評価において大切なこと(その6)
今回は、評価の結果を本人にフィードバックすることについて書きます。
「結果をフィードバックする」と書きましたが、前回の記事で述べたとおり、評点を伝えることが目的ではなく、業務への取り組み方や能力レベルに関する本人の「気づきと成長を促す」ことが目的です。
本件については、こちら(↓)の記事で一度触れています。重複する部分が多くなりますが、さらにいくつかの点を加えて述べてみることにします。
フィードバック面談は、本人の気づきと成長を促すものであるため、本人が評価者からのフィードバックを素直に受け入れ、自らの変革や今後の業務における挑戦に前向きになるようにしなければなりません。そのためには、評価者と本人の間に信頼関係があることが前提となります。普段のコミュニケーションによって良好な関係を築いた上で、節目節目にフィードバック面談を行うことで初めて効果が得られます。
フィードバック面談を行うときには事前に日時と場所を通告しておくことが望ましいと考えます。急に呼ばれていきなり評価の結果を伝えられると、相手の心の準備ができていないので、フィードバックをスムースに受け入れられない可能性があります。できれば1日以上前、少なくとも半日前には予告をしておくとよいでしょう。
フィードバック面談にあたっては、落ち着いてじっくり話せる場の確保が重要です。騒々しい場所や周りに人がたくさんいるような環境ではやりにくいですよね。
できれば、会議室や面談ルームのような個室を用意しましょう。可能であれば、テーブルを挟んで向かい合うのではなく、テーブルの角を利用して90度の角度で座ることが望ましいです。
こうすることにより、互いの緊張が和らぐとともに、資料やメモを一緒に見ながら話すことも可能になります。
面談を始めるときには、面談の目的をしっかり説明します。「これから評価の結果を伝えます」ではなく、「今期の取り組みを振り返り、今後の業務の改善や、あなた自身の能力向上について話し合いましょう」と、育成が目的であることを伝えたほうが、相手も前向きに臨むことができます。
また、おおよその予定所用時間も伝えたほうがよいでしょう。そうすることで、お互いに話を進めるスピードを調整することができます。
フィードバックでは、いきなり結果を伝えるのではなく、まずは本人に自分自身の業務について話をさせましょう。
評価対象期間の業務遂行内容について、自分自身で「できた」「よかった」と思うこと、「こうすればもっとよかった」「残念ながらできなかった」と思うことを話してもらいます。
この時は、傾聴のスキルと心構えを活用して、相手の話をしっかりと聞いてください。
できたことについても、できなかったことについても、「どうすればさらによくできたか?」、「どうすればもっとよくできたか?」ということについて質問し、本人に話してもらいましょう。そのことが、本人の成長や今後の取り組み方のヒントになるからです。
本人の話をしっかり聞いた上で、会社としての評価と今後の期待を伝えます。まずは「できたこと」「ポジティブな評価」を伝えます。その上で、「改善すべきこと」や「さらに努力すべきこと」を伝えます。
面談が終わるときに、本人が「これからも頑張ろう」「これからは頑張ろう」という気持ちで終わるようにすることが大切です。
進め方としては以上ですが、ここに重要なポイントが2つ含まれています。
1.本人に先に話してもらってからフィードバックを行う
人は、他者からの指摘やアドバイスに対して瞬時に反論や言い訳をしたくなるものです。ですから、自分の足りない点や改善すべきことを自分の言葉で先に話してもらい、その後で「たしかにあなたの言うとおりですね。さらによくするためには…」と話すことで、指摘やアドバイスをより受け入れやすくなります。
2.「できたこと、よかったこと」が先/「できなかったこと、改善アドバイスは後」
本人に話してもらうときも、評価者からフィードバックするときも、必ずこの順番で進めましょう。「できなかったこと」から入ってしまうと、面談そのものがネガティブなムードに支配されてしまし、今後に繋がる形で終えるのが難しくなります。まずは「できたこと、よかったこと」をしっかり確認して承認した上で、「さらによくするためには」という文脈でマイナス面を確認すると、改善・成長に向けた心理的なエネルギーが高まります。
この2つは本当に重要なので、ぜひ意識して実践してみてください。
ときどき、評価のフィードバック面談がうまくできない、苦手だという管理職・リーダーに出会います。このような人の多くに共通しているのは、部下とじっくり話すのがフィードバック面談の時だけで、日常のコミュニケーションが足りていないことです。
普段からマメにフィードバックやアドバイスを行い、コミュニケーションの土壌をしっかり作っておいた上で、それを総括する意味でのフィードバックを行うようにすることをお勧めします。
フィードバック面談は、ある意味で技術です。スポーツ選手が練習をしてから試合に挑むように、フィードバック面談も練習が必要です。
弊社では、評価者向けの研修で必ず面談の演習を取り入れています。ロールプレイング形式での演習を実施することは、評価者としてのスキルを高めるとともに、フィードバックされる側の心理も経験できるので一石二鳥なのです。
評価において大切なこと、
その6は「フィードバック面談のスキルを高める」です。
いかがでしたでしょうか?
次回は「評価者の心理的エラー」について書いてみたいと思います。
株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
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