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『涙の訳を知った時』

今年の夏も実家のある奈良に里帰りしている。

去年の春に次女が誕生してから、数回里帰りしているが、長女と3人の頃より輪をかけて移動が大変になったと感じる。

今回もそうだ。

僕の仕事終わり、夕方出発で奈良を目指すという今回の移動プラン。

奈良についてからお風呂に入れなくていいように、妻は昼過ぎから娘2人をお風呂に入れてくれてスタンバイ。

僕も仕事が予想通りの時間におわり、車で家を目指す。

このまま帰宅したらタクシーを呼び、駅に着いたらあらかじめアプリで予約しておいた新幹線で京都を経由して奈良へ。

全て順調に進んでいた。

首都高の渋滞も大方の予想通りで、それにかかる時間も計算に入れていたので何も問題はない。

ところが、渋滞を抜けて数分したあたりでフロントガラスに雨粒が。

朝の天気予報で夕方から乱れるところもあるでしょうとは聞いていた。雨粒から焦点を空へと移すと黒く低い雲が立ち込めている、こりゃゲリラ豪雨くるか?でもまぁ10分から15分もすれば大丈夫、止む頃に自宅に到着してる感じだろう。そう高をくくっていた。

フロントガラスを叩く雨粒が、強くなる。

来たな。

どんどん強くなってくる。

まぁ、ゲリラ豪雨だもんな。

子供の頃に経験した、夕立ちと呼ばれていたものより確かに最近の雨の降り方はゲリラ豪雨という響きがよく似合うと思う。

どんどん強く激しくなっている。

ゲリラ豪雨の中でもちょっと強いか?

どんどんどんどんどんどん強く強く激しく荒ぶっている!

ちょっと待った!コレ強烈すぎないか!?

窓の外は雨粒でホワイトアウト寸前、ワイパーが全く追いつかない!!前を走る車両のブレーキランプにかなりの集中力が必要だ!全車、高速道路を低速で走っている!

出口を出て一般道へ。

ちょっと待った、降り始めて5分と経っていないのに冠水寸前だ!

少しスピードを上げて進むと急流すべりが如く車両のフロントが飛沫を巻き上げる!

信号待ちで家に電話しようと、スマホを見ると妻から既にLINEが来ていて『大丈夫?』とこの緊急事態を心配してくれている。

駐車場についても雨の勢いは衰えを見せるどころか、強まるばかり。

エンジンを切り車からマンション入り口まで約8メートルの距離をダッシュ!

そんな短い距離でもシャワーを浴びたように濡れた!と表現したいところだが、その数倍上と想像して欲しい、僕も子供達と一緒で奈良についてから入浴しなくてもいいんじゃないかというほど濡れた。

体はかなり濡れていたが、僕の心配は他に向いていた。

この状況でタクシーが捕まるのか!?

急いでアプリを操作してタクシーを探す。

仕事上、タクシー利用頻度が高いので3つのタクシーアプリ利用している。

一つ目、捕まらない。

二つ目、捕まらない、当然三つ目も捕まらない!

どうする?

アプリ上では優先で配車できる900円ぐらいをプラスするプレミアムなコースが表示されている。

いつもなら『使うか!』と右上の✖️をタップするが、今回はそうも言ってられない、余裕を持て手配しておいた新幹線の時間が迫ってきてしまう。

プレミアムコースの利用を決めた。

配車検索画面が表示され、スマホ上に小さな円がぐるぐると回る。

【お近くでタクシーは見つかりませんでした】

おおおお!?!?!?!?!?

ぷ、ぷ、ぷ、プレミアムちゃうんかいワリャー!!!

再挑戦!

【お近くでタクシーは見つかりませんでした】

おおおおおおお!?!?!?!?!

ぷれぷれぷれぷれぷれプレミアムちゃうんかい!!!おどれコラ!!!!!

再挑戦!!!!

なんと3度目はぐるぐる画面もなく、

【お近くでタクシーは見つかりませんでした】

おわた。

これは、おわた。

でも奈良でじぃじとばぁばは孫に会えるのを首を長くして待っている。

切り替えが、肝心だ!

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