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「家族」ってなんだろう。~家族の姓をTVドラマ「虎に翼」をからめて考える~

#20240607-410

2024年6月7日(金)
 今、NHKの連続テレビ小説「虎に翼」にハマっている。

 今年度からノコ(娘小5)は登校班の班長になった。
 通学路は居間の窓に面している。玄関でも見送るが、登校班の先頭を歩くノコに窓からも再度手を振る。小学5年生になったノコはニコリともせず、小さく手を振り返す。不愛想だが、照れ隠しにも見える。
 ノコを見送ると手早く朝食の洗い物を済ませる。
 ゴミの日ならゴミを集め、すぐ出せるよう玄関に置く。1回目の洗濯が終わったことを知らせるブザーがここで鳴る。洗濯カゴに衣類を出し、2回目の衣類を入れ、洗濯機のスタートボタンを押す。
 そうしているうちに8時になり、私はTVテレビの前に正座する。

 今、主人公である寅子ともこ(伊藤沙莉)は民事局民法改正局に所属し、戦後の民法の改正に携わっている。
 今日の審議は、「結婚したら姓をどうするか」。

 私は夫の姓を名乗っているし、戸籍上も夫の姓だ。
 それでも夫のパートナーである私とは、「違う顔」がほしくて旧姓を名乗る場を残している。結婚して10年以上経ったが、郵便局に旧姓での郵便物の配達を依頼してある。
 夫の姓が嫌いなわけではない。
 ただ結婚が遅かったこともあり、旧姓で生きた時間のほうがはるかに長い。
 今は身近に旧姓で呼ぶ人もいないし、もう夫の姓で呼ばれることにも馴染んだが、それでも旧姓で名乗りたい場が私にはある。
 独身時代に働いていた職場では、結婚しても通称として旧姓を使う女性が多かった。
 届いた年賀状には、夫の姓とともに旧姓も記してあった。ちょっとお得だと思った。姓が2つあり、その場に応じて名乗れるなんて、たくさんの顔があるようで輝いて見えた
 結婚による姓の問題は、現在でも論じられている。かれこれ70年以上も引きずっているのかと改めて驚く。
 ドラマのなか、議論の場で寅子は当時の家制度に重きをおく神保教授(木場克己)に意見し、問いかける。

「もし神保先生の息子さんが結婚して妻のうじを名乗ることにされたら、息子さんの先生への愛情は消えるのですか?」

「虎に翼」50話 第10週「女の知恵は鼻の先?」より

 寅子は娘が将来結婚して夫の姓を名乗ったとしても「私や家族への愛が消えるとは思いません」と言葉を続ける。そして、「名字ひとつでなにもかもが変わるだなんて悲しすぎます」と静かにいい切った。

 私も夫婦の姓はどちらでもよいし、または別姓でもいいと考えている。
 だが、はたと思い当たる。
 そう思いながらも、私は里子であるノコが我が家に委託されたとき、ノコの戸籍姓ではなく里親の「森谷」の姓を名乗ることを勧めた。児童養護施設から里親のもとへ引っ越し、「森谷家の一員」になったのだから、という意味を込めてだ。
 なんだか矛盾していないか。
 姓によって家族への愛情が変わらないと思うのならば、ノコが「森谷」姓を名乗ろうと、ノコの戸籍姓を名乗ろうとどちらでもいいはずではないか。いっていることと行動が一致していないではないか!
 なぜ、私はノコに通称姓として「森谷」姓を名乗ることを勧めたのか、振り返る。

1.ノコが疎外感を感じる要素を減らしたかった。

 私たち夫婦が「森谷」を名乗っているため、ノコだけが戸籍姓を使うと「仲間外れ」だと思ってしまう可能性を心配した。ただでさえ「大人」と「子ども」「一緒に暮らしていた2人」と「新しく加わった1人」2対1に感じがちなので、それを避けたかったのはある。

2.そもそもノコが「家族」を理解していなかった。

 これは大きい。
 乳児院、児童養護施設で育ったノコは根本的に「家族」がわかっていない
 情緒的つながりだけでなく、単位としても理解していない。「森谷家」とそれ以外とで区別することが安全面の上でも必要だった。
 家族では許される距離を未だにノコは家族以外の人に取ってしまうことがある。私はノコについ「あの人は森谷のお家の人ではないよ」といってしまう。

 どの姓を名乗ってもいいのは、「家族としてのつながり」があってのことだ
 それなら、どの姓を名乗っても寅子のいう通り「愛は消えない」だろう。
 また、これがグループホームなど複数人の里子がいる場合は違う。姓が異なっても「ひとつ屋根の下で暮らす私たち」という意識が育つように思う。
 我が家のように夫婦に里子1人という3人だと難しいように思う。里子自身が戸籍姓を名乗りたい強い理由があるのならともかく、ノコの場合だと「私だけ仲間外れだ」と疎外感が生じやすい。
 どの姓を名乗ってもいい。
 だが、ときに同じ姓を名乗ることが「家族」のよすがになりうることもある。
 近い未来、日本でも家族の姓はひとつでない社会が訪れるだろう。そのとき、ノコのような中途養育の子どもに「家族」のあり方をどう伝えるのか。
 つながりがまだない人たちをどう結ぶのか
 「家族」について向き合い、より深く考えるいい機会なのだと思う。

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