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なぜ、中国人は唐辛子たっぷりの辛い料理をよく食べるのか

こんにちは、インターン生のHです!
今回は私の大好きな中国の辛い料理について書こうと思います!私は学生時代のほとんどを中国で過ごし、大学生になってからは週4で辛いものを食べていました(笑)。今回は、私がハマってしまった辛い料理が、中国で食べられている背景について、中国の唐辛子の歴史や環境の変化などを踏まえて書いてみたいと思います。

中国の唐辛子事情

 中国は世界で4番目に面積が広い国で、北と南では気候に差があるため、食文化も全く異なります。そのなかで中国人がなぜ、そしてどれくらい辛いものが好きなのか、一連のデータを見て明らかにしていきたいと思います。

 中国の唐辛子・ピーマン類の生産量は、2019年には約1900万トンを記録しており、世界第一位です(※1)。また、香辛料となる乾燥唐辛子も世界有数の生産量を誇る、唐辛子大国と言えます。

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※1  前瞻经济学人,2021,2021年中国辣椒行业种植、生产及进出口情况分析 中国辣椒产量全球第一 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1696542594786302573&wfr=spider&for=pc

 

 2009年に「小康」雑誌と清華大学媒介調査実験室の連合で行われた、中国人飲食状況の調査によると、四川料理は51.2%の票を獲得し、人気ランキングのトップになりました(※2)。

 2017年に貴州省遵義市で開催された唐辛子博覧会では、中国で1日の間に辛い料理を食べる人口は、6億5000万人を超えていることが発表されました(※3)。

※2 欧阳海燕.2009中国人饮食大调查[J].小康,2010(01):38-41.
※3 ZAKER贵阳.2017全国有6.5亿食辣人口 遵义获“中国辣椒之都”称号, http://app.myzaker.com/news/article.php?pk=598584ed1bc8e0a232000151

 元々は輸入品である唐辛子は、3〜400年以上前から中国に存在しています。古代中国の三大辛味は山椒、生姜、茱萸(ぐみ)で、唐辛子が辛味文化と切っても切れない関係になったのは明朝の中・後期だと言われています。

 1848年に出版された「植物名実図考」には「本草綱目」に記載されてない植物が多数含まれており、初めて唐辛子について正確な図解付きの詳細な説明が記録されました。中国3000年の歴史から見ると、唐辛子に出会ってからの400年は比較的短いと言えますが、今では世界から唐辛子の国として認識されるまでになりました。

 ただ、先にも述べたように、気候や地理も違えば食文化も異なります。中国国内でも昔から唐辛子が受け入れられていた地域とそうでない地域があります。

 歴史地理学の専門家・藍勇教授は、現代中国を3つの辛味階層地域に分けています(※4)。

(1)四川、湖南、湖北、雲南、貴州、陝西省南部を主とした
    長江上・中流域の激辛地帯(重辣区)

(2)北京・山東を中心に、東は朝鮮半島から西は新疆までの
    北部ピリ辛地帯(微辣区)

(3)江蘇から広東の基本的に唐辛子を食べない
南東部沿岸の
    淡泊な味(甘味を好む)地帯

※4 新华每日电讯.2016.长征与辣椒, http://www.xinhuanet.com/mrdx/2016-10/21/c_135770610.htm

今回は、(1)の激辛地区について詳しく書いていきたいと思います。

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 唐辛子が外国のものとして中南米から中国に伝わり、貴州で大量に消費されるようになったのは乾隆帝の時代になってからです。地理的な要因で貴州の隣の省である雲南省鎮雄や湖南省辰州府(現在の懐北市北部)でも消費されるようになるのに、時間はかからなかったと言われています。

 実際、雲南・貴州高原地域で特に唐辛子が受け入れられた背景には、この地域が古代から「瘴気の地」「湿気の地」と言われているからです。これらの場所の地形は、主に山地や丘陵地。夏は高温多湿、冬は低温低湿で、春先でも雨が絶え間なく降るため、風や寒さが進入しやすい地域です。唐辛子の独特な風味は、中医学で言う風寒・風湿を追い払う効果があるので、高い人気を博しました。

 唐辛子はすぐに、この地域の料理の主要な材料となり、食生活に欠かせないものとなりました。恐らくこの地域に暮らす人々にとって、唐辛子は単に日常生活の中の調味料や野菜としてではなく、文化や芸術の中にも浸透し、独自の「辛味文化」を形成してきたのだと思います。

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どのようにして唐辛子は中国全土へと広がったのか

 ここ数年、人口が集中している都市では、必ず四川料理や湖南料理の看板を街中で目にすることができます。

 特に人口密度の高い生活圏では、四川料理や湖南料理は最も人気があると言っても過言ではありません。全国的に辛い料理がブームを通り越して当たり前になっているように感じています。

 ある食品が本当に全国的に普及するためには、その食品を広める人たちが非常に重要であり、そこには、労働力人口の移動と大きな関係があると思われます。北京、上海、広州、深センといった中国の主要都市は、地方の人々が最も集まる地域です。先ほど述べた(1)の激辛地帯からもかなりの労働力人口が主要都市に移動していると言われています。それにより辛い食文化が主要都市を中心に全国各地に広がったのです。

 社会環境の変化も要因のひとつとして考えられます。
 経済の発展で、生活リズムがどんどん速くなり、主要都市で働く人は不安やプレッシャーが蓄積されやすい傾向にあります。このような状況の中で、人々は辛い料理や夜食などを求め、それがだんだん大衆文化として定着し始めています。

 元々、夜食文化は中国南部の方が定着していました。四川では夜食に麻辣ザリガニを食べるのが定番です。それが全国に伝わり、国内のデリバリー事業との相乗効果で、北部に住む人たちも冬でも寒さを気にせず辛い夜食を食べるようになりました。私もテスト期間は深夜まで自習することがあったので、宿舎の友人と一緒に辛い夜食を注文して、ストレスを発散させていました。

 それから、火鍋も無視できない存在です。

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 中国では寒い日と言えば火鍋です。日本にも進出している「海底捞」は中国の大手火鍋チェーンで、中国の火鍋チェーンの中では典型的な存在です。お店にもよりますが、24時間営業や学生の深夜割引、インスタント火鍋など、様々な方法で新しい顧客を生みだそうとしています。

 このように、色々な要因が重なり、中国では辛い食品が身近な存在になってきました。そして、「辛い」という味にも、地域によっては酸味や香ばしさなどがプラスされたいろいろな辛さがあります。
 日本にも、本格派の中華料理店が沢山ありますよね。コロナで外食が難しい時期ではありますが、感染対策を十分に行った上で、是非近くの中華の多様な辛味を味わってみてください!

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