熊踊り Jocul urșilor🇷🇴
行きたい場所があると、調べに調べまくるのはいつものことなのですがコロナで出かけられない分、いつも以上に妄想や調べることに熱中しています。今回は今一番行ってみたいと思っているルーマニアのお祭りについて書きたいと思います。
◆熊踊り Jocul urșilor
ルーマニアはキリスト教前からの祭や風習が今も多く残されている国です。その中でも赤い魔除けのタッセルをつけた熊の大集団が登場する“熊踊りJocul urșilor”はそのインパクトから毎年冬になるとネットニュースやSNSで話題になります。
ルーマニアの熊踊りはコマネシュティやバカウなど各地でクリスマ・イヴから新年明けの神現祭の間に行われ、死者の一時的な帰還を祝います。他にもトリックスター的な役割のUrît(醜い人)や獅子舞のようなCapra(山羊)など様々な仮面が登場します。その中でも熊は特に強く力があると信じられ、熊が踊ることで悪霊や寒く厳しい冬追い払い、家畜の安全と五穀豊穣を祈り、無事に春を迎えられると言われています。動画では集落のリーダーである指揮官が熊を通して邪気を払う様子が見られます。
ヨーロッパの熊踊りに登場する主なキャラクター
・熊
・ロマの熊使い
・熊の花嫁(だいたい男性が女装している)
・聖ニコラウス
・指揮官
・醜い人や翁(トリックスターの役割)
ヨーロッパの他、シベリア、中南米など色々な国で熊と熊使いの装束は見られます。
しかし熊が大集団で舞踏するのは私が知る限りルーマニアだけの特徴で、他国では基本熊は1匹か2匹です。なぜルーマニアは熊大集団なのか。その謎解きは今後の課題にしたいと思います。もし他国でルーマニアのような熊大集団の熊踊りご存知の方がいらしたら、ぜひ教えて下さい!
◆ルーマニアの仮面装束の本
続いてルーマニア繋がりで、ルーマニアの葬儀の際に行われる舞踏“Chipărușul”について調べていた時にたまたま見つけた本を紹介します。
『măștile populare 』
Romulus Vulcănescu著 1971年発行。
表紙はUrît(醜い人)
子どもの熊踊り
左端の仮面はUrîtかと思ったらなんとモジャモジャ毛皮の聖ニコラウスでした。
木製の仮面。“cu chip de drac”
意味は“悪魔の顔”。チロルのクランプスや日本の鬼やナマハゲのような存在でしょうか。
Capra(山羊)。日本の獅子舞のように踊りながら顎をカチカチ鳴らします。衣装にはルーマニアの伝統的な織物や刺繍が施されていて華やかです。
この本の特筆すべき点は、ルーマニアの仮面行事分布図です。地図上の記号を見れば熊踊りや鹿、葬儀の舞踏Chipărușulがどこの場所で行われているか一目でわかります。
熊、鹿、山羊、牛、雄牛、羊、トルコ山羊、狼、ラクダ、馬、鳥、キリン、ダチョウ……仮面のラインナップを見ただけでもワクワクします。本部中にはこれらの仮面がどこの地域で見られるか件数が表になっています。
この熱量と調査力に日本常民文化研究所の『おしらさま圖録』を思い出しました。フィールドワークにかけるこの情熱と探究心は素人ながらに見習いたい、と思う素晴らしい一冊でした。