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お金が無くてもワインを楽しむ法 

1 クラス終了後、毎回のように道場に残った会員さんとテクニックドリルを続けているのだが、先日ある会員さんから次のような質問を受けた。

 「藤田さんはワインが好きだと伺いましたが、ワインの何がそんなに楽しいのですか?」と。

 今ウチの道場にいる(若い)会員さん達は、ほぼ全員酒を飲まない。

 だから、道場として飲み会をする事はないし、何人かで一緒に焼肉を食べに行くと、彼等は決まってハイボールを注文している。
 
 私は蒸留酒が苦手なのでハイボールをあまり飲めないが、安定した味を安価で楽しめるので、いいお酒だと思う。

 そもそも、お酒は嗜好品なのだから、飲む飲まないは個人の自由だし、ワインの方がハイボールより格が上というような事もあり得ない。

 何より今の若い子達は、酒を飲んでも飲まれる事がないので、酒との付き合い方が・・・昔の私と比べると・・・本当に上手だと思う。

 それはそれとして、冒頭の質問に対して私が行った回答をここに再現してみよう。

2 「ワインを(生まれて)初めて飲んだ人が、一本目から「美味しい」と感じる事はまずあり得ないでしょう。
 一本目から「美味しい」という経験が出来た人は幸せだと言うべきで、私も含めて普通の人は、たぶん「渋い」とか「酸っぱい」と言ったワインの特定の個性の印象しか残らないはずです。

 ただ、我慢してワインを10本、20本と飲み続けていると、だんだんと自分の頭の中に「ワインマップ」のようなモノが出来上がって来ます。

 10本、20本飲んだ知識や経験のストックを物差しにして、次に(=これから)飲むワインを自分の「ワインマップ」になんとなく位置付ける事が出来るようになってはじめて、「(自分の好みに合う合わない、という意味で)美味しい」とか「美味しくない」といった好悪の判断が出来るようになるのだと思います。

 だから、まだ頭の中に自分なりのワインマップが出来上がっていない状態で、一本5000円以上する高いワインを飲んでも、「味が分からない」のが当たり前で、それは恥ずかしい事でも何でもありません。

 ワインを「飲み込む」という表現はあまり好きではないのですが、飲み続けて行くにつれて「ワインマップ」は精密さを増していくので、段々とラベルを見れば・・・ビンテージ=収穫年の違いまでは私には分かりませんが・・・味の想像が付くようになります。

 実際にワインを購入して、口に含んだ時に、事前の予想が当たれば楽しいし、そうでなければ、そのワインを楽しみつつ、マップを修正すればいいだけの話です。

3 貴方がお金持ちであれば、一本5000円以上のワインを飲み込む事も出来るし、それはそれで楽しい世界があるのでしょう。
 
 ただ、私のようにお金持ちでなくても、頭の中になんとなく「ワインマップ」が出来れば、1000円台のデイリーワインでも、毎週その違いを楽しむ事が出来るようになるはずです。

 せっかくお金を出して、ワインを飲むのであれば、ただ酔っぱらって憂き世の辛さを紛らすためだけでなく、もっと楽しい飲み方をしたいと私は考えています。」

 ワインを飲み続けていれば、頭の中に「ワインマップ」のようなモノが出来上がる。
 
 そして、それが次に飲むワインの味を判定する物差しになり、新しく飲んだワインが「ワインマップ」を修正する、という再帰性がある。

 彼に回答する中で、「ワインを楽しむ」という作業も、古流柔術の型を反復稽古したり、ブラジリアン柔術のテクニックをドリルを通して習得する過程と似通った側面があるという事に気が付いた。
 
 これまでにも「お前は柔術の何が好きなのか?」と問われる機会はあったが、いつも「正直言ってよく分からない。試合に勝てるわけでもないし、お洒落なテクニックを使いこなしてカッコよく動く事も出来ないから・・・」と答えていた。

 「ワインの何がそんなに楽しいのか?」という問いに向き合う事で、私はどうやら柔術の稽古を通して、ある種の知的探求心を満足させることにやりがいを感じているらしいと言う事に気付かされた。

 なるほど、それでは私が試合に勝てないのも当然だなと苦笑しつつも、それもまた柔術の楽しみ方のひとつだろうと思うようにしている。

 ひとしきり熱弁をふるった後で、「ワインを飲む時に、つまみはどうされているのですか?」と尋ねられたので、「つまみ?ダナハーの教則に決まってるじゃないですか!」と返すと、大爆笑されてしまった。

 何故だ⁉

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 もし、本稿を読んでワインに興味を持った方がおられたら、頭の中に「ワインマップ」を作る手助けとして、次の本を勧めたい。

 また、ワインの違いを知りたいという人は、同じ生産者で、ブドウ(品種)の違うワインを飲み比べるのが良いと思う。
 私が勧めるのは、次の生産者のワインである(1000円台のレゼルバ・クラスでも充分美味しい)。

 本音を言うと、ワインは「何を買う(飲む)か?」より「何処で買う(飲む)か?」の方が重要なので、通販よりも信用できる実店舗で購入する事をお勧めしたいのだが、近場にお店がない方のための参考用として。


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藤田 正和
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