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お寺の国のクリスチャン (小説)

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留学先のアメリカでイエスキリストに出会い、人生を変えられてしまった真木さんは、じつは信州の旧家の跡取りだった。故郷で彼を待ちかまえている、封建的な家制度から逃亡すること二十年。つ…
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2022年5月の記事一覧

かたぶくまでの月 (短編)

かたぶくまでの月 (短編)

『来たれ、われ子羊の妻なる
花嫁を汝に見せん』

※この小説は虚構であって、実在の団体や人物とは何の関係もありません※

 ふと痛みに襲われたときに、月を見ていたのは覚えている。築百年に近い屋敷の二階の雨戸を閉めようと、八枝が窓から身をせりだしたときだった。西にみえる暮れなずんだアルプスの山々に、しろい月がかかっていた。

 そのうつくしい満月を見ながら、八枝が思い出していたのは、階下で仕事をして

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