火鉢+バランスチェアの関係
夏目漱石の「永日小品」の「火鉢」では、次のような描写がある。
・「火鉢の傍に竦(すく)んだまま」
・「寒くて動けないよ」
・「窓の下には昨日の雪がそのままである」
火鉢(ヒバチ)は懐かしい暖房ですが、部屋全体を暖めるのではなく手あぶり…程度です。
茶道の炉を切った部屋に子供の頃、十能に熾した炭を持って運んで記憶があります。
現在の住まいには畳の部屋はない。
そこで、薪ストーブの熾(オキ)利用で小さな火鉢をナラ材の床に置くとほのかな温かさを感じますが、やや姿勢が不安定。
子育てで使っていたバランスチェアで火鉢に近づくと大げさですが新しい文化が生まれたように景色が好い。
火鉢の下敷は植物染料の残糸で二重織(椅子敷きに使っていた)で織っています。バランスチェアは長い間酷使されて、擦り切れた布を私が張り替えました。
左上のテーブルの足は家人の得意なデザイン(八面体足)です。
更に言うなれば、元は廃校になる小学校の階段でした。
ケヤキを階段に使っていた時代もあった…訳です。近くで伐採した材を使用したらしい。
千葉の小学校の椅子もケヤキだったようですがとても重くて…こうして昔小学生は鍛えられていた。
当地、牡丹雪(ぼたんゆき)がフワフワと落ちている昼下がり、暮れの慌ただしい時期に自由に使ってよい時間を持てる幸せが嬉しい。
誰かのために何かをするばかり… 朝早く起きて部屋を暖めて、寒いと温かい食べ物をこしらえて、洗濯機がやってくれた洗濯物を干して…
もう自分だけの事を考えてよいのですよと言われても…
母親の姿と重なって仕舞う。
『羊飼いの少年はアンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。』
中2の冬休み、単身エジプトのピラミッドを見に行った息子が海外の仕事先から「アルケミスト 夢を旅した少年」とシュトーレンを送ってきた。
ヒヨドリが雪の中でエサを探しながら窓ガラスにぶつかった音がした。
近づいて窓の外を眺めるとブナの残った枯葉に黄色い野蚕が風に煽られながら灰色の空に泳いでいる。
身も心もゆっくりと暖められていく。
好い年の瀬をお過ごしください。
追:
ついでに、籠はクズの蔓を利用して作った野蚕籠。