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手伝おうにも拒まれたら手伝えない。~娘の探し物~
#20240901-457
2024年9月1日(日)
「ないから。ママ、探すの手伝ってください」
居間にある専用の机やランドセルラックのまわりをがさこそやっていたノコ(娘小5)が渋々といったていでいった。
明日は始業式。
43日間の夏季休業日――つまり夏休みが終わる。
8月末にあった3日間の午前授業であらかたの宿題は提出したが、生活習慣関連のものは始業式に出すことになっている。歯みがきや体操、夏休みの約束を守れたかどうか。
夏休みの宿題は、なくさないようランドセルにしまうことにしていた。
だが、ノコはサマースクールに提出しない宿題はランドセルから出したという。
出して、どこに置いたかわからない。
ノコは居間のダイニングテーブルで勉強をしていたが、食事時になってもなかなか片付けなかった。宿題が終わっていなければ、食後にまた出さなければならないことも不満らしく、ただでさえ宿題で斜めになっている機嫌がさらに悪くなった。
そういうわけで、居間にノコ専用の勉強机を用意したのだが、それがすぐ物であふれかえる。なんでもかんでも積み重ね、いつも雪崩寸前だ。
見かねたむーくん(夫)が先日雷を落とした。
「机の上を片付けなきゃ、その机を返してもらうぞ」
里子のノコが我が家に委託される前は私の作業机だったので、むーくんが「返してもらう」というのは語弊がある。
ノコはふくれっ面で段ボール箱に机の上のものをざらりざらりと入れていった。
箱を閉め、自分の部屋へ持っていけば、「ハイ、片付け完了」というわけだ。
「このあいだ、机の上のものを入れていた段ボール箱のなかは?」
一番怪しい場所を挙げると、ノコは私を睨んだ。
「あそこにはない」
「じゃあ、机の横の棚は?」
「もう見たし!」
私はノコが置きそうなところを考える。
「ランドセルラックのところの棚は?」
「そんなところに置かないし」
「うーん、じゃあ、もうノコさんの部屋しかないんじゃない?」
「見たってば」
たとえないと思う場所でも、たとえ探した場所でも、もう一度私と探そうと声を掛けるが、ノコは「そこにはない」といい張る。
「自分で探してなかったところでも、ほかの人が見つけることもよくあるよ」
「ないし!」
ノコはすこぶる頑固で私に再捜索を許さない。
「思い当たるところをいっても探させてくれないのなら、ママだってわからないよ。手伝いたくてもできない」
「だって、ないし」
唇をとがらせ、私をじっとりと睨めつける。
私だって、もう打つ手がない。
「それなら、ランドセルから出したつもりで実は出してなくてさ。間違えて、学校に持って行っちゃったのかもね。明日、学校に行ったら机のなかを探してみたら」
「そうする。でさ! ママママ!」
ノコの目がキラリンと輝く。嫌な予感しかない。
「ママの漫画読んでいい?」
諦めというか、切り替えがはやすぎる。
「ノコさん、口内炎は治ったんでしょ」
夏休みの宿題としてリコーダーの練習があった。後まわしにしたノコは8月末に口内炎を患い、サマースクールまでに終えることができなかった。
「リコーダーの練習しなくちゃいけないんじゃないの?」
本格的に2学期がはじまる前に済ませておいたほうがいい。
「楽譜、学校に置いてきちゃった」
「あら、残念。はやめに終わらせたら楽だったのにね」
「それに、いいって、先生が」
いいって何がいいのだか。意味不明だ。
「提出日までにできなかったら、やらなくていいって先生がおっしゃったの?」
「……じゃないけど」
ノコがいいよどむ。
「できなかったらやらなくていいのなら、みんな、やらないんじゃない?」
「でも、いいって」
「いいの意味がわからないから、明日先生に確認してらっしゃい」
ノコがすっと顔をそむけた。
その小さな小さな舌打ちを私は聞き逃さない。
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