『モンブラン失言』 #毎週ショートショートnote【禁句編】
俺は絶対に言ってはならない言葉があるせいでピンチに立たされていた。
ここはデパ地下。ショーウインドー越しにも光輝いて見える目にも鮮やかなケーキが並んでいる。
結婚して早三周年。せっかくなら妻の大好物を送りたい…
「お決まりでしたら、ご注文承りますよ」
もじもじする俺に気づいた店員が笑顔を向ける。注文は決まっている…というかSNSを見てこの店のケーキを頼もうと決めていた。
しかし、その言葉が使えないのだ。でも負けるな、俺。指差しで乗り切ればいい。
「これとこれを」
「栗のモンブランと紅芋モンブランのお二つですね。では、お間違えのないように復唱をお願いします」
ふ、復唱?
「栗のモンブブランと紅芋のモンブラランを…」
「…箱詰め致しますね」
店員が笑いを堪えているのはすぐにわかった。
でも許してくれ。入院していたじーちゃんが今年の誕生日にモンブランを口に押し込まれた数日後に亡くなって以来、縁起が悪いからとモンブラン失言扱いになったんだ…
ほんのり実話です。一昨年、母方の祖父が亡くなった日に手帳に書いた日記のタイトルが『弔いのモンブラン』だったので(内容は忘れちゃったけど😂)このお題を知ってこのネタを使いたくなってしまいました🌰🍠
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