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  • 科学と聖書にまつわる随想

    「科学」と「聖書」をテーマにあれこれ思いめぐらしたことを綴ってみています。

最近の記事

科学と聖書にまつわる随想(29)

「虚数と複素数」  高校数学で習う最も重要な概念の一つに、“虚数”と、そこから派生発展してできる“複素数”があります。虚数とは、自乗(2乗)すると符合が負になる数のことです。実際には、正(+)の数は自乗したらもちろん正ですし、負(-)の数も、負×負は正ですから、自乗したらやっぱり正になります。ですから、自乗して負になる数は現実としては存在しないのです。しかし、そういうものがあったとしたらどうなるか、ということを想像することはできます。つまり、概念としては存在できるのです。

    • 科学と聖書にまつわる随想(28)

      「サンプリング定理」  AIにしても、コンピュータで何かをしようとすると、現実世界はアナログの世界ですから、アナログ量をデジタル値に焼き直すA/D変換は必須の作業です。そして、A/D変換の際には量子化誤差が生じることは、避けることのできない宿命的な事柄です。したがって、この段階で必ず情報の欠落が生じることになります。つまり、コンピュータに取り込まれた情報は、現実のものからは必ずズレがあるということです。カメラの画素が粗いと画像がボヤけるのもそういうことです。ただ、実際にはそ

      • 科学と聖書にまつわる随想(27)

        「感じる速さ」  筆者は、職場まで電車で通勤しています(2024年現在)。電車に乗っていて車窓の景色を眺めながら感じることで不思議に思うことがあります。朝、出勤する時は、景色の流れが結構速く見えるのですが、それに比べると、夕方帰宅時は、何故か景色の流れが少しゆっくりで電車のスピードが遅いように感じるのです。電車の運行会社に確認した訳ではありませんが、おそらく、進行方向によって電車のスピードが違っているということは無いでしょうから、これは心理的な体感スピードの問題、つまり、錯

        • 科学と聖書にまつわる随想(26)

          「伝わる速さ(その2)」  日本は地震大国と言われてます。世界に数ある活火山のうちの約7%が日本にあるそうです。地震の揺れが伝わる波にはp波とs波があることを学校の理科でも習います。p波は“primary wave”、s波は“secondary wave”ということで、要するに“第一波”、“第二波”という意味です。これらが時間差で到達するのは伝播速度の違いに拠ります。地盤に歪みが生じてその弾性によって振動を起こしたのが地震で、その振動が震源から周囲に波になって伝播する訳です

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        • 科学と聖書にまつわる随想
          29本

        記事

          科学と聖書にまつわる随想(25)

          「伝わる速さ」  某英会話教室のテレビCMで、ウサギの耳がグングン伸びて、挙句の果てに太陽まで届いて思わず「アツッ!」と叫んで耳を引っ込める、というシーンがあります。ウサギの耳が伸びるように英会話力がグングン伸びる、ということを表現したいのだとは思いますが、太陽まで耳が伸びるということがそもそも突飛であることはマンガですから許すとしても、これは真面目に考えれば物理的には明らかにおかしなところがあります。地球と太陽との距離は約1億5千万kmと言われていますので、この間を光の速

          科学と聖書にまつわる随想(25)

          科学と聖書にまつわる随想(24)

          「長調と短調(その2)」  創世記の記述によれば、人が創造された時、どのような言語かは分かりませんが、既に音声を用いてコミュニケーションがなされていました。声を用いて意思や感情を表現しようとする場合、声に抑揚やリズムを付けて“歌”に相当する形のものは自然に生まれるものだと思います。体を動かして表現するところから“踊り”が生まれるのも同じでしょう。  歌が生まれると、声以外の音を出してそれに調子を合わせるために、楽器が作られるのも自然な流れだと思います。聖書の記述で最初に登場

          科学と聖書にまつわる随想(24)

          科学と聖書にまつわる随想(23)

          「長調と短調」  筆者には昔から不思議に思っていることがあります。音楽(西洋音楽)には“長調”と“短調”がありますが、一般に、長調の曲は明るく・楽しく聴こえる曲が多く、それに対し、短調の曲は暗く・もの哀しく響く曲が多いのはどうしてなのでしょうか? 一体、そのメカニズムは何なのでしょうか?  長調と短調の違いは、主和音の音程で言えば第3音が半音違うだけです。長調の主和音は「ド・ミ・ソ」で、音程がドとミの間が長3度(全音+全音)、ミとソの間が短3度(全音+半音)です。一方、短

          科学と聖書にまつわる随想(23)

          科学と聖書にまつわる随想(22)

          「たしからしさ」  昔、小学何年生の時だったか覚えていませんが、算数の教科書に「たしからしさ」というタイトルの単元がありました。その当時、これって何?と思っていました。“たし”から“しさ”、なのか、“たしから・しさ”なのか、意味がサッパリ分からない、と思っていました。たぶん、“確”という漢字をまだ習っていない段階だったので、ひらがなで表記するしかなかったのだと思いますが、「確からしさ」と書いてくれていれば、もうすこしましだったのでは、と思ったりします。それでも、この言葉の中

          科学と聖書にまつわる随想(22)

          科学と聖書にまつわる随想(21)

          「変調と側波帯」  前記事(20)では、変調がかかるとスペクトラムが広がるということについて述べました。この点について、もう少し突っ込んで考えてみたいと思います。正弦波を搬送波(情報を運ぶ乗り物)とする場合、変調の方式としては、振幅変調、周波数変調、位相変調の3種類が考えられます。伝送したい情報を表す信号を変調信号と呼びますが、変調信号に応じて搬送波の振幅(振れ幅のことで、別の言い方をすれば強度とも言える)を変化させるのが振幅変調(AM : Amplitude Modula

          科学と聖書にまつわる随想(21)

          科学と聖書にまつわる随想(20)

          「スペクトラム拡散通信」  昔、アメリカのテレビドラマで「バイオニック・ジェミー」というのがありました。事故で瀕死の重傷を負った女性が手術で助かるのですが、その手術によってサイボーグ化されて超人的なパワーと能力を持つようになり、その特殊能力を用いて諜報員として活躍する、という内容のSFドラマです。その特殊能力の一つに驚異的な聴力がありました。ジェミーが耳をピクピク動かすと、ずっと離れたところの人の会話を盗聴器のように聴き取ることができるのです。周囲がガヤガヤとした雑踏の中で

          科学と聖書にまつわる随想(20)

          科学と聖書にまつわる随想(19)

          「別の命(その2)」  「はたらく細胞」というマンガがあります。役者が演じて実写版で映画化もされるそうです。赤血球や白血球など、体の中の様々な細胞がキャラクタ化されて、その働きをストーリーを通して分かりやすく教えてくれる面白いマンガだと思います。実際の赤血球や白血球は、マンガのキャラクタのように顔や手足も無ければ意思を持って動いている訳でもありませんが、体内で作り出されて、ある期間働いたら分解されるという新陳代謝を繰り返しており、言わば寿命を持っている存在です。  腸は“

          科学と聖書にまつわる随想(19)

          科学と聖書にまつわる随想(18)

          「別の命」  一般に、今どきの自動車は、エンジンやブレーキ、ステアリング、トランスミッションなどの様々な機能は全て、それぞれマイクロコンピュータを搭載したECU(Electronic Control Unit)によって電子制御されており、各ECUはCAN(Controller Area Network)と呼ばれるネットワークでお互いに繋がれて通信を行いながら自動車全体の動作をコントロールしています。私たちが車を運転する時、何気なしにアクセルやブレーキを踏みハンドルを回して、

          科学と聖書にまつわる随想(18)

          科学と聖書にまつわる随想(17)

          「アナログとデジタル(その2)」  私たちの身の回りの自然界の物理量は基本的に“アナログ量”、つまり、連続的にどんな値でもとり得る量、と考えてよいでしょう。しかし、細かい目で見ると、実はそうでもないことが分かります。  例えば、物の重さ(質量)について考えてみましょう。話を簡単にするために均一な材質(例えば、鉄)としましょう。鉄の塊の質量は、どんな大きさにも調節できるように思いますが、鉄は原子番号26番の鉄の原子が集まってできてますので、原子は一つ二つと数えられるものである

          科学と聖書にまつわる随想(17)

          科学と聖書にまつわる随想(16)

          「アナログとデジタル」  時計にはアナログ時計とデジタル時計があります。“アナログ(analog(ue))”とは“類似”あるいは“類似物”という意味です。“アナロジー(類推、例え)”という言葉と同根だと思います。アナログ時計は、時間の経過量と針の回転角度が類似(相似)の関係にある、つまり、例えば5分が10分になったら、針の指す角度も2倍になる、ということです。一方、“デジタル(digital)”はdigit(桁)の形容詞形で、数値で表現することを意味します。この場合、数値を

          科学と聖書にまつわる随想(16)

          科学と聖書にまつわる随想(15)

          「テロメア」  私たちの体は無数の細胞が集まってできていて、常に細胞分裂を繰り返して新しい細胞が生まれ新陳代謝が行われている、ということはご承知の通りです。細胞がどれくらいの周期で入れ替わるのかは、体の部位によっても違いはあるでしょう。皮膚や爪のように、確かに頻繁に細胞が入れ替わってるに違いない、と実感できる部位もあれば、脳の神経細胞などは、成長期を過ぎれば後は減る一方と考えられていたのが、実はそうでもないということが最近になって明らかになった、という話も聞きます。いずれに

          科学と聖書にまつわる随想(15)

          科学と聖書にまつわる随想(14)

          「フラクタル」  “無限アート”というのがあります。絵の一部を拡大してズームインしていくとその中に別の絵が現れてきて、その一部をまたズームインしていくとまた別の絵が現れ、さらにその一部をズームインしていくと......というのがずっと続く絵です。幾何学の分野でいう“フラクタル図形”はこれと似た性質のものです。  代表的なフラクタル図形の例として“コッホ曲線”があります。ある長さ(Lとします)の線分を3等分し、真ん中の区画に一辺がL/3の正三角形を乗せて、真ん中の区画をその

          科学と聖書にまつわる随想(14)