何処までもやせたくて(6)守れない約束


東京には、大好きな伯父・伯母が住んでいる。
母の姉と、その夫にあたる人。

二人とも、子供がいないせいか、私のことをすごく可愛がってくれていて。
伯父は、最初の姪の私に我が子のように接してくれるし、
伯母は、妹にひけ目を持つ私に、同じ姉の立場から理解を示してくれる。

上京が決まったときには、すごく喜んで、
「落ち着いたら、絶対、遊びに来なさいね」
と、言ってくれた。

それが昨日、実現したのだけど・・・

なんだか、複雑な気分。

会えたのは嬉しかったし、ふたりの優しさもいつも通りだったのに。

伯母の手料理に、あまり手をつけず、おしゃべりばかりしている姿が、
ふたりを不安にさせたみたいだ。

「食欲ないの? そういえば、ちょっとやせたみたいだけど」
「まさか、ダイエットじゃないよね」

「んー、お昼にちょっと重いもの食べちゃったから。
ダイエットもしてないよ。体、もたないからね」
とかなんとか、言ってごまかしたけど、もちろん、ダイエットはしているし、
ふたりに前に会ったときと比べたら、やせたことも間違いない。

じつは、東京の大学に行って、一人暮らしをしたいと言い出したとき、
しぶる両親を説得してくれたのが、ふたりだった。

「入院までするようなつらい経験して、体重戻せたんだから、もう、大丈夫だよ」
「私達もまめに会うようにして、何かあれば、すぐに連絡するから」

そして、伯母は私に、
「あんな危険なことは、もうしないって、約束してね」
と、真剣な顔で言った。
思わず「うん」と答えたけど・・・

「守れない約束」をしてしまったことは、その時点で後ろめたく感じていたし、
こうなることはわかっていたはず、なのだ。

でも、実際にこうなってみると、やっぱりつらいし、申し訳ない。
私はたぶん、というより、絶対にやせるから。

せめて、会わないようにするしかないのかなぁ。
そうすれば、私のダイエットを、伯父・伯母は知らなかった、ということになる。
うん、そうしよう。
どっちみち、悲しい思いはさせてしまうけど。
つらいとき、会いたくなるような予感もするけど。

愛してくれている人を騙してしまったことの、これは罰だ。

でも、やせるためには仕方ない。

実際、伯父・伯母の家で、箸が進まないことを指摘され、
無理して食べたこと、帰ってから後悔した。
体重計に乗ったら、500グラムも増えていたから。

学校が始まれば、誰かと食事をする機会が多くなるから、
いろいろ言い訳したりしなきゃいけない。

ダイエットを成功させるには、嘘つきにならなきゃいけないのかな・・・


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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