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fusae
2022年5月1日 00:35
『来たれ、われ子羊の妻なる花嫁を汝に見せん』※この小説は虚構であって、実在の団体や人物とは何の関係もありません※ ふと痛みに襲われたときに、月を見ていたのは覚えている。築百年に近い屋敷の二階の雨戸を閉めようと、八枝が窓から身をせりだしたときだった。西にみえる暮れなずんだアルプスの山々に、しろい月がかかっていた。 そのうつくしい満月を見ながら、八枝が思い出していたのは、階下で仕事をして