何処までもやせたくて(10)ダイエット向きの性格


テニススクールは、中高年の人が主体だった。
正直言うと、ホッとした気分。
同年代の子がいると、いろいろ気をつかってしまうから。

なぜ、テニススクールなのかというと・・・
先週、大学でテニスサークルに入った。
理由は「大学生っていえば、やっぱりテニスかなぁ」という、かなり安易なもの。
それと、中学のとき、本当はテニス部に入りたかったのに、
定員オーバーにともなう抽選にはずれ、陸上部になってしまったから、
そのリベンジ(?)というところもある。

だから、ほとんど初心者のようなものだ。
それにひきかえ、他の一年生は、
中高時代にけっこう本格的にやってきた人も少なくなさそうで。
見栄っ張りな私は、ちょっと不安を感じてしまった。

自分だけ、極端に下手だったらどうしよう、
それこそ、ダブルスとかで足を引っ張ることになってしまったら・・・って。

そこで、秘密特訓をすることにしたのだ。

実際、初日は散々だった。
中高年の人が主体だから、体力的にはきつくないものの、技術的には全然ダメ。
サーブでは何度も空振りするわ、バックハンドはことごとくネットに引っかかるわ・・・
でも、実力がわかっただけでもよしとしなくては。
週二回、たとえ付け焼刃でも、頑張っていれば、少しはマシになるはずだ。
カロリー消費にもなることだし。
今の私にとって、マイナスになることはひとつもない。

そして、あとふたつ、気付けたことがある。
試合形式の練習でペアを組んだ中年のオジサンに、
スクールに通い始めた理由を聞かれ、正直に話したら、
「へぇー、完璧主義者なんだね」
と、言われた。

そっかー、見栄っ張りなだけだと思ってたけど、そういう見方もできるのか、って。
いやな気はしない。
それに、以前、ダイエットに関する性格診断テストをしたら、
こんな結果が出たっけ。

「完璧主義者のあなたは、ダイエットには最適の性格です」

こっそりテニスの練習を始めたことに、後ろめたさも感じてたけど、
何事も完璧にやろうとすることは、悪いことじゃないんだ、って思えた。

週二回のスクールを入れたことで、今後の私はかなりのハードスケジュール。
バイト友達のなみちゃんに、心配されるほどだ。
でも、授業もサークルも、バイトもダイエットも、完璧にこなしたい。
それって、絶対に自分を向上させてくれるはずだし、
何より、ゆる~い生活をしていたら、やせることなんてできないもの。

もっともっと完璧主義になって、ダイエット向きの性格を極めたい、
そんな決意を、新たにすることができた。

でも、そのオジサンからは、こんなことも言われた。

彼は中年太りを気にしているらしく、ちょっと出たお腹をさすりながら、
「ここを引っ込めようと思ってね、学生時代にやってたテニスを再開したんだけど」
なんて言うから、
「私もですよー。もうちょっとやせたいんで、ダイエットが目的でもあるんです」
と、話したのだけど・・・

「えーっ!? 十分やせてるし、スタイルも完璧だよー。それ以上やせたら、
ガリガリになっちゃうんじゃない」
なんて、ひとことが。

ほめてくれてるのかな、とは感じつつも、ちょっとガッカリしてしまった。

だって、私はガリガリになりたいんだから。
このあいだ、スポーツクラブのオバサンに「ガリガリ」って言われたけど、
そうでもないみたいだ。
「それ以上やせたら、ガリガリになっちゃう」ってことは、
まだまだ普通レベル、ということだもの。

自分を甘やかしちゃいけない。もっともっと、頑張らなくちゃ。

そう思いながら、家に帰って、体重を計ったら、40.8キロだった。
今朝までは41キロ台だったから「よしよし」って気分。
せっかくだから、増やさないために、水だけ飲んで寝ることにする。

やっと、30キロ台が見えてきたのに、夕食なんか食べてはいられない。
完璧主義というのは、あらゆることに万全を期すということ。
もう、1グラムも太りたくはないし、
やせるための努力は、一切惜しまないでいこう。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット


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