共に楽しむ体験は。
#20231005-249
2023年10月5日(木)
面談で児童相談所の担当ケースワーカーさんが首を傾げる。
私がするノコ(娘小4)の近況報告と家庭訪問時に見たノコの姿が重ならないという。
このところ、ノコはむーくん(夫)に対して悪態をつく。
「パパ嫌い」
「なんでママはあんなパパと結婚したわけ?」
「パパって最低!」
「パパの顔、見たくないし」
家庭訪問でノコはむーくんの膝に座り、べたべたに甘えていた。
確かに家でもむーくんといい合いになり、空気がとても重くなることがあるが、私が洗濯物を取り込むなど家事でその場をちょっと離れて戻ると、なぜか2人でじゃれあっていたりする。いない間にどんなやりとりがあったのか。戸惑ってしまう。
仲がいいのか、悪いのか。
私もよくわからないのだ。
ケースワーカーさんによると、仲の悪い親子は一目でわかるという。目も合わせないし、近寄らないし、名前――もしくは「パパ」などの家庭内での立場名――も呼ばず、「あいつ」や「アレ」というらしい。
むーくんから注意されるのをノコは嫌うが、むーくんに怯えたり、萎縮する様子もない。
「パパと何か楽しい体験とかあったりします?」
問われて、思い巡らせる。
TVが大好きなノコとソファーで並んで見るのは、むーくんだ。
私は夕食後の後片付けや翌朝の準備があり、キッチンに立ちながらチラチラ見ることはあってもノコの隣で見ることは滅多にない。
ノコとむーくんが一緒に見る場合、2人がどちらも楽しめる番組になる。ノコだけが楽しめる番組は「パパが仕事に行ってるときに見ろ」というわけだ。2人で見る番組はむーくんも好きな番組なので、ノコがとんちんかんなことをいってもすぐ返せるし、正しい情報を伝えることもできる。
「〇〇は、あのとき△△した青い髪のヤツだよ。いただろ?」
くっつき過ぎたノコがむーくんの耳元でキャーだのギャーだの叫んで、「うるせぇ」といわれることはあるし、興奮してむーくんの関節など人の急所といわれるところに強く手をついて「痛え!」と怒鳴られることはある。本当にうるさいし、本当に痛いので、これは仕方がない。
食べ物に関してもノコが好きなものはむーくんも食べる。
ファストフード店のフライドポテト、甘味料たっぷりの炭酸飲料、甘さに甘さを重ねたようなお菓子やポテトチップスなどの油を使ったお菓子。
胃腸の弱い私は食べると、あとあと体調を崩すのでノコが「ママ、あげる」といっても辞退する。互いに美味しいと思うものを一緒に食べることは楽しい体験になると思うのだが、私はそれができない。そして、私が好む食べ物はノコが顔をしかめる。
その点、むーくんはノコとフライドポテトに手を突っ込むし、むーくんが選ぶお菓子はノコも好み、取り合いになる。
娯楽と食。
ノコとむーくんは暮らしのなかで楽しみを共有している。
「おもしろいね」
「美味しいね」
これをしかめっ面でいう人はいない。笑みと笑みが交わされる。
ノコがむーくんを「嫌い嫌い」といいながらも、傍から見ると仲が悪く見えないのは、こういった日々の小さくても楽しい積み重ねがあるからなのかもしれない。
私にはできない。
無理が生じる。
それなら、私がノコと共有できる楽しい体験って何だろう。
なかなか浮かばなくて唸っているうちに、むーくんは私とも楽しめる体験があることに気付いた。
ノコとも私とも楽しい共有体験を持つむーくんって、我が家において実は引っ張りダコじゃないか!