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『人生✖️僕=』

まどろんでる中でも多少の痛みは感じていた。

『鎮静剤を使いますので大丈夫ですよ』と説明されていたのに話が違うじゃないかと、モニターに映る内視鏡カメラの映像をぼんやりと見ながらそんなことを考えていた。

早朝に起きて、空腹のまま何も食べず以前に手渡されていた下剤入りの袋に水を2リットルほど入れて溶かし、1時間半ほどかけてゆっくり飲みきる。程なくして便意をもよおし、排泄物がしだいに透明になるまでトイレと格闘する。

大量の下剤の味は薄い塩味に梅風味がプラスされたような、それでいてもちろん薬品感のある不愉快な味。

自宅でそんなちょっとした地獄を乗り越えてから、予約時間に病院へと繰り出し、ベッドの上に横たわっている。

45歳。

これまで血液検査に毛の生えたような健康診断は受けてきていたが、ここらで1回きちんと内臓の方も健康か否かを調べておくかと、思い立ったのが次女が誕生する数ヶ月前。

検査を受けることを思い立って本当に良かったと感じている。

内視鏡カメラ検査が終わり、まどろみから醒め、診察室に呼ばれて結果を聞いて血の気が引いた。

『藤原さん、ポリープがありました』

『え?』

年齢的にも、そりゃあるかもなとは覚悟していたが白衣を着た人間の口から伝えられると、想像していたよりもショッキングに鈍く心に響いた。

『結構大きくてですね、えーっと、、、』

画面に映るいくつもの大腸内部の静止画。

『あった、これです』

ぼっこりと隆起した赤い膨らみが映し出されている。

『7ミリありました』

『それって大きいんですか?』

『そうですね、結構大きめかもしれませんね』

『、、、そうですか』

『切除したので病理診査に出しますが、この感じは、、、、、』

言葉の先を悪く予想してしまう。

『ほぼほぼ良性だと思います。2週間くらいで結果出ますのでね』

『そうですか、良かった』

口ではそう言ったが、安心は出来ていなかった。

待合室にもどされ、すぐにスマホで大腸ポリープの大きさを検索する。

どうやら5ミリを超えるとリスクが上がってくるようだということは分かった。

7ミリ。

医者の口ぶりを信じれば良性なのだろうが、万が一の確率ももちろんあるだろう。


それを想像し、同時に家族の顔を思い浮かべ、生まれてくる次女に思いを馳せると心拍数が上がる。


結果がわかるまでの2週間、嫌な時間を過ごした。

病理検査の結果を聞きに行く。

ポリープは、、、。

良性。


胸の奥でずっと張り詰めていた緊張感を大きな息と一緒に吐き出す。

良かった。

本当にあの時、急に検査に行こうと思い立って良かった。

検査に行かず、何も知らず過ごしていたらと思うとゾッとする。

担当の医者からは、また3年後にやりましょうと言われ、去年の大腸に関する検査は終了した。

だけど、、、。

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