【鈍色】
額縁に飾られている豚のような気分だ。
鈍色の空から降り注ぐ雨粒が肉塊を抉りやがる。
頭を掻きむしって、お隣さんの迷惑にならないように嗚咽混じりの唸り声を地の底に思い切り響かせる。
こんなもんやってたってなんにもなりゃしないんだよ、とアセファルを羨みながら呟く。
これはもう吐血だ。
悲しみと痛みを吐き出す言葉には、鮮明すぎる血が混じってる。
四方八方から降り注ぐ痛みが脳をギュッと締め付ける。
あと一歩、あと一歩なんだ。
このまま脳を握りつぶせ、理性を殺せ。
殺してくれ。
できなければ人格を2つに分けてくれ、そうしてもう2度とこの人格を表に出さないでくれ。
精神の深海に、俺という存在を沈没させてくれ。
あぁ、刻々と針が時を進める。
お前は「待て」ができんのか。
犬のが余程に利口だぞ。
人が作り出した概念なら、あるじの言うことを聞いてくれ。
鎮痛剤を流し込む。
ふわふわと花の都に連れられる。
気持ちの輪郭がぼやけだす。
このままだ、このまま僕を眠りにつかせてくれ。
このまま眠れれば、どれほど幸せなことか。
もう、許しておくれ。
なにもするな。