カガクの扉を開く読本その5 日本の環境は大丈夫?編
はじめに
日本は、昔は公害列島などと言われた時期もあって、環境汚染がひどかったことがありました。では、今は大丈夫なのか? 実はあまり状況は変わってはいません。単に、マスコミがあまり大げさな報道をしなくなっただけです。
最近ですと、PFASという有機フッ素化合物が、水道水や地下水に含まれている事が分かり、健康被害も出ているということがありました。熱海の伊豆山という所では、建築残土の盛り土が大規模に崩れて、死者が出たりして、ちょっとだけ盛り土に対する規制が始まったりしています。あるいは、海洋プラスチックの汚染の問題が表面化して、プラスチック製品を減らそうという動きが出ていて、レジ袋の有料化とか、コンビニでのストローとかスプーンが紙製とか木製に変わったりとかしていますね。
この手の話は、あまりネットニュースなどでは流れないので、知らない人が多いのが現状です。
昔の岩波新書は、環境問題の本を積極的に出版していて、その内容は何十年も経っている現在でも通用する、つまり状況があまり変わっていないことに気付かされます。いままで、日本という国は環境問題に対して何も対策を取っていないことが分かります。
今回紹介する本は、ほとんど品切れや在庫希少の本が多いので、図書館とか古本屋さんなどで探してみてください。そして、何年何十年たっても変わっていない、日本の環境問題や環境政策について考えて欲しいものです。
◎『酸性雨』
石弘之:著 岩波書店 岩波新書 新赤230
(酸性雨とは、酸性を帯びた雨のことです。昔は車の排気ガスを規制する必要があったわけです。でも、最近の酸性雨は西高東低の傾向にあります。これは、日本の西にある国の汚染物質が原因であることを示しています。日本は公害対策の技術輸出を積極的に進める必要があります。)
◎『ハイテク汚染』
吉田文和:著 岩波書店 岩波新書 新赤62
(半導体などハイテク工場は、工場の外見や工場内はクリーンなイメージなのですが、問題は工場内で使用している薬品です。使用している薬品の管理がしっかりと行われているかを見ていかねばなりません。神奈川県の秦野市などでは、工場の薬品が地下水を汚染して、問題になったことがありました。)
◎『ゴミとリサイクル』
寄本勝美:著 岩波書店 岩波新書 新赤149
(日本では、ゴミは基本的に燃やしてしまうという感じで処理してきました。燃やせない物はどこかに埋めてしまう。基本的に、リサイクルをしようという意識はまだそんなに高くはありません。本当にそれで良いのでしょうか?)
◎『ゴミと化学物質』
酒井伸一:著 岩波書店 岩波新書 新赤562
(現在の資本主義というのは、製品をひたすら作って、それをひたすら売って、いらなくなればポイッと捨てる。未だにそれが抜けていません。この考え方を改めない限りは、地球はゴミだらけになっていくだけです。)
◎『IT汚染』
吉田文和:著 岩波書店 岩波新書 新赤741
(ITといい、携帯電話といい、マイクロエレクトロニクス産業というのは、人間をだめにするだけでは無く、地球全体を駄目にしていく産業であるとのことです。電子部品の製造には色々な薬品が使われているので、それの適切な使用ができているのかが、一番の問題なのです。)
◎『山が消えた ~残土・産廃戦争~』
佐久間充:著 岩波書店 岩波新書 新赤789
(コンクリートのビルを作るために、海を埋め立てるために、こんなに山がなくなってしまうなんて・・・。という話です。
現在は、ビルの建築で出た残土を、山や谷や農地などにひたすら捨てているというのが現状です。熱海の伊豆山で起きた盛り土の崩落も、神奈川県などから運ばれた建築残土の違法放置が原因だと言われています。
廃棄物の問題は、役所がろくに検討もせずに許可してしまう所に問題があるし、法律も捨てる人に有利になるようにしか作っていないので、あちこちに色々な物が捨てられています。許可した役所の人間も、ザルのような抜け穴だらけの法律しか作らない政治家にも責任をとって欲しいですよね。)
◎『コンクリートが危ない』
小林一輔:著 岩波書店 岩波新書 新赤616
(山陽新幹線や関西地方の高速道路を作るときに、コンクリートに入れる砂が足りなくて、山からとる山砂では無く、海から取った塩分の多い海砂が使われているのでかなり危険であるとの話です。阪神淡路大震災の時に高速道路の高架橋が倒れたりしましたが、それはコンクリートに問題があったのでしょうか? 山陽新幹線のトンネルの内壁が時々剥がれ落ちたりしているのも、そのあたりの問題でしょうか? )
◎『ダイオキシン』
宮田秀明:著 岩波書店 岩波新書 新赤605
(ダイオキシン問題は、ポリ塩化ビニルなどの塩素系のプラスチックを焼却処分したのが原因と言われ、塩化ビニル製品をあまり使わなくなり、問題解決状態になっています。マスコミも変に大騒ぎをして報道した過去があり、あまり報道しなくなりました。それでいいのでしょうか?)
◎『水の環境戦略』
中西準子:著 岩波書店 岩波新書 新赤324
(最初の方の文章は、なんだか分かりずらかったのですが、水についてはしっかり考えていかないといけないということでした。流域下水道網というのは無駄が多いという見解でした。最近、各自治体の水道料金や下水道料金が値上げされるという問題が出てきて、民間委託などをする自治体もあるようです。水関係は民間委託するのは、その会社が潰れた時のリスクが大きいということを、分かって考えなければならないですよね。
最近、ある自治体の水道料金の値上げの理由に、『下水道処理で出る活性汚泥の焼却費用が嵩むため』というのがありました。ちょっと待ってください、この活性汚泥には肥料となるリン酸が沢山含まれています。それから、リン酸肥料を作れば儲かるのに、わざわざ焼却処分にして、お金をかけて捨てているのです。肥料の値段は世界的に高騰している状態で、この活性汚泥のl活用は絶対行うべき物です。)
◎『産業廃棄物』
高杉晋吾:著 岩波書店 岩波新書 新赤182
(山奥とか、田舎の方とか行くと、鉄板に囲まれた施設がよく見られます。そこでは、多くが色々な廃棄物の処理が行われています。でも、そこでは本当に適切な廃棄物処理が行われているのか誰も知りません。それを、知ることもできません。適切な処理をしていることを、願うのみです。)
◎『ルポ にっぽんのごみ』
杉本裕明:著 岩波書店 岩波新書 新赤1555
(ゴミは、基本燃やして処分することが日本では行われています。もっと有効利用ができないのでしょうか? 本当に、政府や自治体や企業のやる気次第なのです。例えば、街路樹の落ち葉や剪定した枝、道路や公園や川沿いに生えている雑草、家庭からもそのような物がゴミとして出てきて、それらのほとんどは焼却処分にしています。それらを、処理して、メタン発酵やアルコール発酵などのバイオエネルギーとして活用すれば、すごいエネルギー資源となるのですが、全くやる気が無い。本当に、やる気だけの問題になっています。)
◎『水の健康診断』
小林 純:著 岩波書店 岩波新書 青版777
(日本の河川等の水質について調べている本です。多くは、四大公害裁判の一つである、イタイイタイ病の原因であるカドミウムについて、全国で調査した結果など述べています。昔、鉱山であった所などは、水質汚染の原因となる場合があるので、注意が必要と言うことです。)
最後に
この手の本は、他の出版社からも色々出ているし、中には過激な内容の本もあるのですが、機会がありましたら、他の本もまとめて紹介できたらと思います。環境問題に関しては、色々テーマを決めて、まとまり次第紹介したいと思います。
※扉の写真
JR静岡駅に設置された、新幹線の座席のプラモデル型の看板。