見出し画像

#406【ゲスト/出版プロデューサー】「出版業界の生き残り戦略」について考えてみた

このnoteは2022年6月1日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。 

「出版業界の生き残り戦略」というテーマを提案いただいた意図

土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める土屋芳輝です。本日も昨日に引き続き、一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表理事で、出版プロデューサーの西浦孝次がゲストに来てくださっています。森上さんと共にお伝えしていきます。西浦さん、森上さん、本日もよろしくお願いします。

西浦・森上:よろしくお願いします。

土屋:昨日は西浦さんの出版プロデューサーとしての取り組みについて詳しくお聞きしました。まだお聞きになられていない方は、ぜひ昨日の放送もチェックしてみてください。そして本日は、西浦さんからご提案いただきました、「出版業界の生き残り戦略」というテーマでフリートークができたらと思っております。まずは西浦さんからのこのテーマをご提案いただいた意図などをお聞かせ願いますか?

西浦:はい。遡ること今年(2022年)の2月なんですけど、2022年2月に僕、ABEMA Primeさんにちょっと出演させてもらったんですよ。そのとき、テレ朝のディレクターの方に言われたのが、「翻訳家の方が、“ここが変だよ、出版業界“みたいな形で切っていくので、中立の立場でフォローを入れるじゃないけど、コメントをできるように西浦さんに出てほしい」って言われたんですね。

森上:なるほど。

西浦:で、最初は翻訳さんの話から始まるんだけども、最終的に「再販制度ってどうなの?」とか、「出版不況って言われているけど、どうなの?」とか、「どうやっていけばいいの?」っていうところに話を持っていきましょうって話だったので、僕もちゃんと勉強しようと思って、雑誌とかコミックとか広告の仕事をやっている後輩たちに連絡を取って、「今、どうなっているの?」って聞いたんですよ。で、めちゃくちゃ情報を仕入れて、すごく衝撃を受けて、書籍以外の業界はめっちゃ頑張っているなと思ったんですよ。

森上:書籍以外が!? ほー。

西浦:そう。で、ABEMAでは企画内容がどんどん変わっていってしまって、その話をする機会がなくなっちゃったので、「わー! 誰かとこの話したいわー」と思っていたんですよね。そしたら、ちょうど森上さんからこのお話をいただいたので、「森上さんとこの話をしゃべりたい!」と思って、今回はご提案させてもらいました(笑)。

森上:これまた、すごく自分たちも知りたいテーマではあるんですけど、まず西浦さんが衝撃を受けた、書籍以外は頑張っているというのは、具体的にはどんなことなんですか?

西浦:まず、コミックの連中はもう出版業界じゃなくなっているんですよ。もう出版業界っていう括りに入っていなくて。どういうことかって言うと、ビジネスモデルの転換をずっとやってきて、それがここ数年で完成したんですよね。つまり、今までのコミックって、人気のある作品を頑張ってつくりますと。で、人気のある作品ができたら、それがアニメ化されたり映画化されたりするんだけど、最終的に紙のコミックが売れて利益を回収するんですよ。儲けるんですよね。それが今は、紙のコミックの回収より、電子とITですね、知的財産のほう。権利ビジネスとしての収入とかのほうが上回っているんですよ。

森上:なるほど。

西浦:だから利益を稼ぐ頭は、あるいは売り上げを稼ぐ頭は出版物の紙の本とか紙の雑誌、紙のコミックじゃなくなっていて。

森上:なるほど。

西浦: ITだよねってなったので、コミックは出版業ではなくIT業に変わったんですよね。

森上:そっちに以降したっていうことですね?

西浦:移行が終わりました。

森上:そういうことですね。

西浦:そう。だから、講談社だったと思うんですけども、過去最高益を出したし。

森上:はい、出していましたね。

西浦:紙のコミックについては、「コストカットの意識をもっと頑張れば、まだまだ利益を出せると認識している」みたいな言い方なんですよ。

森上:なるほど。

西浦:すぐには切らないけど、伸ばしていく場所ではないですよね、この言い方だと。

森上:はいはい。

西浦:さらにこれは個人ベースで聞いた話なので、数字の裏付けとしては若干弱めなんですけど、データで見れば電子コミックのぎy「が紙のコミックよりも売上がでかいのはわかるんだけど、各出版社のコミックアプリの売り上げが入ってないでしょって。

森上:はいはい。

西浦:あれは電子コミックじゃなくてただのアプリへの課金なので、この「電子の売り上げとアプリへの課金ってどっちが大きいの?」って聞いたら、「アプリでしょうね」ってみんな言うんですよ。

森上:なるほど、なるほど。

西浦:だから我々が把握をしていない金額がアプリから入っていて、アプリから売上って当然、書店さんとか取次さんを経由しないですから。

森上:そういうことですね。

西浦:丸々っと入ってくるじゃないですか。

森上:つまりAppleならAppleに手数料を取られた分だけを、取次とか書店に払っていたものが、こっちに代わったっていうだけですよね?

西浦:そうそうそう。あとはアプリ開発をしてくれている会社さんとか、運用している会社さんもあるので、そちらには払っているんですけど、利益率はすごく高くなっている。だから紙のコミックは利益をどうコストカットするかってなっちゃっているんですよ。

森上:なるほど。それは下手したらもうプリントオンデマンドで漫画をつくればいいかっていう話になりかねないですね。

西浦:もちろん単純な話ではなくて、新人作家で電子コミックしか書いてない人がたくさんいるんですけど、そこはやっぱりかなり厳しい。実売印税ですから、収入もなかなか増えないし、ってことで厳しいと言われるんだけど、それはそれで今度はウェブトゥーンって言って、電子だけで携帯だけで読むコミックをつくっている会社も出てきて、そこは言ってみれば我々の認識で言う出版社ではないんですよ。ウェブトゥーンをつくっているだけの会社なんだけど、そういうところで大きいところとかは印税率を50%近くにしていて。

森上:なるほど。コストがかからないから、印刷費が。

西浦:そうそう。出版社から電子をそっちに移動した結果、印税が変わらないっていう作家さんが出てきていて、そっちと勝負が始まっているみたいな感じなんですよ。まさにビジネスモデルが完全に変わっているじゃないですか。

森上:なるほどね。だから、紙で読む理由もなくなったっていうことですよね。デバイス自体がこのスマホになったと。

西浦:そうそう。だから、プロモーションの場所、テストマーケティングの場所も昔はたぶん雑誌だったんですけど。だから、「ジャンプ」なら「ジャンプ」上で人気があるかどうかが勝負だったんだけど、今もそこは強いけども、言ってみればツイッターでバズるかと言うか。ツイッターの広告ですよね。だから、『タコピーの原罪』は上下巻しか出てないですけど、あれは150万部突破ですからね。

森上:素晴らしいね。もうそういう時代ですか。

西浦:そういう時代になっている。

森上:○○万部って言うんですかね? ダウンロード? DL数?

西浦:DL数と紙の売上の両方。電子も売れると紙にするので。合わせてですけど。

森上:はいはい。なるほどね。

「雑誌」「コミック」の生き残り成功戦略

西浦:でも、コミックはわかるじゃないですか。儲かっている感じはずっとしているし。ずっとバブルだって言っているから。でも週刊誌とかもすごく儲かっていて。「週刊文春」とか、めちゃめちゃ稼いでいるんですよ。名前をバンバン出しちゃっているんですけど(笑)。文春オンラインとかYouTubeの広告収入がすごくて、文春に関しては紙の文春が今なくなってもたぶん問題ないだろうと言われているんですよ。

森上:そういうことですね。数年前ですけど、「月刊文藝春秋」がnoteで買えるようになったじゃないですか。noteで買える形と同じですよね? 結局、紙じゃなくていいよねっていう。

西浦:もうまさにそれで、今LINEでも文春さんの記事を一記事単位で買えるんですよ。10円で。それを新聞記者の後輩が買っていて、「文春の記事は課金しても損した気にならない」って言うんですよね。

森上:なるほど。それだけ信頼があるんですね。

西浦:やっぱり構造的に奥行きのある取材をしているとかで、もちろんジャーナリズムとして、文春としての能力が高いからっていうのもあるんだけど、つまりオンラインメディアとして雑誌の生き残りに成功しているところが出てきていて、わかりやすいのはそういう文春みたいなところ、いわゆる週刊誌系と、ビジネス誌系、東洋経済オンラインとか、ビジネス系も生き残っているし、あと専門紙系はこれまたバシバシ広告が決まるって言っていて、「dancyu」さんとかだと、いまだにビールの広告がめっちゃ入るんですよ。

森上:なるほど。

西浦:なので、雑誌イコール売り上げが落ちてまくっているので、不調なんだろうと思い込んでいると、結構うまくいっているところを見落としていて。広告が入らなくなって廃刊しているところもありますが、広告のディスカウントをやりすぎたからだって言っているんですよね、広告の担当の人間が。ひどいところは9割減とかで売っていたらしいので。それは持たないじゃないですか。

森上:そうですよね。

西浦:だから、広告が今でもしっかり入るビジネスとして、ちゃんと回せているテーマの雑誌とかであれば、全然生き残っていけていて、もうオンラインメディアとしてやりましょう、で、オンラインメディアを軸にする。あるいはそっちでちょっと生き残りが難しそうなところはこれまだチャレンジ中なんだけど、ブランドビジネスとして残っていこうとしていて、いわゆる会員ビジネスをやろうとしている。

森上:なるほど。いわゆる昔の定期購読者を囲い込むみたいな感じですかね?

西浦:そうです、そうです。「ターザン」とかでも会員制を始めているから。もうやっていらっしゃいますよね。あと、宝島社さんとかも全社を挙げて、そういうのをされていたりするので、雑誌系は、要はオンラインビジネスにするか、オンラインメディアにするかで、海外の「ニューズウィーク」と同じような戦略を描いていて、コミックはもうITビジネス、ゲーム業界とかと同じ様な戦い方をしていて、それを見たときに「書籍だけあんまり変わってなくないか?」と思ったんですよ。

西浦・森上:(笑)。

電子化に向けたマネタイズ手法

森上:でも実際問題、他社さんに聞いてもらってもたぶん同じ答えだと思うんですけど、それこそまず書店と、いわゆるネット書店で言うと、ネット書店での売り上げは着々と上がっていますよね?

西浦:うんうん。

森上:やっぱり一番大きいのは電子書籍ですよね。電子書籍の売り上げは完全に無視できない状況になってきていると言うか。やっぱりそこの流れは雑誌とか漫画とかに比べたら遅いかもしれないけども、着実に紙である理由がなくなってきているっていう感じはしますね。

西浦:でも書籍の電子化って、僕が数字を見た印象なんですけど、1割ぐらいじゃないですか? 電子書籍売上全体の中では8割ぐらいは確かコミックで、書籍は十数%ですよね?

森上:紙の割合がどれぐらいかっていうのはちょっと知りたいところなんですけど、コミックと書籍のね。でもやっぱりどう考えても、それこそ西浦さんと昔話したんですけども、やっぱり紙である理由っていうのは、もうほぼほぼ……(ない)。それこそ美術、アートの本とかじゃないと紙である理由がなくなってきている。

西浦:その話、しましたね。覚えています。

森上:絵本とかは多少あるにせよ。仕掛け絵本とかは紙である理由がありますけども。そういうところがいよいよ来ているなって感じがしますよね。

フォレスト出版のビジネスモデル

西浦:だから書籍業界というんですかね、我々。僕も書籍業界の末端にいるつもりではいるんですけど、ビジネスモデルの転換とかって、もうちょっと考えられるんじゃないかなって個人的には思っていて。

森上:はいはい。本当にそれはあると思いますね。まあ、小さいことですけど、チャレンジしていることで言うと……。

西浦:それ聞きたい、それ聞きたい!

森上:例えば、うちでは紙の本では実売が出なくなっちゃっている本は、電子書籍も出ているんだけども、あえてnoteに全部公開して、noteで売る。いわゆる文字のコンテンツとして売る場所を変えるというか。

▼こちらで、手に入りにくいフォレスト出版のレア本コンテンツを通常より安くお求めいただけます。

西浦:いい! いい!

森上:それは始めていますね。それはうちがやっただけの話なんですけど。チャレンジレベルなので、まだ全然数字も出ていないんですけど。文字のコンテンツになってくると、これはもしかしたら雑誌も同じなんですけど、いわゆるネットの記事と紙の本の記事、ネット上で公開したら全く同じ価値、読者からすると同じように見えるわけじゃないですか?

西浦:はいはい。

森上:だから別にそこには差がないわけですよね。変な話、個人のブログも紙の本の記事も文字のコンテンツである限り、価値は全く同じ。それが無料か、有料かの差っていうところで、じゃあ、「何でお金をもらうのか、価値があるのか」っていうところの勝負になってきているとは思うんですよね。

西浦:そうですよね。だから、書籍の人たちはこうしたらいいんじゃないかなといういろんなアイデアがあるんですけど、つくったコンテンツを、今までは「紙の本で出す」っていうのがメインだったじゃないですか。それをオンライン上でしっかり売るとか、届けるっていう段階のものもあっていいと思うんですよ。どういうことかっていうと、テストマーケティングができる場所が出版、書籍関係ってすごく少なくて。コミックが、オンラインメディアで、オンラインで読める場所をつくって、無料で読める期間をつくったりしている中で、書籍はそこがちょっと弱いと思っていて。いかにテストをして、これは反応いいから伸ばそうとか、これはよくなかったっていうチャレンジの場所が少ないじゃないですか。

森上:うん、うん。

西浦:それは出版社の冠があったほうが絶対に強いと思うので、フォレストだったら、フォレストオンラインみたいな1個、オンラインのメディア上で著者さんたちをテストマーケティングしていく。で、同時に編集者もテストマーケティングしていくっていう場所にしていって、人間をもっと届けたほうがいいなと思っているんですよ。

森上:なるほど。なるほど。

西浦:だから、例えば森上さん自身にファンをめちゃめちゃつけていくってなると、森上さんのコンテンツをやっぱり売っていく必要があるし、森上さん自身にファンがつくと、森上さんがつくる本を読む人が増えてくるんじゃないですか。これって、フォレスト出版で出す意味がすごく上がっていくじゃないですか。逆にフォレスト出版のこのメディアに、ちょっとオンライン上で書かせてもらえる、掲載させてもらえるようになりましたっていうのが一つのブランドになってくるので、これから本を出す方たちはそこに書く理由がどんどん出てきますよね。例えば、連載の1~3回目は無料で読めるんだけど、4回目以降は課金しなきゃいけないとか。サブスクを導入して、「このフォレストオンラインの記事を全部、月々〇〇円で読めます」みたいなモデルにして、そこで稼ぐとか。コンテンツをどう届けていくか、届ける中でもマーケティングしていって、編集者と著者をテストマーケティングしていく場所をつくるっていうのが書籍系出版社でやれる、いいやり方なんじゃないかなと思うんですよ。

森上:それはめっちゃ面白いアイデアだと思いますね。ちょっと懸念されることが1つあるのが、最初から自分たちでプラットフォーマーとしてやっていくって相当レベルが高いなと思っていて。

西浦:確かに。

森上:例えば既存のnoteというプラットフォームを使って、もちろんnoteに対しての手数料っていうのは当然取られるにせよ、まだリスクはなしでできるかなとか。

西浦:確かに

森上:例えば「月刊文藝春秋」をnoteで売っているっていうのは、その典型なのかなと思うんですけど、そういった電子化に向けた一つのマネタイズ、テキストコンテンツの模索って絶対に必要ですよね。

西浦:そう思いますね。

森上:一番いいのは、西浦さんがおっしゃったとおり、自分たちでプラットフォームをつくってっていうところもあるんですけど、ただうちであまりうまくいかなかった事業があって、読み放題サービスっていうのをやったんですよ。うちの本を定額で読み放題にした経緯があったんですけど、読者は会社名で本を買わないと言うか、うちのブランドができていなかったっていうのもすごく大きいと思うんですけど。

西浦:わかります。

森上:だから、うちのも読みたいけど、サンマークさんの本も読みたいしみたいな、いろんな他社さんがいる中での読み放題だと、またちょっと違うのかなとかね。

西浦:その辺の問題って、まずはやっぱりプラットフォームをいきなりつくるのはリスクが高いと思うので、note上にやるとか、「BUZZ MAFF(ばずまふ)」って言って、農林水産省がやっているYouTubeチャンネルで、10万人以上の登録者がいて、みたいなのがあるので、そうやってYouTube上にやったっていいし。

 有隣堂さんのYouTubeチャンネルも10万人以上もフォロワーがいるから、ああいうふうに人を出していく、あるいはキャラクターを出していくっていう形で、人で惹きつけるっていうのが重要だと思っていて。

まさにフォレスト出版の本だから読むっていう人は少ないと思うんだけど、さっき言ったみたいに、フォレスト出版でいつも書いているAさんとか、フォレスト出版で本を作っているBさんのコンテンツだから読みたいっていう、人で結びつけるんだと思って。

森上:なるほどね。

西浦:そうするとある種、作家の抱え込み競争になると思うんですよ。Aさんっていう人気のある人のコンテンツを読めるのはフォレスト出版だけ。それがうまくいっていったら、フォレストさんと、どこかとどこかの3社で一緒にやってもいいと思うし。テーマごとに分けてもいいと思うんですよ。コンテンツの中でも、健康系だけのプラットフォームを3社でつくりましょう、みたいな形でもいいし。その辺はなるべくお金をかけないで、トライ&エラーをしたほうがいいと思うんですけど。

森上:ほんとそうですよね。これから100年後に今を見たときに「ちょうどここが端境期だったよね」って検証できるぐらいの激変の時代だと思うんですよ、今。そういう意味で漫画はもがいていただろうし、雑誌ももがいていた中で、ある程度着地し始めているっていうことですもんね?

西浦:そうなんですよ。まさにこの15年ぐらい積み重ねてきたことがあって、コミックは努力した人たちがユーザーとのコミュニケーションをつくっていったわけじゃないですか? 「スマホで読もうぜ」っていうのを当たり前にしていって。もちろん時代の流れとか、そういうIT機器の発展はあったにせよ。

森上:そうですね。1回、漫画村の問題があったけど、あれがクリアされたら一気にうまくいきましたよね。

西浦:そうですね。あれを潰すだけの利益が出ることは見えていたからってこともあると思うんですよね。

紙のコンテンツの価値を上げる

森上:そういう意味でも本当に紙である理由ってなくなってきたなっていうことは思っているんですよね。

西浦:紙である理由に関して、1点あるのが、継続消費時間が長いんですよ。隙間時間の取り合いの競争をしたら書籍って絶対負けるんですが、でも「これを1冊読もう」と思ったときに1カ月とか、場合によっては2カ月とか、時間をかけて読んでくれるじゃないですか。で、サブスクモデルが今そっちに移行してきていて、サブスクをやっているNetflixとか、Amazonプライムとかって差別化をしなきゃいけないので、自社オリジナルコンテンツをつくるじゃないですか、Netflixオリジナルの。ああいうのって、映画とかだと、それだけ見るために契約して、それを見終わったら解約されちゃうんですって。

森上:はいはい。

西浦:やっぱり継続する期間が短いと。で、ゲームって何カ月もやってくれるから、今は各社ゲームをつくろうとしているんですよ。ゲームスタジオを買収したり。この話の何が重要かというと、映画とかゲームって制作年数とか時間とか金額がバカ高いじゃないですか。だから、長く使ってもらえるゲームにしようねってなっているんですけど、出版物って彼らと比べると、めちゃくちゃ安く早くできるんですよ。

森上:まあ、そうですよね。0がいくつか違いますよね。

西浦:そうそう。テストマーケティングもある種、軽いし、コンテンツ業界全体で見ると、やっぱり原作扱いなんですよね。一番厳選のいいものを生み出すために、テストを何回もする業界として認識されているから、それをやっていく場所にしていくのがいいんじゃないかなと。だから、書籍はサブスクモデルには相性がいいはずなんですよ。だって、読みたいなと思っている作家が何人かいて、そこで読めるんだったら、毎月1冊買うよりも毎月500円で入って読めるほうがお得じゃないですか? それで読み切れないから解約できないんですよ。映画だと見切っちゃうっていう問題がある。

森上:なるほどね。あと、これは出版社、編集者の価値、存在意義にもかかわってくる話なんですけど、できちゃう著者は自分でやるっていうことを始めているじゃないですか。

西浦:編集者兼、著者っていう。

森上:そうそう。文芸の世界でも、ちょこちょこ見受けられる。京極夏彦さんとかもそうじゃないですか。自分でやっていたりとか、文芸の世界に限らずだと思うんですけど。そのあたりは編集者と一緒に本づくりをする価値が問われているとは感じますよね。

西浦:それはありますね。編集者という人たちのおもしろさをいかにコンテンツにするか、僕のチャンネルとしても課題なんですよね。僕のYouTubeチャンネルで本を出せるかどうかやっているんですけど。
編集者の知り合いの方はめっちゃいるのに、どうお願いするのがお互いにとってプラスになるのかっていうアイデアの形がなかなか見えなくて、声をかけられていないんですよ。例えば森上さんに声をかけたら、「いいよー」って出てくれると思うんですけど、どういうふうに出てもらえばお互いに一番得なのかが見えなくて、そこはちょっと暗中模索なんですよね。

森上:なるほど。じゃあ、その暗中模索の回を1回やりましょうよ。何をするかっていう。

西浦:いいですね!! それはやりたいですね(笑)。

森上:岸田さんとかも呼んで。

西浦:皆さんに「出てもらいたいんですけど、一緒にアイデアを考えてほしい」って言って。

森上:それはそれでありですね。だから、うちの場合だと、いわゆる文字のコンテンツに限らず、パーソナリティの土屋さんが所属しているデジタルメディア局では、「文字のコンテンツを映像コンテンツにしよう」とか、「同じ著者で音声コンテンツにしよう」とか、それに対するマネタイズっていうのは、うちの生き残り戦略というか、それは20年くらいやっているモデルではあるんですけど、ただ「文字だけで何とかしていこう」ってなったときには、今日の話はすごく課題だし、勉強になるなと思いましたね。

西浦:御社って結構前から書籍だけではない形で稼ごうみたいな会社じゃないですか。そういうところはとっくに離脱している出版社っていう印象があって。結構前に「もう、うちは紙の本よりも紙の本じゃない売り上げのほうがデカいよ」って教えてもらったんですけど、今はどんな感じなんですか? 言える範囲で。

森上:今もやっぱりそうですよ。デジタルメディア系の売上のほうが6割ぐらいなのか? 6:4くらいになっているんじゃないかなとは思いますけどね。

西浦:じゃあ、このVoicyとかも、そっち系を伸ばすためのっていう感じなんですか? メルマガのような。

森上:これ(Voicy)を直接マネタイズしようとは考えていなくて、うちの会社のブランディングの一環としてとか、そういったとこでnoteとVoicyっていうのは、今の時点では広報的な形で。でも、それに対して労力に見合っているのかっていうと結構もう……。土日を除いた毎日放送していますし。

西浦:それは大変だ。

森上:バタバタと……(苦笑)、ゲストに来ていただいてやったりしているので。それなりに労力はかかっている中で、どういうふうにしていけばいいのかっていうのは今、模索しているところではあるんですけど。
例えば、この音声を書き起こしてnoteの記事として上げたり、YouTubeに上げたり、2次利用、3次利用とか、すぐにできることはやっているんですけど、それ以外のところで実際にビジネスモデルとして、もう少しこれをマネタイズしていく形っていうのはどうしていけばいいのかっていうのは、いよいよ1年半くらいVoicyもやっているので、考えないといけないときかなとは思っているんですよ。分岐点というか。実際、Voicyさんのほうで「広告を付けていいよ」とかっていう話があったり。個人のチャンネルの場合だと結構広告を付けたりとかしているんですけど、企業で広告を付けるって、なかなか難しいというか。

西浦:そうなんですね。

森上:やっぱり出版とかになってくると、偏りがあるっていうのはあんまりよくないことと言うか、公の器っていうところもあるので、変な話、「お金を出してくれれば、反社の広告をしても」っていうわけにもいかない(笑)。

西浦:もちろんそうですね。

森上:極端な話ね。そのあたりっていうのはどうしていこうかとか。で、プレミアム放送という仕組みがVoicyさんにあって。

西浦:ありますよね。

森上:それをプレミアム放送の何にしていくのかというところの部分で考えていくっていう、まだ余地はいっぱいあるんですけどね。

西浦:まさに盛り上がった話は「後半はプレミアム」とかやっていますよね。「ここから先はプレミアムで。」みたいな。

森上:そうそう(笑)。

西浦:ああいうパターンですよね。

森上:その辺もね、キンコンの西野さんとかはうまくやっていますけど。たまに個人(のチャンネル)でやっていますけどね。だから、いろいろとやり方はあるのかなとは思うんですけどね。

西浦:日経BPさんとかはTik Tokチャンネルとか始めましたよね。

森上:日経BPさん、始めましたか。

西浦:そうそう。新しいサイトをつくったので、それに合わせてTik Tokもつくって、有名人とかから応援メッセージをもらってみたいなのはバンバンやっていますね。

森上:日経BPさんは今、日経BPじゃなくて……、ブランドは残っているけど。

西浦:そうですね。会社としては、違う名前か。シェアしている人がまだそういう肩書きだから、言っちゃったっていう。おもしろいことをやってくいいタイミングなんだろうなって気はするので。

森上:そうですよね。やれることはいっぱいありますからね。noteとかでも安い金額でできたりとかしていますから、利用料とかって……。このVoicyもそうですけど。

西浦:コミックとか、雑誌がうまくいったところは完全にうまくいったので、ちょっと書籍も、「すげえな! 書籍、でけえことやったな」みたいな、そろそろ出したよね、みたいなね。

森上:(笑)。

西浦:書籍も今までの書籍と違うよ、みたいな。ちょっともう君、古いよ、みたいなね(笑)。

森上:本当にそうですよね。コミックとかの紙である理由で言えば、キャラクターの豪華版の作りの本とかっていうのも限定1000部とか、そういったものも売れますもんね。ネットに移行しただけに、今後は逆に紙の価値を上げるっていうかね。

西浦:限定版はコミックでよくやっていますもんね。

森上:やっていますよね。

西浦:違うカバーデザインをやっていたりとか、何か特典がついたりとかね。それは間違いないんだよな。

森上:そうですよね。だから出版×NFTとか、そういったところも含めていろいろとやりたいなと、考えています。どういうことができるのか、考えていますけども、土屋さんはどうですか?

土屋:そうですね。聞いていた中で、一般的ではあるかもしれないですけど、YouTubeを使うっていうので、思うところがあってですね。こうやったらいいのかなって、なんとなく感じる部分もあったんですけど、ここで言うのもなんなので言いませんけども……。いわゆる紙の本が今は電子になったり、オーディオブックになったりとかしているんですけど、それを単に電子書店も含めた書店じゃなくて、あえてYouTubeとか、より一般的なところに並べていってしまうっていうのも1つあるのかなと。

西浦:本当にそう思います。

森上:なるほどね。

土屋:もう言っちゃいますけど、これを誰かが聞いていたらやるかもしれないですけど、例えば今、オーディオブックって、オーディブルさんだったり、オトバンクさんだったりいると思うんですけど、それをそのままYouTubeで広告配信しちゃえばいいんじゃないかなって。音声だけじゃなくて、画面は文字が流れている、みたいな。この間、ちょうど某A社、大きいところがあるんですけども、そこを辞めて独立して、オーディオブックを目と耳で読むアプリみたいなものを開発している人がいて、確かに両方で聞けたらいいよねとか思っていたんですけど、それって単純にYouTubeでもできちゃうなと思って。みんなに知ってもらうことによって、テストマーケティングという考えであれば、そこでバズったものとか。

西浦:そうそう。

土屋:テストマーケティングができるなとすごく思いましたね。

森上:なるほどね。ビジネスアイデアをここで話してしまった、土屋さん、大丈夫かな?

西浦:(笑)。

出版ノウハウを解説した西浦さんのYouTubeチャンネル

森上:そういう感じで、すみません! すごく長くなっちゃって……。いっぱいお話をしたいんですが、ちょっとお時間が来ちゃったので。最後に、西浦さんがYouTubeをやられているということなので、そのYouTubeの内容について教えてもらってもいいですか?

西浦:はい。YouTubeのほうでは、わかりやすく言うと本の出版ノウハウを毎週配信していまして、どうやったら本が書けるようになるのかみたいな、本の書き方から、マーケティングの話もしていたり、出版業界のニュースの解説も結構やっていまして、「こういうニュースがあるんです」「こういう見方もできますよ」とか、著者さん向け、編集者さん向けっていう、出版業界の方向けのメディアになっています。

森上:どちらかと言うと、出版で発信したいなっていう人側の視点で?

西浦:そうです、そうです。だから、著者になりたい方とか、すでに著者さんになっている方がメインで、編集者の方が見ていただいても参考になるようにできたらいいなと思って業界のニュースとかも一応解説しています。

森上:なるほど。それは週一回で何曜日とかで決めている? 決めていない?

西浦:毎週木曜日には必ず動画一本、ノウハウ系のものを上げているんですけど、あと月曜と水曜日にニュース解説があるか、ないか、みたいな。なので、だいたい週に2か3になるんですよ。月木か、月水木っていう感じですね。

森上:なるほど。ぜひこのリスナーの皆さんにもちょっと見ていただけたらなと思うので。

西浦:お願いします。

森上:URLを貼っておきますので。

西浦:ありがとうございます。

森上:チェックしていただけたらと思います。

西浦:見ていただきたいです。お願いします。

土屋:今日、これだけ盛り上がった、この続きはぜひ西浦さんのチャンネルでまたいつか討論ができたりとか。

西浦:そうですね。ぜひぜひ!

森上:やりましょう。

西浦:やりましょう、本当に。よろしくお願いします。

森上:ありがとうございます。

土屋:ということで、このチャプターに貼っておくので、ぜひチェックしてみてください。そして最後にリスナーの皆さんにひと言、西浦さんからメッセージをいただけますでしょうか?

西浦:はい。今日はお聞きいただきまして、ありがとうございました。先ほどもちょっと出てきたんですけど、紙の本の価値、本の価値ってなんだっていうので、僕は継続的な消費時間の長さだと思っていて、コンテンツとして一番言いたいこととか、伝えたいことを全部まるっと伝えられるのか、たぶん本だと思うんですよ。どうしても、YouTubeならYouTubeで、最大30分ぐらいまでだよね、みたいな時間の縛りがあるので。なので、しっかりちゃんと自分は伝えたいことがあるっていう方は一緒に本づくりができたらうれしいなと思っております。ありがとうございました。

森上・土屋:ありがとうございます。

土屋:ということで、本日は西浦さんゲストに、森上さんとお届けしてまいりました。本日はありがとうございました。

西浦:ありがとうございました。

森上:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?