつ落ち着いてきて、今日の午後はまったりと過ごした。
自分の古い日記を読み始めたら、ついつい惹きこまれたりして。

日記をつける習慣は小4のときからだけど、その頃から「やせたい」とか、
「ダイエットしなきゃ」っていう言葉が出てきて、我ながら、
根の深さに感心してしまう。
子供なのだから、体重が増えていくのは当たり前のことなのに、
身体測定で、数字が大きくなっていくのが、いやでいやで仕方

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何処までもやせたくて(4)ダイエットが友達

バイトが、決まった。
近所のファミレスで、週三日。
うち二日は深夜から早朝にかけてだから、時給も悪くない。
それに、体重を減らすには睡眠時間を短くすればいい、ということも、経験としてわかってる。

ジムにも通い始めたし、やせるためのルールもいっぱい作った。

一日の摂取カロリーは、1000キロカロリー以内。
夜八時以降は、食べない。
お菓子も、禁止。

食卓の上には、食べていいものと食べてはいけな

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何処までもやせたくて(5)減る体重、増える自信

食べていいものだけを、食べていいだけ食べる、という生活を続けるうち、
あの頃の感覚が、甦ってきた。

高1の冬から、高2の夏にかけて、15キロ以上のダイエットに成功したあの頃の感覚。

「やせたね」と言われ、注目を浴びるスターのような気分はもちろん、
体重計の数字を減らして、記録を更新していくアスリートみたいな達成感や、
理想の体型をデザインできているという、アーティスティックな陶酔感、などなど。

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何処までもやせたくて(6)守れない約束

東京には、大好きな伯父・伯母が住んでいる。
母の姉と、その夫にあたる人。

二人とも、子供がいないせいか、私のことをすごく可愛がってくれていて。
伯父は、最初の姪の私に我が子のように接してくれるし、
伯母は、妹にひけ目を持つ私に、同じ姉の立場から理解を示してくれる。

上京が決まったときには、すごく喜んで、
「落ち着いたら、絶対、遊びに来なさいね」
と、言ってくれた。

それが昨日、実現したのだけ

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何処までもやせたくて(7)草食?肉食?

東京で、初めての友達ができた。

同じファミレスで、ほぼ同時期にバイトを始めた子。
年齢は1コ上だけど、一浪してるから、彼女も春から大学生だ。

火曜の深夜に、ローテーションが一緒で、すぐに意気投合した。

というより、私が彼女のファンになった、という感じかな。

なみ(ホントは漢字だけど、平仮名のイメージなんだ)ちゃんは、
とにかくきゃしゃで、可愛い。
身長は155センチで、体重は37キロらしい

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何処までもやせたくて(8)見えないライバル

また、デパ地下に行ってしまった。
これで、三日連続。

理由は、なんとなく落ち着くから、かな・・・

二月まで実家でしっかり食べさせられていた私は、
一日千キロカロリー以内という食生活にまだ慣れていなくて、
時々、空腹を感じてしまう。

そんなとき、デパ地下をぶらぶらすると、空腹がまぎらわせる。
カラフルなデザートや、季節感もあるお惣菜を眺めているだけで、
いろいろなものを食べた気になって、お腹が

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何処までもやせたくて(9)オバサンのボディイメージ

「あなた、やせたわねー。ガリガリじゃない。
ダイエット、もう、やめたほうがいいわよ」

スポーツクラブでいつも顔を合わせるオバサンに、突然、そう言われた。

ウォーキングをして、プールで泳いで、サウナで温まっていたときのこと。

「そうでもないですよー。まだまだって感じです」
なんて、適当に答えたけど、内心、ちょっと嬉しかった。

一人暮らしを始めて、ダイエットを再開してから、一ヶ月。
それなりに

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何処までもやせたくて(10)ダイエット向きの性格

テニススクールは、中高年の人が主体だった。
正直言うと、ホッとした気分。
同年代の子がいると、いろいろ気をつかってしまうから。

なぜ、テニススクールなのかというと・・・
先週、大学でテニスサークルに入った。
理由は「大学生っていえば、やっぱりテニスかなぁ」という、かなり安易なもの。
それと、中学のとき、本当はテニス部に入りたかったのに、
定員オーバーにともなう抽選にはずれ、陸上部になってしまった

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何処までもやせたくて(11)昼食の憂鬱

いよいよ授業が始まって、
怖れていたことが、現実のものになりつつある。

それは、お昼のこと。
二日続けて、しっかり食べてしまった。
食欲に負けたわけではなくて、クラスの友達数人と一緒だったから。
すぐに友達ができたことは、喜ぶべきことなのだけど、
ダイエットには、正直、邪魔かもしれない。

最初、コーヒーだけにしようと思ったら、
「もしかして、ダイエット? そんな必要、全然ないじゃない」
「そう

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何処までもやせたくて(12)30キロ台!

一昨日の夜、30キロ台を記録した。

39.8キロ。
それから5回計ったけど、一度も40キロは超えてない。

今朝は、39.2キロ。
このまま、30キロ台でいられそうな気がする。

約一年半ぶりに、体重計の数字の左端が「3」を示したときは、
感激で、涙が出そうになった。
達成感? いやいや、まだまだ通過点にすぎないけど、
これで、自分のこと、少しは好きになれそうで。

前回、ダイエットしたときもそ

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何処までもやせたくて(13)他の子がやせるのは・・・

家庭教師のバイトが入った。

数日前、東京の伯母から電話が来て、
「知り合いのお嬢さんが、今度、高校受験なのだけど、
家で勉強を見てくれる人を探してて。
やってみる気、ないかしら?」
って。

自分にできるかな、って気もしたけど、すぐにやることにした。

今はいろんなことに挑戦したいし、買いたいものもある。
誰かを教えるってことにも、少し興味を感じたし。

じつのところ、伯母は、私がファミレスのバ

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何処までもやせたくて(14)骨との再会

「まだダイエットしてるの?
骨が出てきちゃってるじゃない、胸とか、腰とか」

スポーツクラブで、また、やせすぎを指摘された。

前に、私のことを「ガリガリ」って言ったオバサン。
会うたびに言われてる気もするけど、正直、めんどくさい。
心配してくれてるにしても、ありがた迷惑だし、
もしかしたら、嫉妬なのかもしれないし。

でも、そのときはピクッと反応してしまった。

そして、即チェック。
本当に、骨

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