【基礎教養部】今日の民主主義漫談
ここ数年における,国内,国際における民主主義体制の情勢は大きく変化している.ここ三年間,日本国首相を務めていた岸田文雄政権においては強く感じなかったものの,7年という長期間にわたって首相の座にあった安倍晋三政権下においては,不必要に対立構造を煽るなど「冷静な議論」という民主主義の前提を軽んじたきらいがあったのではなかろうか.
また,アメリカ大統領選においては共和党のトランプ候補が討論会において真偽不明の情報をもとにした発言を繰り返している.前回の大統領選において,投票結果を不満に思った
人たちがアメリカ連邦議会を襲撃した事件も記憶に新しい.
書評において紹介した,インドにおいてもモディ体制下によって民主主義は揺らいでいる.
しかしながら,2022年に勃発したウクライナに全面侵攻を行ったプーチン政権下のロシア,またついに不動産バブル崩壊の兆しが見え始め,経済面において不安定感が増してくのと反比例するように政治面での締め付けを強化している習近平体制下の中国と相対する形で,民主主義,法の支配といった「基本的な価値観」を重視し,共有することそれ自体の価値が見直されているのも事実である.かのウィンストン・チャーチルは「民主主義は,これまでに試されたどのような政治体制を除いて最悪な形態である」と評価したそうだが,時代が進んでいっても毀誉褒貶が相半ばし,議論が続けられていることそれ自体に民主主義の強靭性が表れているのではなかろうか.我々は,どう評価するにせよ誰の目や耳を気にすることもなく民主主義(と,それに付帯する個々人の自由な意思表明を尊重する制度)を議論することができる.
さて,ここからは「モディ化するインド」を読んだことを直接のきっかけとするわけではないのだが,直近の日本における政治情勢を議論する文章を投稿したいと思う.現在における日本の政治イベントといえば,何よりも立憲民主党の党首選と自由民主党の総裁選である.このうち,前者については元総理の野田克彦氏が枝野幸男元官房を破り当選した.おそらく,厳しさを増す国際情勢,及び国内経済における物価高騰の状況を受け,野田氏が持つ安定感が評価された結果であろう.個人的には,立命館大学OBである泉健太前代表が惨敗したことは大変心を痛める思いで見ていた.前回の衆院選から立憲民主党を地道に立て直し続け,自民党における政治資金問題という敵失も重なり一時は政党別支持率において自民党を抜くという状態にまで持ってきたのも立命館の星・泉健太なのに…政治には薄情さはつきものだとされるが,あまりにもこれは酷ではなかろうか.かなしい.まあ一目につく派手さとかとは無縁なのが俺たちの泉健太のいいところなのではあるが,それが裏目に出たか.
自民党総裁戦については,もはや諦観の気持ちで見つめつつある.俺たちの漢・岸田が突如ぶっ放した派閥解散宣言により,9人もの候補が乱立するなど普段の自民党総裁戦とは全く異なった様相を示しているのが今回の総裁選である.ただ,候補が乱立している関係上,特に第一回投票において国会議員票が誰か一人に集中するとは考えづらく,結果党員票が重要度を増している.つまり,国会議員を通じた間接民主制ではなく,直接民主制に近い形となっているのだ.そのため,現状においてはある程度まとまった党員票が見込まれる石破茂元幹事長,小泉進次郎元環境相,高市早苗元経済安保相のいずれか二人が決選投票に歩を進めると見込まれている.…個人的には何かの冗談かと思われるメンツではあるが,これが現実なのだそうだ.党内屈指に人気がなく,もともと自派閥にいた人間すらまとめきれているかどうか怪しい石破氏,三周くらい遅れている新自由主義じみた政策を唱え,相変わらず答弁能力に不安しかない小泉氏,安倍ちゃんの悪いところを煮詰めたような電波じみた主張を発信しまくっている高市氏と,不安しか感じないメンツである.漢岸田,なぜやめてもうたんや.
まあ自民党党員でもないし,眺めることしかできないのであるが…アメリカ大統領選を笑いながら見ていたのが,まさか跳ね返ってくるとは…大阪市北区に引っ越したし,どうせ小選挙区は維新の圧勝だろうから,せめて比例代表だけでも国民民主に入れようかな…
こんな居酒屋談義以下の適当な政談でも自由に発言できることこそが,わが国における民主主義の最も素晴らしく,これからも守り抜いていかないといけない要点であるように思う.「モディ化するインド」を通して,他山の石としなければならない.