見出し画像

2024年総決算マイベスト◯◯スペシャル

 年末の繁忙期ということもあり諸事逼迫していてこんなことをやっている場合ではないのですが、今年も昨年に引き続き『総決算マイベスト○○スペシャル』を開催致します。


 今年一年を通し、僕が食べたり読んだり聴いたり崇めたり発掘したり愛撫したりしてきたものの中で、特に好きだったものを中心に紹介します。昨年と同じくTVerの未視聴消化に忙しいので、極めて簡潔なテイストでお届けさせていただきます。


映画部門


『ルックバック』


 年々映画を観る回数が減っていってしまっているが、その分観た映画の内容は以前より記憶に残りやすくなった。

 今年一番記憶に残った映画はなんだかんだで『ルックバック』だ。前にもちらっと書いたが、58分という上映時間の中に創作への向き合い方、文化・芸術というものの存在価値(そしてそれに対峙する覚悟)、社会問題などが過不足なく凝縮されており、非常に素晴らしい作品だった。

 エンドロールで流れる『light song』の余韻も良かったし、自分にも何かを創りたいという欲求はずっと潜在的にあったので、それを水面上にまで顕在化させてくれてありがとうという気持ち。

 言うなればこの作品には漫画『スラムダンク』の仙道みたいな魅力がある。仙道は海南戦で桜木が強敵・牧に1on1で立ち向かっていく時、仲間がその無謀さに制止をかける中で唯一「行け」と強気に言い放った存在だ。この『ルックバック』という作品も、すべてのクリエイター、全国にいるすべての桜木にとっての仙道みたいな、圧倒的説得力と力強さを持っている(作品を作品で例えるなよ)。

 年が明けたら趣味で書いた小説を投稿するだけのアカウントを作ってみようかなと思っていたりいなかったりする。エッセイや日記だけ読みたい方が読みにくくなってしまってないか少し不安だったので、思い切ってセパレートしてみようかなと。
 ちなみに今のところはいつもの頭がどうかしてしまっているような私事的な文章より一回ちゃんとした物語を書いてみたい欲の方が強いです。でも僕にとってnoteで奇文を精製することが最大のストレス発散方法なので、難しいかもしれないですね。

 『ルックバック』以外だとHuluで『ドライヴ』という作品を観て(もう10年以上も前の映画だが)、こちらもスタイリッシュな雰囲気で印象に残った。ライアン・ゴズリング演じる主人公がとにかく激渋で格好良かったんだけど、まさか年内に2回も最もフィジカルで最もプリミティブで最もフェティッシュなやり方を映像で見るとは思わなかったよ。


漫画部門


『氷の城壁』


 2023年の7月頃から隔月または2ヶ月おきぐらいのペースで単行本が発刊されるのを密かに楽しみにしていた。本当は最終巻が出た後に感想を述べようと思ってたんだけど、今年読んだ中でのベストを語るとなるとどうしても引き合いに出さないわけにはいかないのでね。

 ジャンプ+で連載してた『正反対な君と僕』の作者による作品で、こちらの『氷の城壁』は数年前にネット公開されており既に完結済みなのだが、人気が高いので紙媒体で単行本化されたらしい。読んでみてなるほど、繊細な人間関係の機微を描いた作風が今の時代に即している感じがする。

 もともと『正反対な君と僕』をジャンプラで読んでた身からすると『正反対~』はラブコメ要素強め、『氷の城壁』は恋愛要素もあるんだけどそれ以上に人間関係そのものにフォーカスされているような印象がある。『氷の城壁』は登場人物がそこまで多くないので個人の内面描写を深く描きやすいのかもしれない。
 どちらの作品も若者の心情を丁寧に描いた素晴らしい作品だが、『正反対〜』は「恋愛」を起点に物語がキャラクターのパーソナルな問題等に派生していくのに対して、『氷の〜』はキャラクターの「パーソナルな部分」を起点にして物語が恋愛含む人間関係の問題へと発展していくような印象がある。

 僕はこの『氷の城壁』という漫画を最初は主人公の小雪ちゃんに共感する形で読み進めていたのだが、徐々に絶対自分とは違うタイプだろうなと思っていた雨宮君の方に共感するようになってしまった。読んだ方ならわかっていただけるだろう。読んでない方も実際に読んでみればキャラクターがしっかり作り込まれているのできっと誰かしらには感情移入出来ると思う。


 あと他には『路傍のフジイ』も良かったし、完結したのは今年より前だけど『チ。~地球の運動について~』も滅茶苦茶面白かったですね。漫画を読んでこんなに胸が昂ぶるような感覚を覚えたのは『スラムダンク』以来かもしれない。途中で不覚にも泣きそうになってしまった。漫画を読んで泣きそうになったのなんて陵南戦の木暮の3ポイントシュートのシーンと山王戦のラストシーンを読んだ時以来だ(『スラムダンク』好きすぎるだろ)。

 余談だが『チ。』を読んでたら大学在学中に自分がよく共に活動してた人間がほとんど村上春樹を毛嫌いしてたのを思い出した。あの時もし僕が実は滅茶苦茶村上春樹を読んでいることを自白していたら彼等は僕の存在を異端扱いしただろうか。拷問と称し、硬い床に正座させられて膝の上に『ノルウェイの森』の単行本を50冊ぐらい積まれていたかもしれない。情けないことに僕は自己保身で「まあ小説が賛否両論あるのはわかるけどエッセイとか紀行文は普通に面白いけどね」というような曖昧な態度を取っていた。出来ることなら過去に遡り、あの頃の自分を正座させて膝の上に『遠い太鼓』の単行本を50冊ぐらい積んでやりたい。


小説部門


 昨年と同じく、「出版された年に関わらず今年読んだ小説の中で最も良かったもの」と「今年出版された小説の中で最も良かったもの」に分けて紹介。

 まずは前者の方だが、こちらは夏目漱石の『彼岸過迄』ですね。


 読書感想文の記事の方でも書いたけど、ここまで克明に繊細な心情を描写出来るその才能に畏怖すら感じる。あと個人的に漱石の文体は心地良くてすごい好きなんですよね、ワンセンテンスだけ切り取ってみても然るべき語彙が取捨選択されていて、贅肉のない文章になってる。

 穿った読み方かもしれないが、今回の『彼岸過迄』が基本的に三人称視点だったのも高ポイントだった。最近なんか一人称の自我が濃すぎる小説多くないか?と思って若干疲弊気味だったので。もちろん人称は物語のテーマに合う適切なものを選べば一人称でも三人称でも構わないし、そこは気にするべき部分ではない気もするのだが、一人称視点だとどうしても主人公の独りよがりになってしまいがちなので、僕も気をつけようと思いました。…………いつから読んでる側の話ではなく書いてる側の話になった?


 続いて「今年出版された小説の中で最も良かったもの」。満場一致で金原ひとみの『アンソーシャルディスタンス』(文庫版)です。


 まあこれもジャンル分けすれば一人称の自我が濃すぎる小説に分類されてしまうのだろうが、これは流石に一人称じゃないと書けないだろうという気がする。5篇の短編が収録されているのだが、どの話も飽きることなく一気呵成に読み終えてしまった。

 この小説の何が凄いって、ただ単に味が濃いだけならすぐに飽きてしまうが決してそうではなく、病み付きになるほどの中毒性を兼ね備えているところなんですよ。文章の持つパワーが凄絶すぎて、特に『ストロングゼロ』のラストの一文なんか脳髄をガツンと殴られたような感覚に陥ってしまった。その殴打音の残響が今でも完全に消えていないことが、この小説が傑作であることの何よりの証左だ。


ドラマ部門


Netflix『地面師たち』



 奇文師とは――――現実世界で劣等感まみれの冴えない生活を送っているのにも関わらずnote内で超然とした人間に成りすますことによってその特異性を強引に強調し、無駄に多岐に渡る語彙を使用することで読者の意識を故意に混濁させる悪徳能力者のことである。

 奇文師は「過剰な自己卑下」「過剰に奇を衒った諧謔表現」「奇特な修飾語」「指示語の多用」「著しく正鵠を欠いた比喩のセンス」「歪曲した自己顕示欲」などの複数の負の要素で構成され、読者の貴重な時間をただ無意味に搾取するための、粗雑かつ低俗な文章テクニックが必要とされる。



アニメ部門


『BEASTARS FINAL SEASON』


 まだ全話観てないんですけど今年はアニメをこれしか観てないし、2期まで観てBEASTARSが面白いということはもう確定事項みたいなモンなので良いでしょう(昨年のマイベスト○○スペシャルを読んだ方は既におわかりでしょうが後半に進むにつれて集中力が切れてきて紹介が雑になります)。


音楽部門


 今年よく聴いた曲はアスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けるヤツ最上級にしんどいヤツありったけの夢をかき集めて捜し物を探しに行くヤツでしたね。

 『デッドプール&ウルヴァリン』で使われてたイン・シンクの『Bye Bye Bye』もよく聴いた。


 なんだかんだで実力を発揮する前に相手の方がバックれてくヤツもよく聴いたな、あと恥ずかしながらこっちのけんとの『はいよろこんで』を最初サビの部分しか知らなかったからわりと最近までCreepy Nutsの曲だと思ってた。もう最近ホント流行についていけない。シャバいという言葉が流行りだしてたのもついこの間知ったけど、シャバいという言葉の意味を知らないということ自体が多分シャバいのだろう。「しごでき」とかも最初何の略語なのかわからなくて「ナニかをシゴいてたらシゴきすぎたあまりに生じてしまったデキモノ」の略かと思った。思考回路がシャバすぎる。


YouTube部門



 福原遥ちゃんがお友達の橘里依ちゃんとロンドン、パリに行ってる動画です。もういい加減読者諸賢も僕の執拗な福原遥ちゃん贔屓に飽きてきてると思うけど残念ながら僕の方が全く飽きていないので堪忍してください。福原遥ちゃんの声を聴いてるだけで落涙してしまうという奇病が完治しない限り多分永遠に言ってると思う。

 まあ、とはいっても流石に僕も分別を弁えた礼節ある一人の人間としてあまりにも行き過ぎた感情は持たないように控えてますけどね。まず現実の身の周りにいる人間関係をちゃんと構築しろという話だし、行き過ぎた感情は某ウェザーニューサーの件みたいに余計な波紋を引き起こしますから。ただ福原遥ちゃんが幸せに暮らせればそれでいい。

 たまに好きなアイドルが夢に出てきて驚喜してる人とかいるけど、僕は未だ夢に福原遥ちゃんが出てきたことはないし、これは節度を持って応援してることの証拠だろう。その代わり毎日のように突如空から降ってきた小粒の隕石から福原遥ちゃんを庇って瀕死になる妄想ばかりしてる。いや一番怖いだろそんなファン


ラジオ部門



 昨年に引き続き『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』のスペシャルウィーク、リボルバーヘッド回が受賞。
 以下の記事で書いたので詳しくは割愛。


 ライブビューイングで観た『オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム』も非常に濃密な内容で素晴らしかったですね。この番組が毎週土曜の深夜にやっていて本当に良かったと思う。月曜の朝の出勤時にタイムフリーで聴いていつも憂鬱感を紛らわしてもらっている。

 今年は激しい鬱状態で本を読めなかったり映画を観られなかったりする時期もあったけど、ラジオだけは継続的に聴けていたのでとても有難かった。特にこの陽が短い冬の時期は寂しさを埋めるのに重宝する。でもあんまり人にラジオよく聴いてるとかは言いたくない。閉塞的であり開放的であることがラジオの醍醐味だからだ。まあ、この話はまた追々しよう。


グルメ部門


 せっかくなので『おひとり様のためのグルメコレクション』シリーズ外から選出。僕は基本的に外食は一人ですることが多いが、絶対に人と共に食事が出来ないという体質の人間ではないので、たまには複数人で食事することだってある。

 ということで今回紹介するのは今年の春頃に数少ない知己と行った、後楽園にある『焼肉 醍醐』というお店。


 テーブルの様式が回転寿司みたいで、タッチパネルで注文するとレーンに乗って肉がスーッと流れてくる。こうなるとさながら餌を与えられる動物のような心持ちになってくるのだが、いざ焼肉を目の前にすればそんなことはどうでもいい。

ランチの焼肉定食 ¥1500

 ただひたすらに肉を焼き、喰らう。それだけ。

 ただひたすら語らい、飲む。それだけ。

石焼ビビンパ ¥1188
冷麺 ¥1078


 ただひたすら石焼きビビンバの熱さを、冷麺をすぐ流し込むことにより相殺する。それだけ(ちゃんと味わえ)。

 悪い意味じゃなく、変に格式ばってないので気心知れた仲間と来ればファミレスに来たかのようなアットホーム感も味わえる。イメージとしては回転寿司のテーブルでクオリティの高い焼肉を食べられるお店と認識すればいいだろう。ただしメニューに寿司はひとつも載ってないので注意して欲しい。寿司が食べたかったら普通にスシローとかくら寿司へ行くか、ライスを注文して君だけのオリジナル肉寿司を握ってみよう!


ベストバイ部門



 今年買って良かったものは『iPad mini 第6世代』ですね。ちなみに下記のものが僕のnoteの中で今年一番読まれた記事らしい。


 なんかいつの間にか第7世代が出てたらしいけど性能にそんなに差はないので別に後悔してない。ネットの検索履歴が「iPad mini6 7 比較」みたいな文言で埋め尽くされてるけど、どうせiPad miniでやることなんてYouTube閲覧と電子書籍の購読とサブスク視聴ぐらいしかないのだ、仮に性能が格段に上がったiPad miniを手にしていたとて逆にスペックをフル活用出来ずに宝の持ち腐れ状態に陥っていたことだろう。だからこれで良いのだ。

 現にこのiPad mini6で漫画アプリを駆使して『ONE PIECE』を東の海編~ワノ国編まで読破出来たし、これだけでも買った甲斐があるというものだ。僕はいつも行っている美容院で『ONE PIECE』の最新刊を読んでいて、その習慣が始まったのがワノ国編あたりからだったから(散髪時に他に読む漫画がなかったので『ONE PIECE』を1巻からではなく90巻ぐらいから読み始めるという奇行に走ってしまっていた)、ようやく前後の辻褄が合ってスッキリした。まあ多分『ONE PIECE』をこんな奇特な読み方してるのは地球上に僕一人だと思うが。

 noteのフォロワーの方の記事なども基本的にこのiPad miniで読ませてもらっている。なんせ画面のサイズ感が小さすぎず大きすぎずちょうどいいのだ。iPad miniの最大の魅力はこの適度なサイズ感だろう。



 ということで、最初はiPad miniの画面をワンスクロールしただけで読み終えられる程度の簡潔な文章を書こうと思っていたんですが、気付けば10スクロールぐらいしなきゃ読み終えられないほどの文量を書いてしまいました、すみません。途中何度も「もうええでしょう」と口を挟みたくなったかもしれません。しかしそれでも貴方がここまで読んでしまったということは、貴方もしっかりこの奇文師詐欺に引っかかってしまったということです。

 でも安心してください、僕は貴方がここまで読んでくれたという事実だけで極上のエクスタシーを感じられますので、貴方をビルの屋上みたいな高所から突き落とすこともありません、そもそも貴方が立っていた所は高い所とかではなく普通に地面の上です、そして眼前にただ落書きまみれの壁があっただけです、貴方は壁にされている落書きを一介の人間が書いた文章だと錯覚してるだけに過ぎないのです、それに気付かれた時点で僕の奇文師としての活動は終了です、長々とお付き合いいただきありがとうございました。



 いや、未だに地面師ネタを擦ってるのって滅茶苦茶シャバくないか……?



おわり

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集