【呼吸法】「ため息」は体に良いのか? 悪いのか?
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
「ため息を吐くと、幸せが逃げるよ」
なんていう言葉がありますが、実際どうなのでしょうか?
確かに、人前で「ハァー」とやってしまうと、一緒にいる人は、あまりいい気持ちにはなれないものですよね。ため息を聞かされるほうも、なんだかしんどくなってしまいます。
だから、「私の前で、ため息なんてつかないでよ」と言う代わりに、「幸せが逃げるよ」と言うようになったのかもしれません(あくまでも個人的な推測です)。
しかし、呼吸の専門家として知られる倉橋竜哉さんは、
「ため息をついても、幸せは逃げない。むしろ、ため息をガマンするほうが幸せが逃げる」
と断言します。
倉橋さんは、30年以上にわたって【呼吸】と【セルフコントロール】の関係性を研究・実践。誰でも、すぐに簡単にできる呼吸メソッド「マイブレス式呼吸法」を開発した方です。「マイブレス式呼吸法」は、国内外で4万人以上が実践しています。
大人気マンガ『鬼滅の刃』でも全集中の呼吸として登場したり、マインドフルネスや瞑想、ヨガなどでも切っても切り離せない「呼吸」。
今回は、倉橋さんの著書『呼吸で心を整える』の中から、「ため息」の有効性や効果的な「ため息」の方法をご紹介します。
ため息は、トイレと同じ
倉橋さんは、「ため息」について次のように分析しています。
ため息をつくときの姿勢を想像してみてください。
おそらく疲れて少し前かがみになっていて、顔は下向きになっていることが多いでしょう。
前かがみになっていると胸が圧迫され、顔が下向きになると喉が圧迫されます。
そう、呼吸がしづらい状態になっているのです。このままだと「息が詰まって」しまいます。
息苦しくなってしまう前に、きちんと深い呼吸をするために自然と出てくるのが、「ため息」です。「無意識でする深呼吸」とも言えます。
ここで「ため息をつくと幸せが逃げるからガマンしよう」としてしまうと、どんどん息苦しくなって、やがて息が詰まって「行き詰まり」の状態に陥ってしまいます。
ところで、ため息は漢字で書くと「溜める息」なのに、実際はハァーと「吐き出す息」になっています。
息を溜め込むのではなく、心や体に溜めていたものを、息を通じて吐き出す感覚です。
「ため息は、トイレと同じ」なのです。
人前でするのは憚られますが、ガマンすると苦しくなり、溜めていたものを出せばスッキリするものです。
ため息が出そうになったら、グッとガマンせずに、1人になれる場所で思いっきり吐き出してください。
このとき、体に溜まった疲れやストレスなども息と一緒にハァーッと吐き出すイメージをすると、さらにスッキリできます。
ため息は、生理学的にもメリットだらけ
ため息には、溜まっていたものを吐き出すだけでなく、さまざまなメリットあるようです。
おなかに手を当てて、ハァーとため息をついてみてください。
おなかが凹むのが感じられるはずです。
呼吸には「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。
ため息をつくと、自然とおなかでする「腹式呼吸」になります。
腹式呼吸をすると、肺と消化器の仕切りとなっている横隔膜が上下します。横隔膜が上下すると、みぞおちの下あたりにある太陽神経叢(たいようしんけいそう)という自律神経を刺激します。
この太陽神経叢が刺激されると「副交感神経」、リラックスのスイッチがONになります。
つまり、ため息をつくだけで、おのずとリラックスできるわけです。
ため息をつきたくなるような場面を想像してみてください。
たいてい、不安や緊張感があったり、疲労が蓄積しているときのはずです。
それらのプレッシャーから心身を解放するために、体が発しているのがため息なのです。
ため息には、他にもプラスの効果があります。
深い呼吸をするので、血流量が増加して、酸素が全身や脳に行き渡りやすくなります。それによって、疲労を軽減し、ネガティブな感情を受け流しやすくすることができます。
また、ガンや皮膚の老化を招く「活性酸素」というものがあります。活性酸素は、過度なストレスや不安定な生活のリズムによって体内に蓄積されていきます。
しかし、ため息によってさらに働くようになるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という酵素には、その活性酸素を分解する作用があります。
「ため息をつけばガンが治る」とは言いませんが、少なくともため息をガマンし続けることは、ガンや老化の遠因になることは間違いありません。
「ため息」の効果をさらに高める「ゆるめる呼吸」
ここまで言われると、積極的にため息をつきたくなってきませんか?
倉橋さんが開発した「マイブレス式呼吸法」の1つに、ため息の効果をさらに高める「積極的なため息」の方法があります。心と体を緊張感から解放させる「ゆるめる呼吸」という呼吸法です。不安や緊張を和らげる効果があります。
やり方は、次の通りです。
①呼吸をしやすいように、目線を水平ラインより少しだけ上にします。
②息を吸いながら肩を持ち上げます。
③これ以上、息が吸えなくなったら「ハァー」と一気に息を吐き出します。
④息を吐き出しながら、肩をストンと落とします。
⑤これを1〜3回繰り返します。
緊張感が高まって息が詰まっているときには息を吐くことすら難しくなります。まずはしっかり吸ってから勢い良く「ハァーッ」と吐き出すことで、息が詰まる状態を解消することができるようになります。
もしまわりの状況が許すのであれば、息を吐くときに「あ゛ー」と野太い声を出すとより効果的とのこと。お風呂に入ったとき、あるいは、ひと口目のビールを飲んだあとに自然に出てくる「あ゛ー」というあの声ですね。おっさんのような野太い、低い響きのある声であればあるほど、効果があるそうです。女性の方も恥ずかしがらずに試してみてはいかがでしょうか?
『呼吸で心を整える』には、今回ご紹介した「ゆるめる呼吸」以外にも、「マイブレス式呼吸法」として開発された「数える呼吸」(集中力が高まる)、「歩く呼吸」(イヤな気持ちをリセットする)、「声を出す呼吸」(頭の中に浮かんだ雑念を吐き出す)、「鎮める呼吸」(イライラや怒りを鎮める)など、ケース別で心を整える呼吸法を紹介していますので、気になったらチェックしてみてくださいね。