#2 心が癒される本をお届けします。
みなさま、ごきげんいかがでしょうか。
宙です。
つい先日は、スーパームーンでしたね。
まーるく、くっきりと、そしてその周りをふんわりといつもに増して光を放つお月さまは、ひとたび見てしまうと、目を逸らすことができず、ずいぶんと長いことじっと見つめてしまいました。餅つきをする兎も見えた気がします。
さて、今回お届けするのは、『エミリの小さな包丁』という森沢明夫さんの作品です。
『エミリの小さな包丁』|森沢明夫
都会で恋人に騙され、仕事もお金も居場所も失った25歳の女性、エミリが、15年ぶりに再会した祖父の海辺の家へ居候し、祖父の作るあたたかい手料理や生活、町の人たちとの触れ合いに、徐々に心が解け、傷ついた心や過去と向き合っていくお話です。
都会の噂話、田舎の噂話。人からどう見えていて、どう思われているのか。こちらに負い目はないのに、周りの声が怖くて、居たたまれなくて、その場から逃げ出したくなってしまう。気にしないようにと思ってはいても、どうしても人の目が気になったり、他人と比較をしてしまうわたしには、この本から、「自分で決めて、自分で生きていくこと」の大切さとその原点に立ち返ることができたような気がします。
わたしがこの本を読んで、すきだなあと思ったところを三つご紹介していきます。
1|おいしそうなおじいちゃんの手料理たち
本を読みながら、思わずお腹が鳴ってしまうほど、美味しそうなおじいちゃんの手料理たち。ほぼ、自給自足で暮らしていて、早朝に海で魚を釣り、自宅の畑で取れる野菜や町の人たちからのお裾分けを使い、旬の魚を一番美味しい状態でいただけるように、ひと手間を加えて料理をしています。刺身専用のお醤油も、自分で作ってしまうほどのこだわり。料理について、とても細かく描写されているので、食べていないのに読んでいてどんなお料理なのか、どんな味なのか、想像が膨らみ、それがまたお腹をぐうと鳴らせるのです。
これは、カサゴのお造りを、エミリが「山葵はないのかな…。」と思いながらも箸を伸ばし、醤油をつけて食べているシーンなのですが、読みながら、「ああ、わたしも食べたい…!」となるわけです。こうして登場する、おじいちゃんのおいしそうな手料理たち。「一番美味しい状態で食べる」ことで、自然の恵みへの感謝、礼儀を表しているのかもしれません。
2|湊町の風景と風鈴の音色
都会にいると、日々が目まぐるしく、時間に追われるような生活になってしまい、「旅行に行きたい」、「自然に癒されたい」と思いながらも、なかなかそういう、まとまった時間が取れなかったり、なかには疲れて動けない…という人もいるのかもしれません。この本を読んでいくと、舞台が千葉県の龍浦という港町で、煌びやかな海や自然、時間がゆっくりと流れていく情景が丁寧に描かれており、行ったことがない場所だけれど、まるでそこにいるかのような感覚でとても心が癒されます。
そして、おじいちゃんが作った風鈴の「凜」という音がまた、風情という側面だけではなく、その時のエミリの気持ちや過去の思い出を運んできてくれる存在で、とても良い味を出してくれているのです。
3|揺るぎない価値観を持つ、おじいちゃんの言葉
幸せってなんだろう、幸せになりたい。
そう思うことがよくありますが、かと言って今幸せではないのかと言われると、そうではないんだよなあ...と思ったりしています。「幸せ」というのは漠然としていて、考えるのが難しいですが、「満足をすること」は自分が自分の心を満たすことで、なんだかわたしにも見つけたり、できそうな気がします。そして、満足をすることが結果的に幸せに繋がるのかな、とも思い、すっと心の中に入っていく感じがしました。
他にもたくさんあった素敵な言葉の数々。是非、読んで体感していただけたらと思います。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。主に私の個人的な感想でしたが、素敵なご縁となれば幸いです。
そして、さらに私情を言うと、この本を読んでいる最中、涙腺と鼻腺(そんなものはない)がずっと開放状態でございました...。なんだかもうおじいさんと孫という時点で私の中の何かがダメなのかもしれません。とてもかけがえのない時間でした。参考にはならないかもしれませんが、電車で読むのを控えることをおすすめします...。
前回は、旅がしたくなる本をご紹介しています。もしよければ、こちらもお立ち寄りください。
それでは、また!