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エフ=宝泉薫
2019年4月14日 08:04
「ちゃんと食べてる?」母からのメールに、そのフレーズを見つけた瞬間、浮き浮きしていた気持ちが一気に落ちた。ちゃんと食べたくないから、一人暮らし始めたのに。何も新生活がスタートして早々に、そんなこと言ってこなくてもいいじゃない、って。でも、メールだけならまだマシか、と思い直してみる。かれこれ二年以上も、そういう言葉、聞かされ続けてきたから。ちゃんと食べてる?ちゃんと食べたの?ち
2019年4月16日 11:16
東京に引っ越して、初めての日曜日。生活に必要なものを買うために、渋谷に出た。大学の下見や受験で来たときも思ったことだけど、東京のコって本当に細い。春物の薄いコートをきゃしゃな感じで着こなしてる姿を見ながら、自分がますますデブに思えてきて・・・短めのスカートをはいてきたことを、後悔した。でも、その分、やせなきゃっていうモチベーションも上がるから、私にとってはちょうどいい。甘いも
2019年4月18日 07:28
新生活も少しずつ落ち着いてきて、今日の午後はまったりと過ごした。自分の古い日記を読み始めたら、ついつい惹きこまれたりして。日記をつける習慣は小4のときからだけど、その頃から「やせたい」とか、「ダイエットしなきゃ」っていう言葉が出てきて、我ながら、根の深さに感心してしまう。子供なのだから、体重が増えていくのは当たり前のことなのに、身体測定で、数字が大きくなっていくのが、いやでいやで仕方
2019年4月20日 10:28
バイトが、決まった。近所のファミレスで、週三日。うち二日は深夜から早朝にかけてだから、時給も悪くない。それに、体重を減らすには睡眠時間を短くすればいい、ということも、経験としてわかってる。ジムにも通い始めたし、やせるためのルールもいっぱい作った。一日の摂取カロリーは、1000キロカロリー以内。夜八時以降は、食べない。お菓子も、禁止。食卓の上には、食べていいものと食べてはいけな
2019年4月23日 13:57
食べていいものだけを、食べていいだけ食べる、という生活を続けるうち、あの頃の感覚が、甦ってきた。高1の冬から、高2の夏にかけて、15キロ以上のダイエットに成功したあの頃の感覚。「やせたね」と言われ、注目を浴びるスターのような気分はもちろん、体重計の数字を減らして、記録を更新していくアスリートみたいな達成感や、理想の体型をデザインできているという、アーティスティックな陶酔感、などなど。
2019年4月27日 10:04
東京には、大好きな伯父・伯母が住んでいる。母の姉と、その夫にあたる人。二人とも、子供がいないせいか、私のことをすごく可愛がってくれていて。伯父は、最初の姪の私に我が子のように接してくれるし、伯母は、妹にひけ目を持つ私に、同じ姉の立場から理解を示してくれる。上京が決まったときには、すごく喜んで、「落ち着いたら、絶対、遊びに来なさいね」と、言ってくれた。それが昨日、実現したのだけ
2019年4月29日 15:58
東京で、初めての友達ができた。同じファミレスで、ほぼ同時期にバイトを始めた子。年齢は1コ上だけど、一浪してるから、彼女も春から大学生だ。火曜の深夜に、ローテーションが一緒で、すぐに意気投合した。というより、私が彼女のファンになった、という感じかな。なみ(ホントは漢字だけど、平仮名のイメージなんだ)ちゃんは、とにかくきゃしゃで、可愛い。身長は155センチで、体重は37キロらしい
2019年5月1日 09:49
また、デパ地下に行ってしまった。これで、三日連続。理由は、なんとなく落ち着くから、かな・・・二月まで実家でしっかり食べさせられていた私は、一日千キロカロリー以内という食生活にまだ慣れていなくて、時々、空腹を感じてしまう。そんなとき、デパ地下をぶらぶらすると、空腹がまぎらわせる。カラフルなデザートや、季節感もあるお惣菜を眺めているだけで、いろいろなものを食べた気になって、お腹が
2019年5月2日 06:16
「あなた、やせたわねー。ガリガリじゃない。ダイエット、もう、やめたほうがいいわよ」スポーツクラブでいつも顔を合わせるオバサンに、突然、そう言われた。ウォーキングをして、プールで泳いで、サウナで温まっていたときのこと。「そうでもないですよー。まだまだって感じです」なんて、適当に答えたけど、内心、ちょっと嬉しかった。一人暮らしを始めて、ダイエットを再開してから、一ヶ月。それなりに
2019年5月6日 08:33
テニススクールは、中高年の人が主体だった。正直言うと、ホッとした気分。同年代の子がいると、いろいろ気をつかってしまうから。なぜ、テニススクールなのかというと・・・先週、大学でテニスサークルに入った。理由は「大学生っていえば、やっぱりテニスかなぁ」という、かなり安易なもの。それと、中学のとき、本当はテニス部に入りたかったのに、定員オーバーにともなう抽選にはずれ、陸上部になってしまった
2019年5月8日 15:34
いよいよ授業が始まって、怖れていたことが、現実のものになりつつある。それは、お昼のこと。二日続けて、しっかり食べてしまった。食欲に負けたわけではなくて、クラスの友達数人と一緒だったから。すぐに友達ができたことは、喜ぶべきことなのだけど、ダイエットには、正直、邪魔かもしれない。最初、コーヒーだけにしようと思ったら、「もしかして、ダイエット? そんな必要、全然ないじゃない」「そう
2019年5月10日 09:14
一昨日の夜、30キロ台を記録した。39.8キロ。それから5回計ったけど、一度も40キロは超えてない。今朝は、39.2キロ。このまま、30キロ台でいられそうな気がする。約一年半ぶりに、体重計の数字の左端が「3」を示したときは、感激で、涙が出そうになった。達成感? いやいや、まだまだ通過点にすぎないけど、これで、自分のこと、少しは好きになれそうで。前回、ダイエットしたときもそ
2019年5月13日 13:02
家庭教師のバイトが入った。数日前、東京の伯母から電話が来て、「知り合いのお嬢さんが、今度、高校受験なのだけど、家で勉強を見てくれる人を探してて。やってみる気、ないかしら?」って。自分にできるかな、って気もしたけど、すぐにやることにした。今はいろんなことに挑戦したいし、買いたいものもある。誰かを教えるってことにも、少し興味を感じたし。じつのところ、伯母は、私がファミレスのバ
2019年5月15日 14:22
「まだダイエットしてるの?骨が出てきちゃってるじゃない、胸とか、腰とか」スポーツクラブで、また、やせすぎを指摘された。前に、私のことを「ガリガリ」って言ったオバサン。会うたびに言われてる気もするけど、正直、めんどくさい。心配してくれてるにしても、ありがた迷惑だし、もしかしたら、嫉妬なのかもしれないし。でも、そのときはピクッと反応してしまった。そして、即チェック。本当に、骨