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本日の本請け(2023.5月)
本に合うお茶請けならぬ本請けを考えて一緒に写真を撮って感想を載せております。
いつもいろいろな出版社の本を読みたい!と思いつつけっこうかぶったな、ということが多いのですが、今月はなかなかにバラバラにできて満足。
『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ─増補新版 世界を信じるためのメソッド』森達也(ミツイパブリッシング)
以前に、『世界のいまを知り未来をつくる評論文読書案内』を読んだときに、文中に出てきた本を全部読んでみたい!と思い、少しずつでも始めてみることにしました。
最初に知里幸惠の『アイヌ神謡集』を読んだので、次はこれだ!と本の中でも最初に紹介されていて、難易度も簡単めなこれにしました。
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語りかけるように書いてくれているのでとても読みやすかった!
問いかけからの論理的な説明が行われていて非常に納得感がありました。
特にオウムの事件は小さな頃にかなりニュースを目にしていたので、ぞっとしました。
0か100かのものなんて、世の中にはほとんどない。
私たちも、今どんな気持ちか、と尋ねられると感情の名前でスパッとはっきり言えないときもあります。寂しいが10%、悲しいが5%くらい、50%くらいは眠いけど、10%くらいはわくわくしていたりもする……。
怒るときも、それは実は不安から来ているかもしれない。
それは、人の行動に対しても言えることだなと思いました。
ニュースをつくる人たちも事情がある、ということをわかっていないと、センセーショナルなものに飛びついて、過激なものにあっという間にのみこまれてしまう。
図書館に一冊、ぜひ必要な本だと思いました。
『クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ』田島木綿子(山と渓谷社)
安住さんのラジオを聴いていたらこの方のお話が面白くて、すぐ購入してしまった一冊。
ゴールデンウィークに旅行に行ったのですが、その道中で読み終わってしまいました。面白かった!
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動物の繁殖や生殖のお話を、研究者としてわかりやすく面白く!カラッとした口調でお話してくれています。
最初は、出てくる単語が刺激的(笑)なので、飛行機の中や電車の中で、Kindleの画面が見えてコイツ何読んでるんだと思われないかな!?とか心配してしまったのですが、面白くて途中で忘れてしまいました。
それぞれの生き物が取っている戦略が、なんだかいじらしかったり、研究者の苦労も忍ばれたりして本当に面白いです。
すべての生物にとって、「生きること」はそれだけで大変なことである。それでも、動物たちは、迷うことなく前を向いて生きているように見える。私には、どこか楽しそうに見えることもあり、そんな彼らから、命を得て生きることの喜びと勇気をもらえる。「生きること」は結構大変だけど、それだけで素晴らしいことなのではないかと。
人間は、「ただ、生きること」に満足せず、それを楽しむことも忘れがちだ。そんなとき、動物たちの生きざまからヒントをもらえることがあるのではないだろうか。
ラスト近くのこの言葉が、とてもよかった。
『戦物語』西尾維新(講談社)
物語シリーズの新刊。『化物語』は当時、発売時にリアルタイムで購入して読んでいるのですが、十八年前か……。当時、『化物語』は上下でキレイに終わっていたので、アニメになって、最終的に阿良々木くんが結婚するまで読んでいるとは思いませんでした。
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私は老倉が一番好きなのですが、あんまり理解されません(笑)。
「面倒くさい奴なのに面倒くさい奴と言われるのが嫌なのかという意味の質問ならば、その答はイエスよ」
と今回彼女が言っていて、そう!こういうところが好き!って思います。
シリーズの最初の頃は主人公・阿良々木くんの主人公ぶりにわくわくしていたのですが、自分が大人になるにしたがってなのか、他の登場人物たちの目を通していってなのか、主人公過ぎるところに疲れたりもして。老倉はそういう阿良々木くんにNOを突きつけるから好きになってしまったのかもしれません。
アニメで印象的だったことが回収されていてうわあ……!ってなってしまいました。
今回は栃木県が舞台。西尾さんはいろいろなところに旅行に行っていらっしゃるイメージなのですが、この間の石川県舞台の怪盗フラヌールの新刊といい、コロナ禍の間は日本を回っていたのかな?
あと、スラムダンクとRRRのネタまで雑談中に入れているんですが、原稿って発売日の前のいつ頃までに書いているんだろう?って思ってしまいました(笑)。
『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ (著), 髙山 祥子 (翻訳)(東京創元社)
たまに、「海外の本が読みたい!」という衝動になるときがあります。
本屋で海外文学の棚にいって、あれがいいかなこれがいいかな、と自らの直感にのみ従って本を選ぶのも楽しいです。
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司書の資格があるので、惹かれて購入した本。
戦時下のパリと、それから四十年後のアメリカで、お話が行ったり来たりします。
海外文学だとわからないこと、見慣れぬ単語が出てきたときに最後まで読み通せるかな?と心配になるのですが、これはそれぞれのお話がとても短かったので、今日はここまで読んだからいいか、とリズム感に乗って読めてよかったです。
図書館、本を愛するオディールと、母が病に倒れたリリーの物語が交錯します。
恥ずかしながらパリが占領されたことさえ知らず……。読んでいると、登場人物たちの正義に添いたい気持ち、なのに傷ついたことにどうにもままならない心情がとても迫ってきました。
『スレイヤーズ1 スレイヤーズ』『スレイヤーズ2 アトラスの魔導士』神坂一(KADOKAWA)
最近、トレンドにスレイヤーズが入っていました。どうやら、コナンの映画から灰原哀の声優さん、そしてスレイヤーズへとつながっていったようです。
懐かしくなり、1巻から最新刊まで全部読みたいなあ〜でも、1〜15巻は実家だしな、持って帰ってくるのも……と思っていました。
そうしたら発見!オーディオブックにあるじゃないですか!
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普通のオーディオブックの半分くらいで聞けてお手軽!
一気に聴いてしまいました。朗読は一人称のためか、どこかリナにアニメで声をあてた林原さんの癖を取り入れている気がして、とっても楽しく聴けました。
テンポも、話運びもすごく面白い……。ゼルガディスやっぱりいいキャラ過ぎて大好きだなあと。
2巻のアトラスの魔導士も悲しいラストながら読んだ当時とても印象に残っていたのを覚えています。とくに「紫のタリム」の行き着いた先をものすごくよく覚えていて、オーディオブックはイラストを見られないのにあのイラストが蘇ってきてしまいました。
新装版のあとがきは読んだことなかったので、それも聞けてよかったです。またちまちまと続きを聞こうかな。
『おやごころ』畠中恵(文春e-books)
「まんまこと」シリーズの最新作。9冊目です。
以前にNHKでドラマをやっていたときに見て、それから読み続けています。またドラマ、やらないかな。
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どの作品も連作短編集で、江戸が舞台のミステリ。
主人公は町名主。人々から持ち込まれた困りごとを、東奔西走しながら解決していきます。
江戸の町で実際暮らしているかのような、教科書ではわからなかった人々の暮らしが生き生きと迫ってくるところも好き。登場人物たちにはみな、一本筋が通っているところがあって、それがいわゆる「江戸っ子気質」みたいなことなんだろうか、と思ったり。
病によってころっと人が死んでしまうのが、昔はこうだったんだな、と思わせたり。
と思えば、ストーカーにきょうだい贔屓、子どもに確認をとらずにそのあり方を決めてしまう、なんてところには、現代とも変わらないところでなんだかどんよりします。
すっきりした結末のときもあれば、なんだかなというときもある。それでも毎日を過ごしていく。そんなところが好きで、次も楽しみにしています。今回は、麻之助、おめでとう!という気持ちでいっぱいです。
『両手にトカレフ』ブレイディみかこ(ポプラ社)
実はずいぶん前に買っていたのだけど、いわゆる「厳しい現実」を読まなければいけない気がして躊躇して、積ん読にしばらく置いていた本。
この方の他の作品もそうなのですが、読み始めるとテンポよくどんどんページがめくれてしまう!ぐずぐずしていたのが嘘のようでした。
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自分は物語が好きです。いわゆるビジネス本とか、役に立つ本やノンフィクションよりはやっぱり物語が好きです。
当事者でなければわからないこと、「あんたに私の気持ちなんてわからない」と言われたら黙るしかないこと、って絶対にあると思うのだけど、それを理解できるのって、やっぱり「物語」ってかたちなのではないかと思うのです。
もしかしたら時として、当事者たちの生の言葉が届かない人にも。
ウィルが送ったメッセージにうん、うん、と頷きながら読んでしまった。人生で何度か読み返したい。もっと言うと、子どものときに読んでいたかった。思春期にはいつも自分の足りないところを埋める本を探していた気がするのだけど、この本を読んでいたら、もう少し早く他人に手を伸ばせる人間になれるステップを踏めていた気がする。でもそれは、私が大人だからかな、やっぱり。
『鈍色幻視行』恩田陸(集英社)
恩田陸の新刊。豪華客船で二週間、関係者を集めて再三映画化しようとしては死者を生み出す「呪われた本」についての話をする、という最高に大好きなタイプの恩田陸の本!
しかも、来月にはその作中作品の『夜果つるところ』が発売されて読める、という。
『三月は深き紅の淵を』や『黒と茶の幻想』が思い出されてずっとわくわくして発売日を待っていました!
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読み終わった今、『夜果つるところ』がめちゃくちゃ読みたい〜!先に読ませてくれよ!なんで二ヶ月連続刊行なんだよ!同時刊行でよかったでしょ!という気持ちが抑えられない。
一ヶ月待つのしんどい……し、『夜果つるところ』のネタバレが入ってるし、先に読みたかった……いやでも、『夜果つるところ』読んでみないとわかんないけれども……。
上は特設サイト。
私は恩田陸の作品では『黒と茶の幻想』が一番好きなのですが、今回の作品はそれと通ずるものがありました。
ストーリーの進行にあたって絶対に必要な会話や記述ではなく、むしろそれとは直接は関わりのないような、登場人物たちが話している会話、独白が好きなんですよね……。
支配者だと? 支配されることしか能がないくせに。常に誰かの顔色を窺い、誰かのあとについていくことしか知らないおまえたちに、彼女は支配者に仕立てられたのだ。おまえたちはいつも支配者を熱望しているのだ。支配されているから何もできないと、何も意見など言えなかったとおまえたちは言いたいのだ。自分の脳みそで何かを考えたことなどないくせに。
この雅春の怒り、ちょっとわかる。いつも周りに何かを決定、決断することをやらされてる、もう疲れたな、と思ったことがあってそれを思い出した。
十三の「供物」の章の、原作者が映像化についてどう思っているか、の描写もなるほどなあってなった。
「それは同感だな。人間て、自分が何考えてたかなんてちっとも覚えてやしない。なんで自分がそうしたかなんて、行動の理由だって忘れちまう。紙切れに書き込むのは、かなりの部分を省略して、ならして、最大公約数化した情報だけだもんな」
「うん。真実なんて、パレードで降ってくる紙吹雪みたいなものだよね。ちらちらしてて、いろんな色があって、ところどころでキラッと光ってる。光ったその瞬間は本当に金色だったっていうだけで、地面に落ちた時には他の紙吹雪に紛れて、踏まれて、すぐには見えなくなっちゃう。綺麗なまとまりのある実体じゃないんじゃないかな」
これも、すごく。どうしてあんなことしたのって聞かれてもよくわかんないなあって思うこと多い。
読みながら気がついたのですが、私Qちゃんが出てくる場面を読んだことがあると思い出しました。
恩田陸にどっぷりハマっていた時期に、雑誌の連載も読んだことがあったのでした。そういう、記憶がよみがえってくるという体験は作中の人物たちとも通じるところがあって、似た体験をしているようで面白かった。
この物語は、実写化を考えてどの俳優さんがいいかな?と考えてしまいました。
傍観者になることもできるってイメージから貫地谷しほりさん、主人公でどうかな。Qちゃんは志尊淳くんがイメージにあります。雅春は誰だろう?ちょっと思ったのは松田龍平さんかな。
『夜果つるところ』も楽しみ。
『ノッキンオン・ロックドドア』青崎有吾(徳間文庫)
この夏ドラマ化、ということで読んでみることにしました。
不可能犯罪専門の倒理と、不可解犯罪専門の氷雨。トリック特化探偵と、動機特化探偵がふたりで探偵社を営んでいて、やってくる依頼をこなしていく。
女子高生の探偵社のアルバイト、お菓子ばかり食べている女刑事。
ちょっとライトノベルっぽくとっつきやすい。読みやすくて、でもミステリしてる。面白かった!
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面白かった!2巻もあるし、ドラマも楽しみ。ビジュアルはかなりイメージ通りな気がします。
『ゴールデンカムイ』野田サトル(ヤングジャンプコミックス)
実は18巻くらいまで読んでいたのですが、新刊が出たら買いつつ止まったままになっていて、きっかけを逃していました。
友人からゴールデンカムイ展に誘われたので、全部読みました。
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本当に本当に面白くて夢中で読んでしまいました。
でも、最終回のナレーション部分で「え?」と思ってしまいました。
結末についても、アシリパさんに「アイヌの新しいリーダー」という役割を振って、そのキャラに決断をさせて、今のこの現実につながっているように描写されているように読めているとなると、まるで今のこの現状が望まれたもの、理想的なもの、と言っているようで。
ゴールデンカムイ展も、「キャラのもの」として展示され過ぎている気がしてうーんと思ってしまいました。
もやもや考えていると、この面白さが罪深いほどに感じられました。ウポポイも行ったし、阿寒のアイヌコタンも行ったのですが、それはこの漫画がきっかけ。こんなに面白くなければ行ってなかっただろうけれど、それでもやっぱりどうなのかなという気持ちは残りました。