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「ちっちゃな王子さま」(超意訳版『星の王子さま』)について あるいは「まえがき」
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「ちっちゃな王子さま」は毎週土曜日の朝9:00に更新「ちっちゃな王子さま」は、フランスのアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが1943年に書いた小説、Le Petit Princeを文月煉が独自に翻訳したもの。
(2020年現在、日本国内でのサン=テグジュペリの著作権は失効しており、Le Petit Princeはパブリックドメインとなっているため、自由に翻訳・出版することができる。)
「ちっちゃな王子さま」電子書籍発売しました!
noteで連載していた「Le Petit Prince」のオリジナルの翻訳、「ちっちゃな王子さま」が、電子書籍で販売中です! Kindleの電子書籍は、タブレットや専用端末がなくても、みんなが使っているスマホでかんたんに読めます。
オリジナル訳の出版は、僕のライフワークとさえ考えていたことで、本当に感慨深い……。一人でも多くの人に、読んでもらいたいです!頼む!
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.1
まえがきへ
レオン・ウェルトにささげる この本は、ひとりの大人にささげるよ。
こどものみんなには、そのことをゆるしてほしいんだ。これにはちゃんとした理由があるんだから。
まず、その人はぼくの世界でいちばんの親友だ。それから、その人は大人だけど、こどものための本だってちゃんとわかる人だ。そして、いちばん大事なもうひとつの理由は、彼が今、戦争まっただ中のフランスにいて、飢えと、寒さに苦
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.2
Ⅲ その子がいったいどこからやってきたのかを知るためには、ずいぶんと長い時間がかかった。この王子さまときたら、ぼくにはやたらとたくさん質問をするくせに、ぼくからの質問はぜんぜん聞いちゃいなかったんだ。だけどそれでも、ふいにこぼれた言葉のかけらをつなぎ合わせて、少しずつ少しずつ、すべてのことが明らかになっていった。
たとえば、初めてぼくの飛行機を見たとき(飛行機の絵を描くのはやめておくよ。ぼくには
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.3
Ⅴ ぼくは毎日新しく、王子さまの星のこと、旅立ったときのこと、そして王子さまの旅のことなんかを知っていった。王子さまがぐるぐると考えているのにあわせて、ぼくの頭の中でもだんだんとあいまいだったイメージが鮮やかになっていったんだ。
3日目にぼくが知ったことは、「バオバブの恐ろしさ」についてだ。きっかけはやっぱり、ヒツジの話だった。ちっちゃな王子さまは、真剣に思いなやんだ表情で、いきなりぼく
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.4
Ⅶ 五日目。やっぱりヒツジのおかげで、ちっちゃな王子さまの人生の秘密がもうひとつ明らかになった。
王子さまが何の前ぶれもなく唐突に、それまでじっとだまって考え込んでいたことについてぼくに質問してきたんだ。
「ヒツジがさ、小さな木を食べるんだとしたら、もしかして花も食べる?」
「そりゃそうだよ。ヒツジはぶつかったものをなんだって食べちまうよ」
「トゲがある花でも?」
「ああ。トゲがある花だって同じ
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.5
Ⅷ それからすぐに、ぼくは王子さまが言っていた「花」についてくわしく知ることになった。
ちっちゃな王子さまの星にもともとあったのは花びらが一重だけのシンプルな花だけで、だれのじゃまになることもなくひっそりと咲いていた。朝に花を咲かせたと思ったら夜には枯れてしまう、ささやかな花たちだ。
ところが、ある日どこからともなく種がひとつ飛んできて、王子さまの星で芽を出した。ちっちゃな王子さまは、他のどん
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.6
Ⅸ あの子は、自分の星から逃げ出すのに、渡り鳥の「渡り」を利用したんだ。
出発すると決めた日の朝、王子さまは最後の「星の身支度」をした。まずは火山をきれいに掃除して、すすを払った。あの子の星にはふたつの火山があって、朝食を暖めるのにとても便利だったんだ。
それからもうひとつ、死火山もあった。もうずっと噴火していない死火山だけど、それもちゃんときれいにした。「だって、いつどうなるかわからないか
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.7
Ⅹ 自分の星を離れた王子さまは、小惑星325と326、327、328、329、それから330の、あいだのあたりに来ていた。
そこであの子は、こう思いついたんだ。
これらの星をひとつひとつ訪れてみよう。そうしたら、これから自分がやるべきことが見つかるかもしれないし、なにか新しいことを学べるかもしれない。
なにせ家を飛び出してきたばかりのあの子には今、行くあてもやることもなかったから。
最初
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.8
Ⅺ ふたつめの星に住んでいたのは、ひとりの「ナルシスト」だった。
「おおっと! 俺様のファンがやってきたな!」
ちっちゃな王子さまを見つけて、遠くからナルシストが叫んだ。
彼にとっては自分以外の人間はみんな、彼のファンなんだ。
「こんにちは。変わった帽子をかぶってるんですね」
「これは俺様の決めポーズのための帽子さ」
声をかけた王子さまに、ナルシストが答える。
「だれかに見せてやるためのもの
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.9
XIII 四番目は、ビジネスマンの星だった。その人はひどく忙しそうで、ちっちゃな王子さまが来ても、デスクに向かって顔も上げないくらいだった。
「こんにちは。たばこの火が消えてますよ」
王子さまはビジネスマンに声をかけた。
「3+2=5。5+7=12。12+3=15。やあ。15+7=22。22+6=28。火を点けなおすヒマもありゃしない。26+5=31。ふぅ、これで五億一六二万二七三一、だな」
「
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.10
ⅩⅤ あの子が6番目におとずれた星は、点灯夫のいた星の十倍は広い星だった。そこには、ぶあつい本ををせっせと書いているおじいさんが住んでいた。
「おやおや、これは探検家のお出ましじゃないですか!」
ちっちゃな王子さまに気づくなり、おじいさんはそう叫んだ。
王子さまは近くのテーブルに腰かけて、ふうっと一息ついた。ずいぶん長いこと旅をしてきて、ぜんぜん休んでなかったんだ。
「さて、あなたはどこから
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.11
ⅩⅥ そういうわけで、あの子が7番目におとずれたのがこの「地球」だったんだ。
地球ってのは、そんじょそこらの星とはわけがちがっていた。そこにはなんと、111人もの王様がいたし(もちろん、黒人の王様も入れて、ね)、7000人の地理学者に90万人のビジネスマン、それから750万人のよっぱらいに3億1100万人のナルシスト……合わせて、約20億人もの大人たちがいたんだ。
そうだ、この話をすれば君だっ
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.12
ⅩⅧ それからあの子は、広い広い砂漠をさまよった。さんざんさまよって、出会ったのはたったひとつの花だけ。「あの花」とはぜんぜんちがって、ちいさな花びらが3枚あるだけのちっぽけな花だ。
「こんにちは」
王子さまが声をかけると、花も「こんにちは」と答えた。
「人間たちって、どこにいるんですか?」
ちっちゃな王子さまにたずねられて、花は、いつだったか物売りのキャラバンが近くを通りかかったことがあるの