『蕎麦でも気球は浮かんでる』 #毎週ショートショートnote
「へいよ!」
の声を合図に熱い湯船に浸される俺。
カラスの行水にもほどがあるって?
失礼だな。俺だって長湯をしたい時もあるんだよ。でも、そんな俺の残り湯を求めているやつもいるんだぜ?
だから白いお前よりは愛されている自信があるね。少なくとも俺はお前みたいに容赦なく踏みつけられるような目にあったなんて一度たりともねぇからな。
ん?逆に俺のことを毛嫌いして全く近寄ろうとしないやつもいるってか?
まあそれはどうしようもねえことだろ?この世界で万人受けしようなんて無理な話だよ。
誰にだって好き嫌いはあるんだからよ。
おっとと、お前とくっちゃべってたら、もうあったかい名湯がかけられる時間じゃねぇか。
相変わらずいい湯だな。この茶褐色に凝縮された芳醇な香り。毎日同じ香りが出せるってすげぇよな。
「はい!かけ蕎麦一丁!」
大将が俺が入った丼を客の前に置く。
七味唐辛子のピリッと感が肌に染みるね。
そして蕎麦でも気球は浮かんでる。
天かすという名のね。
食べ物の擬人化をする時はいつも「何事もなく語っているけれど自分の誕生前の記憶があるのはなぜなのか」という矛盾を感じながら書いています。だから、そこは熱いうちにズルズルっとお飲み込み下さい🙏🍜<粉のうちから先輩の姿を見ているということで!)
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