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だれも気にしないようなこと


2023年7月6日(木)朝の6:00になりました。

よくある類の苦しみに、いのち掴まれて。

どうも、高倉大希です。




だれかが段差につまずいて、転びそうになっている。

その場では注目しますが、安全が確認できれば数秒後には忘れます。


ところが、自分がつまずいた側の立場だったとしたら。

とても恥ずかしい気持ちになって、数日間は覚えています。


だれかが体調を崩して、仕事に穴があいている。

その場ではあわてますが、数秒後にはやるべきことに集中します。


ところが、自分が休んだ側の立場だったとしたら。

とても申し訳ない気持ちになって、1日中気にしています。


阿呆の膜に守護されている時だけは恥ずかしいことから解放される。阿呆の膜のなかで無呼吸の自由演技を続ける。

又吉直樹(2023)「月と散文」KADOKAWA


だれかに抱くその気持ちと、自分に抱くその気持ち。

状況はおなじであるはずなのに、そこには大きなちがいがあります。


ここのちがいがあるせいで、だれかの悩みを「大したことないよ」と軽くあしらってしまったり。

本当は大したことがないはずなのに、必要以上に大ごとと捉えてしまったり。


頭では、十分よくわかっています。

よくわかってはいるけれど、気がつきゃ考えてしまうのです。


良平は殆ど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。

芥川龍之介(2018)『トロッコ・一塊の土』KADOKAWA


このような自意識から解放することができれば、わりと多くの問題が解消されるのではないかと思っています。


ただ、自意識を完全に消すことはできません。

わたしたちが目指すべきは、自意識を小さくすることです。


それも、絶対的に小さくするのではありません。

相対的に小さくするのです。


ぼくは、先生の役割って、一つの狭い常識のなかで生きている人に、そうじゃないよと教えてくれて、でも、その答えは自分で見つけなさいよらといってくれることだと思います。だから、先生を見て、「ぼくって、わたしって、ちっちゃいなあ」と思えるような人じゃないとダメなんじゃないかなって思います。

高橋源一郎(2022)「5と3/4時間目の授業」講談社


だれも気にしないようなことを、自分も気にしないようにする。


そのためには、広い世界を知らなければなりません。

自分を相対化し、その小ささに気づかせてくれる世界です。


そうでもしなければ、この世界は自動的に小さくなります。






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