娘の気持ちを肯定した上で、提案する。それがスムーズにできなくて。
#20230814-198
2023年8月14日(月)
明かりをつけ、カーテンを開け、声を掛けてもノコ(娘小4)が起きない。
規則正しく胸を上下させ、寝息を立てて眠っている。
昨日は習い事がハードで朝から晩まで丸一日あった。就寝も遅かったため、仕方がないといえば仕方がない。
午前中に図書館で読み聞かせの勉強会があった。月1回2時間。
平日開催なので普段はノコが学校にいっている間に終わる。だが、今は夏休み中でむーくん(夫)は出勤日。ノコを連れて行き、私の勉強会中は館内の子どもコーナーで待ってもらう予定だった。本好きのノコはそこなら飽きずに過ごせる。何かあっても同じ館内だ。
だが、起きない。
出勤前にむーくんは私の予定を遂行するよういったが、ノコの眠りを見ていると、今日はしっかり休ませたほうがよいように見える。
そのほうがおそらく体力の回復も早い。
図書館に欠席連絡を入れる。
今日のような場合だけでなく、学校行事やノコの体調でも勉強会を休みがちなので心苦しい。
ノコは眠り続け――起きているのにベッドで本を読んでいることがよくあるので、時折覗きに行ったが、10時を過ぎても11時を過ぎても起きなかった。
私は1人きりの静かな居間で家事をひとつずつ済ませ、万一ノコが起きた場合のために置き手紙を残してすぐそこのコンビニエンスストアへ支払いに走ったりした。
台風7号の影響でこのあたりの空模様もかなり不安定になっている。
青空が見えているのに、バケツをひっくり返したかのような大雨が降ってはやむ。
雨雲レーダーをちょくちょく更新して確認しているが、強い雨量を示す赤色の雨雲がいきなり発生するので買い物にも出られない。
15時近くになって、インターホンが鳴った。
宅配業者がむーくん宛ての荷物を届けにきた。
そのチャイムでようやくノコは起き、ドッタンドッタンと階段をおりてきた。
テーブルに昼食、いや3時のおやつといったほうがいい朝食を並べると、昨日まで普通に食べていたパンをノコは食べないという。
そのパンがいいとノコがいい、ノコだけのために買っているパンだ。
「じゃあ、何がいいの?」
そう問うと、ノコは四方に睨むような目をやってから答えた。
「お餅。お餅に醤油つけて海苔で巻いたやつ」
「この袋を食べ切ったら、お餅に切り替えるね」
「もう食べない」
ノコのブームはいつも唐突に終わる。
「このパンはノコさんが食べたいというから買ってあるものだから、この1袋は食べ切ってほしいな」
「もう食べない」
「昨日までは普通に食べていたでしょ。何が嫌なの?」
「味」
そういわれても、むーくんも私も食べないパンだし、ノコが食べたいというから買ったものだ。
「ママもパパもこのパンは食べないよ。ノコさんが食べなかったらどうしたらいい?」
「どうでもすればいい」
「どうしたらいいとノコさんは思うの?」
「どうでもすればいいっていってる」
「あのね、ママはノコさんにあなたが食べないこのパンをどうするか尋ねてるの」
いいたくなさそうに、ノコは顔をゆがめた。
「……もったいないけど、捨てれば」
ノコと暮らしはじめて、食べ物を粗末に扱うことを私はとても嫌悪することを知った。深く息を吸って吐く。
「この袋は食べ切ってほしいです」
ノコが大きくため息をつく。
「わかった。食べればいいんでしょ。食べればママは怒らないんでしょ」
日頃から食べ物は貴重であること。
食べ物を作る過程で多くの人や生き物が携わっていること。
世の中には食べたくても食べ物がない人がいること。
たくさんのことを伝えているつもりだが、所詮「つもり」。私の押し付けなのかもしれない。
それとも「食べない」「捨てれば」はノコの心の表層であって、私はまたノコの表層とやりあっているのだろうか。
ノコのいう通り、お餅を用意すれば、ノコの心は満たされるのだろうか。
ただシンプルにノコの意思を肯定した上で提案すれば、こじれないのかもしれない。
「お餅がいいんだね。じゃあ、この1袋を食べ切ったら、お餅に変えようね」
そういえばいいだけなのかもしれない。だけど、それがすぐにいえない。
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