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駄洒落小説 『腋の薔薇時計』 #毎週ショートショートnote

「広いね!」

引っ越したばかりの家に彼女を招いたら開口一番そう告げた。

「まあね」
「相当張り込んだんだね」

と彼女は室内を物珍しげに眺めていく。
一枚板のテーブル、革張りのソファ、全自動トイレ、バブルシャワー完備の浴室。

彼女が最新型のシステムキッチンに興味を示したのに気づいた俺は腕を組むふりをして、腋の薔薇時計ボタンをそっと押す。


何とも言えない芳香を漂わせ
ぎゅうぐるる~!
と咆哮のように腹が鳴る。

「何か作ろうか?」

それを見越して野菜も魚も牛バラ肉も買い込んだ。俺が一番好きな煮込みハンバーグを作ってくれるようだ。

「ローズマリーってある?」
「あぁ…待ってて」


慌ててベランダに出ると服を捲り腋に茂ったローズマリーを収穫して部屋に戻る。

「家庭菜園もしてるの?」
「…ん、まあね」

自家栽培に近いけど…

本当は深紅の薔薇を咲かせプロポーズとして渡したかったんだが…

家や家具類に金を費やしすぎてローズマリーにランクを下げたなんて言えやしない。


 こういう裏お題は腕が鳴りますな💪✨
お馴染みになりつつある(?)ちょい駄洒落小説です。調べたところローズマリーは薔薇ではなく、日本語に訳すと「海の露(雫)」和名は「迷迭香マンネンロウ」とのこと。さて、この二人の行く末はどうなることやら……

 10文字ホラーで作った秋の空時計
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