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スティーブ・ジョブズから学ぶプラグマティズム 〜イノベーションの源泉〜

1.プラグマティズム

今回取り扱う「プラグマティズム」とはギリシャ語で「行動」を意味する「プラグマ」を語源とし、物事の真理を、理論や信念からではなく行動の結果によって判断しよういう思想です。つまり超訳するなら「とりあえずやってみよう」という思想。

この思想は、19世期末のアメリカにおいて資本主義の成熟、自然科学とキリスト教思想の対立、南北戦争など社会的混乱を背景に、1620年以降イギリスからアメリカに移住したピューリタン(カルヴァン派のキリスト教徒たち)の経験論的思想(フランシス・ベーコンやジョン・ロックの流れを汲む)と、チャールズ・ダーウィンの提唱した進化論(適者生存=偶然生まれた、環境に適応できる突然変異種だけが子孫を残すことができた)などが合わさって生まれたと言われています。

その思想的特徴とは以下の通りです。

①異なる意見にも耳を傾け、仮説の検証によるプロセスを共同で行う。

②目の前の事象に対して、その場で考えうるうまくいく方法を選択する。

③対立しているものの中から「相互作用」を見出し、解決していく。

④失敗などはマイナスととらえず、すべて人生の糧と考える。

そしてまさにこの思想が色こく見て取れるのがスティーブ・ジョブスが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったあの伝説的スピーチなのです。

2.スティーブ・ジョブズの言葉から読みとるプラグマティズム

この中でジョブズは、

「Connecting Dots(点と点を結びつけること)」

つまり、今まさに私たちが取り組んでいることが必ず何かにつながるはずであると信じて取り組むことの大切さを説いています。

また、自身の作ったAppleから追放されたことは、

「人生で最良の出来事であった」、「初心を取り戻すことにつながった」
「妻と出会うチャンスとなった」と失敗を人生の糧としてきた姿勢を窺うことができます。

最後には

「Stay hungry.Stay foolish.(ハングリーであれ。バカであれ)」

とあくなき探究心と、チャレンジ精神の重要性を説いてスピーチを締めくくります。まさにプラグマティズムの権化。この前向きかつ現代にフィットした思想が落とし込まれたスピーチに多くの人々が勇気づけられたことでしょう。

ではこのプラグマティズムという思想はどのように発展してきたのでしょうか?ここでは有名な3人の思想家を紹介します。

3.パース(1839〜1914) 

主著:『概念を明晰にする方法』

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パースはアメリカ合衆国の哲学者、科学者でプラグマティズムの生みの親と言われています。

彼は主著『概念を明晰にする方法』で以下のように語っている。

「ある対象の概念を明晰にとらえようとするならば、その対象がどんな効果…を及ぼすと考えられるかということをよく考察してみよ。そうすればこの効果についての概念は、その対象についての概念と一致する。」

例えばダイヤモンドは「硬い」という「概念」を持つ。そしてそのダイヤモンドは「叩く」という「行動」を通して初めて、「叩かれても傷がつかない」という「効果」が導き出されるのです。やってみるまで何が起きるかわからないから、とりあえず挑戦してみることの重要性を突きつけられているように感じます。

次に、

4.ジェームス(1842〜1910) 

主著:『プラグマティズム』

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彼はプラグマティズムの代表的人物であると同時に、心理学者としても有名であった。

彼は主著『プラグマティズム』のなかで、

「真理の概念とは我々が同化し、効力あらしめ、確認し、そして、検証できる観念である。真の思想を所有するということは、いついかなる場合でも、行為のための貴重な道具を所有していることだという事実である。」

と語っている。つまり自分の日常生活の欲求を充足させ、有効に人生を送ることができる有用性のあるものこそが真理であるというのです。仕事もプライベートも家族も、宗教も哲学もそこにあなたなりの有用性を感じているのであればそれが一つの真理である、普遍的真理を求める哲学とは大きく異なる答えを導いたのです。

最後は、

5.デューイ(1859〜1952) 

主著『民主主義と教育』『哲学の改造』

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デューイはパース、ジェームスの思想を統合し、知性の「道具的」側面を強調します。彼は主著『哲学の改造』で以下のように語っています。

「概念、理論、思想体系は道具である。すべての道具の場合と同じように、その価値は、それ自身のうちにあるのではなく、その使用の結果に表れる作業能力のうちにある。」

彼は思想や知識は人間が行動するときに役立つ道具であり、役に立たないものは本当の思想や知識ではないとする「道具主義」を提唱し、かつ人間が持つ、生活の中で困難に直面したときに試行錯誤し問題解決する力である創造的知性(問題解決能力)の重要性を説き、現代の学校教育にも大きな影響を与えています。

ここまで見てきた通り、プラグマティズムとは現代に息づく思想なのです。日本ではイノベーションが起こらなくなっていると言われて久しいですが、日本からスティーブ・ジョブズを生むためにもプラグマティズムから学ぶべきことは多いと思います。

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