
科学と聖書にまつわる随想(30)
「オイラーの公式」
複素数と並んで高校数学で学ぶ重要項目として、指数関数と三角関数があります。変数を$${x}$$とすると、指数関数は$${e^x}$$、三角関数は$${\cos x}$$と$${\sin x}$$です。$${e}$$は自然対数の底(てい)あるいはネイピア数と呼ばれ、値は$${e=2.71828…..}$$と無限に続く無理数です。これらの関数は、それぞれグラフで表すと次図のようになります。

図のように、指数関数は単調に増加する関数であるのに対し、三角関数は周期性を持っている関数であるところに注目してください。周期は$${2 \pi}$$(度単位では360°)です。
これらの関数は、いずれもグラフが連続で滑らかですので、次のように無限に続くべき乗の関数の重ね合わせで表現することができます。これをテイラー展開(またはマクローリン展開)といいます。
$$
\begin{array}{}
e^x &=& 1 + x + \dfrac{1}{2} x^2 + \dfrac{1}{3!} x^3 + \dfrac{1}{4!} x^4 + \dfrac{1}{5!} x^5 + ….. \\\
\cos x &=& 1 - \dfrac{1}{2} x^2 + \dfrac{1}{4!} x^4 - \dfrac{1}{6!} x^6 +….. \\\
\sin x &=& x - \dfrac{1}{3!} x^3 + \dfrac{1}{5!} x^5 - \dfrac{1}{7!} x^7 +….. \end{array}
$$
ここで、$${x}$$が虚数の場合を考えて、指数関数$${e^x}$$の$${x}$$を$${ix}$$に置き換えてみると、$${i^2=-1}$$, $${i^3=-i}$$, $${i^4=1}$$, $${i^5 = i}$$ですから、
$$
e^{ix} = 1 + ix - \dfrac{1}{2} x^2 - i \dfrac{1}{3!} x^3 + \dfrac{1}{4!} x^4 + i\dfrac{1}{5!} x^5 - \dfrac{1}{6!} x^6 - i\dfrac{1}{7!} x^7 +…..
$$
となるので、右辺を実数の項と虚数の項に分けてみると、
$$
e^{ix} = \cos x + i \sin x
$$
という関係があることが分かります。これを“オイラーの公式”と呼びます。
オイラーの公式は、指数関数と三角関数を結びつける非常に重要な関係式ですが、直観的にはなかなか理解が困難です。図は変数が実数の場合ですが、指数関数のグラフと三角関数のグラフは似ても似つかぬ形をしています。どうしてこれらの間が等号で結ばれることがあるでしょうか? そもそも、三角関数をテイラー展開してべき乗の関数の和で表した時点で、周期が$${2 \pi}$$で周期的に変化する、という性質がどこかへ行ってしまったように感じるではありませんか。
また、$${\cos x}$$は偶関数で$${\cos(-x) = \cos x}$$であるのに対し、$${\sin x}$$は奇関数で$${\sin(-x) = - \sin x}$$ですから、オイラーの公式で$${x}$$を$${-x}$$に置き換えると、
$$
e^{-ix} = \cos x - i \sin x
$$
となり、したがって、これら2つの式から、
$$
\begin{array}{} \cos x &=& \dfrac{e^{ix} + e^{-ix}}{2} \\\
\sin x &=& \dfrac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i} \end{array}
$$
が得られます。これらの関係式は、数学の関数論では三角関数の定義を表すものになるのですが、左辺は純粋に実数の世界の関数である一方で、右辺は複素数の世界です。「現実の世界」と「たとえ話の世界」 が繋がっていることを表しているようで、なんだか奥深さを感じます。
最も基本的で重要な指数関数と2つの三角関数($${\cos}$$と$${\sin}$$)、これらの三者の間が等号によって結びついているという事実は、これもまた「父」「子」「聖霊」の三位一体の真理を表す写し絵のようだ、と感じるのは筆者だけでしょうか?
ちなみに、オイラーの公式において$${x = \pi}$$とおくと、$${\cos(\pi) = -1}$$, $${\sin(\pi) = 0}$$ですから、
$$
e^{i \pi} + 1 = 0
$$
という関係が得られ、これは“オイラーの等式”と呼ばれます。この式には、自然対数の底(ネイピア数)$${e}$$、虚数単位$${i}$$、円周率$${\pi}$$、実数の単位$${1}$$、それから、数学における重要概念である$${0}$$、という役者達が一堂に会しており、それらの間の関係性が表現されています。それぞれの役者は主に登場する場所も役割りも異なりますが、それらが互いに調和をもって結びついているのは、何とも絶妙ではありませんか。
「働きはいろいろありますが、同じ神がすべての人の中で、すべての働きをなさいます。皆の益となるために、一人ひとりに御霊の現れが与えられているのです。ある人には御霊を通して知恵のことばが、ある人には同じ御霊によって知識のことばが与えられています。ある人には同じ御霊によって信仰、ある人には同一の御霊によって癒やしの賜物、ある人には奇跡を行う力、ある人には預言、ある人には霊を見分ける力、ある人には種々の異言、ある人には異言を解き明かす力が与えられています。同じ一つの御霊がこれらすべてのことをなさるのであり、御霊は、みこころのままに、一人ひとりそれぞれに賜物を分け与えてくださるのです。」