天気で選ぼう! 『恋は猫』 #シロクマ文芸部
※冒頭は同じなのですが、途中からの展開を二パターン考えたため、気になる方を選んでお楽しみ下さい👏✨
『恋は猫が運んでくる』というジンクスがまことしやかに囁かれるようになったのは、中間テスト明けで、どことなく解放的な気分になっていた時のこと。
きっとみんな夏休みに入ったらすぐにある、夏祭りや花火大会の前に一緒に行く相手を作りたいと考えたのだろう。
そうはいえど、好きな人がそもそもいない自分には縁のない話だ。
と、思っていたのだけど……
▶晴れの日編
「ミャーオ」
自宅まで数百mといったところで聞こえた、微かな鳴き声。
その声の主が私の前を横切ったため、咄嗟に後退ったその時
「うわっ!」
背中越しに通りがかりの誰かとぶつかった。
「す、すみません!」
謝りながら振り返ると
「なぁんだ、白田か」
幼稚園の頃から腐れ縁の男子が顔をしかめて立っていた。
「なぁんだってなんだよ、危ねぇだろ!」
「ごめんごめん、今黒猫が横切ったから」
「じゃなくて、もし俺じゃなかったらおまえがトラブルに巻き込まれてかもしれねぇことに怒ってんだよ!」
そんな注意をされるとは思わず、目を瞬く。白田ってこんな正義感溢れたキャラだったっけ?
「まじで気をつけろよな? 通り魔だっているかもしれねぇんだから。おまえは昔っから危なっかしいんだから、本っ当に」
私が困惑していることにも気づかず、くどくどと説教する白田の顔を、まじまじと見上げる。てか、こんなに背も高かったっけ……
「家まで送るからな」
「え、いいよ、すぐそこだし」
「おまえがよくても、俺がよくねぇんだよ。どうせ俺んちより近いんだから、黙って送られとけ」
相変わらず口は悪いけれど、白田なりに私のことを心配しているようだ。そして、そんな白田に対してドクドクと高鳴る胸の鼓動に戸惑う。
『恋は猫』のジンクスなんて信じてなかったくせに、『黒猫を見たら三歩下がる』という、言い伝えは律儀に守った自分に笑いそうになる。
「なに笑ってんだよ」
「いやぁ……別に?」
意外と言い伝えは当たるものなのかもな、なんて思いながら、本心を見破られないように私は慌てて表情を引き締めた。
▶雨の日編
台風の影響で午後から休校になり、家にある中で一番丈夫で大きな傘を差して帰宅していたら、寂れた煙草屋の軒先で白い子猫を抱えて雨宿りしている少女と出会った。
なんてベタな展開だろう、と一瞬、笑いそうになったが、不安げに空を仰ぐ彼女を見たら声をかけずにはいられなかった。
制服からして同じ学校で間違いはないだろうけど、学年まではわからない。
「大丈夫っすか?」
と声をかけると
「猫が……」
と、今にも消え入りそうな声が返ってきた。猫より彼女の方が心配になるほどだ。
「俺が送ってやるよ」
「いいの?」
小っ恥ずかしくて視線を逸らしながら答えると、彼女はおずおずと俺の傘の中に入る。
出会って間もない女子と相合傘で何を話したらいいものかと悩んでいたら
「ミャーオ」
と、子猫が気を利かせたかのように鳴く。
「その猫どうしたんだ?」
「あの店の下で拾ったの」
「ふーん」
「でも私の家じゃ飼えなくて……家族が猫アレルギーだから」
あぁ、それでか。こんな天気で自分のことよりも猫のことを気にかけていたのは。
「うちで飼おうか?」
「え、いいの?!」
今までで一番大きな声で聞かれて、ちょっとビビる。少しは自分のことも気にすりゃいいのに。
「たぶんイケると思う。うちの家族、動物好きだから」
「ありがとう!」
彼女の顔が一瞬にして、パアァッと華やぐ。よほど猫の行く先に気を揉んでいたんだろう。
今の天気とは真逆な、その晴れやかな表情に胸の奥が疼く。なんだ? この気持ちは……
どうやら彼女の方が家が遠いようで、送ろうか? と気を利かせてみたが断られ、俺の傘を貸す代わりに子猫を受け取った。腕に伝わる小さなの温もりに、命が宿っていることをひしひしと感じた。
翌日、眠い目をこすりながら食卓に行くと
「あんたを呼んでる子が来てるよ」
と昨日、家族の仲間入りしたばかりのシロを抱いた姉貴がニヤニヤ笑いながら、そう告げる。
洗面所で簡単に寝癖チェックしてから玄関に向かうと、案の定、昨日貸した傘を持った少女が佇んでいた。
「朝早くにごめんね。傘返そうと思って」
「別に学校ででも良かったのに」
と言いながら、お互いのクラスどころか、学年も聞いてなかったことに気づき、彼女から傘を受け取る。
「それとこれも良かったら……」
と彼女は赤いリボンに鈴を縫い付けた、これまたベタな猫の首輪を差し出してきた。しかも、よく見ると“クロ”という手縫いの刺繍が施されていた。
「なんで白猫なのにクロ?」
「だって黒川くんちの猫だから」
彼女の目線の先には我が家の表札があった。
……なるほど。
「もう名前は……」
と言いかけて口をつぐむ。まあいいか。シロの名字は“クロ”ってことで。
「あーあのさ、もうちょい待ってもらってもいい?」
と言うと彼女は首を傾げる。
「すぐ準備すっから。一緒に学校行かね?」
そう言うと
「うん!」
今日の天気にぴったりな顔で笑った。
というわけで、冒頭の文章は思い付いたけど、その先の展開が定まらず……恋愛ゲーム風に選択できる小説にチャレンジしてみましたとさ!(そういうゲームやったことないけどね🙊)(こういう形式のネット小説が昔、流行ってた気もするけど🤔)
とりあえず締め切りに間に合ったー!