京都現代アートギャラリー訪問記(前編)
「せっかく芸大生になったのだから、現代アートを楽しめるようになりたい。」からはじまった私の現代アートギャラリー訪問。
5-7月で訪問した12のギャラリーと、訪問してわかった楽しみ方のコツについて前編・後編に分けて書きます。
まずは、訪問したギャラリーから。
haraki contemporary
寺岡海さんの個展「You (Me)」が開催されていた。
時間はこう流れている
世界とはこういうものです
そう教えられてきた時間の流れ方、世界の在り方・・・
でもそれとは違う時間の流れ方、世界の見方があるし、もっと自由に捉えていいんだと作品から教えてもらえた。
社会システムの中の一員として機能するように、世界の捉え方をマスコミやら昭和の教育で洗脳されてきたけれど、本当はもっと自由に世界を見てみたい、時間を使ってみたい。
そう思わされるアートだった。
アート作品から自ら気づきを得ることは、「自分で考える」という、そのゆっくりとしたプロセスが入るのがいいなと思った。
gallery main
ホームページを見て、写真メインのギャラリーだと思ったけど、行った日は絵画の展示会だった。
オーナーが写真にこだわらず色んなジャンルを今はしているとおっしゃっていた。
すぐ隣にあるギャラリーThe sideとは系列店みたいな感じだと思ったら、全く別の運営だそう。
素敵な出会いがあり、作品購入。
The side
「待ち合わせ」がテーマのイベントをやっていた。
アーティストの方々と気さくにお話できて、楽しい時間が過ごせた。
京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク
後藤芳貴さんのフィルム写真展がやっていた。
ご本人から「海外を旅しながらフィルム写真を撮影するって、簡単に撮り直しがきかない」ということとか、色々お話をお伺いできた。
THE TERMINAL KYOTO
行ったタイミングが悪かった。
外国人観光客が本格的カメラで撮影会をしていて、作品の台に座ってポージングしたりして、スタッフから注意を受けていた。
この日の夜にこのギャラリーでイベントがあるらしく、先輩スタッフが忙しく余裕がない表情と言葉で、後輩スタッフの質問に答えてたところを見てしまい、なんかこっちが申し訳なくなった。
別の日に行った人は、「誰一人鑑賞者がおらず、オーナーとゆっくりたくさん話せた」「町屋にモダンキッチンがかっこよくて声出た」と言っていたので、ほんと、ギャラリー訪問はタイミングだな、って思った。
奥深い縦長の町屋だし、坪庭奥庭もあるし、2階もあるし、防空壕もあるし、建物として価値があり、アート×カフェ×ショップ併設で、タイミングさえ良ければ楽しめそう。
思文閣
重厚感のある雰囲気のギャラリーだ。
この日の展示の作家の細川護熙氏(元総理大臣で現在86歳)の世界観にとてもマッチしている。彼の作品は、茶道具、書、陶芸と幅広く、陶芸といっても色んな焼物があった。なかでも新作の「しのび壺」にはたくさんの種類があった。一般的な骨壺は人間最後の住処にしては味気ないからと「入って楽しい骨壺」を提案している。
伝統工芸っぽいけど、このコンセプトは現代アートと言えるのではないか。
ギャラリー白川
「アートとわたし、『着る』ー7人の作家によるー」が開催されていた。「アートを見る側が主役になり、アートを生活に取り入れて楽しむ」というコンセプトだそうだ。
アート作品がプリントされたTシャツを着る→本物に目が行くようになる→暮らしにアートを取り入れていくようになる
ということを狙っている展示。
オーナーさんとのお話が楽しいギャラリーだった。
話してて感じたのが、オーナーさんは、現代アートの中でも「江戸時代の日本の現代アート」を伝えることに情熱があるということ。
西洋の真似ではなく、江戸から見直したジャパニーズモダンを。
7人の作家のひとり、大野浩志氏も在廊していた。彼の「在り方、現れ方」という作品は、一年間毎日プルシャンブルーの油彩を塗り重ねることによって、時が作り出す絵の具の変化を視覚化させた作品だ。重ねていくと絵具で塗った部分が盛り上がり表情が出てくる。重ね方には自分の意図はもたず、一方向にしか塗らず、意志なしに機械のように塗る。あとは自然が創りあげてくれるのだ。
お喋り好きなオーナーと作家から直接、展示や作品への「思い」など背景をたくさん聞くことができた。
eN arts (エン アーツ)
ギャラリー名を外に表示していないので、見つけるのが難しかった。
丸山公園の端っこにあります。
この日は恒例の清水穣氏のキュレーションによる写真・映像の現代若手作家のショーケース展だった。
ギャラリー内部は和洋折衷の凝った造りになっており、茶室には澤田華氏の作品である画像を映し出したパソコンのモニターが、1Fと地下の暗室には谷平博氏の鉛筆で精緻に描きこまれた自然の中でシャーマンと化した人物の絵が飾られていた。
木漏れ日から暗闇までと振り幅が広く、アトラクションを一つ体験した感覚になった。
祇をん小西
京町屋の和の空間のギャラリー。
この日の展示は山下茜里氏の「Long for the Light-染め-」だった。作品は、日本家屋独特の光の空間ありきで創ったという綿と角材でできた「人体モチーフ」だ。テーマは「光を求める身体」。
山下さんのファンだというお客さんが次から次へとギャラリーに来ていた。
鑑賞後はオーナーがお茶とお菓子でもてなしてくれ、その場の人達と楽しくアートについて語らうことができた。
CANDYBAR Gallery
展示は、山ノ内陽介氏の個展「形而上的ビバリウム」だった。彼の代名詞とも言える「皮」シリーズの技法で制作された作品だ。平面的に描かれたものと、絵具の表層で立体的に制作されたものを隣同士に並べる技法で、奇妙な風景が現実と非現実の狭間に立つかのような錯覚をおこしてくれる。
このギャラリーは、「作家の応援ではない」とはっきりおっしゃった。良いと思う作品を見つけ出して展示するそうだ。山ノ内氏の作品の数点は、展示開始前から売れていたという。
ギャラリーの真ん中には美術館にあるような椅子ではなく、リビング用の椅子と丸テーブルが置いてあり、日常にこの絵を飾ったときの様子をイメージできた。
VOU/棒
現在37歳のオーナーが2015年にオープンしたこのギャラリーは、ギャラリー兼SHOPであり、どちらもメイン事業である。アーティストの作品だけでなく、VOU/棒ブランドのアパレル商品がたくさん販売されている。身の周りのアーティストが発表できる場を作りたいそうで、関係性を大事にしているという(店長談)。
滞在中はひっきりなしに若者達が遊びに来ており、スタッフも若かった。大阪の若者文化をリードするアメ村のような雰囲気がある空間。
でも、他の人が訪問したときの感想は、他に誰もおらず一人で、ひっそりした廃墟のもの悲しさを感じたそう。
行く時間、その時そこにいる人たちで、ギャラリーの印象とは変わるという発見があった。
MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w
この日の展示は酒井一貴氏の 「 new world 」。直接お話が聞けた。彼にとって新しく自分に見えた世界なので、「new world」と名付けたそう。大阪の午前中の光の中で街そのものを撮影している。風景の中に人を点在するように撮ると街そのものになるという。撮影時は、シャッター速度と絞りを調整するのみ。現像時は、レタッチやトリミングは一切しない。自分の意志を介入させずに撮るのがモットーだそうだ。
ギャラリーの展示方法も、凝ったライティングや奇抜な配置などもなく、彼のそのポリシーにあった、意志を介入させない展示方法だ。
ギャラリー自体の無機質な感じにとても合っていた。
現代アートを楽しむコツについて
長くなったので別記事にしました。↓こちらです。