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「映画プリキュアオールスターズF」感想。誰かと繋がることで強くなる。

※ネタバレ全開の感想記事です。ご注意ください。

公開1週間後にようやく見に行くことができた。私が感じたことをただただまとめていく。


ストーリー性に乏しい?いや、それでいいのだ。オールスター映画だから。

「今回の映画はストーリーが薄い」

そんなレビューがちらほら耳に入った状態で映画を見た。

確かに。複雑なストーリーではなかったし、無理やり感は否めなかった。

強さに固執し仲間との絆を否定する冷徹な敵がいきなり現れ、地球を破壊する。(改めて書くとめちゃくちゃな敵だな!笑)
それを阻止しようとプリキュア達が挑む。なぜ敵はそんなことをするのか?という掘り下げもあまりない。

個人的には、これはオールスター映画においては仕方ない、というかこれでいいと思う。

今回はプリキュア20周年記念の作品で、歴代プリキュア78人が結集する。
全員が1つになって戦う姿を描くことが最大の目的なのだろう。少なくとも私はストーリー性よりもそこを楽しみにしていた。

そして、上映時間は73分。小さい子どもたちでも飽きずに見れるようにするには、時間を引き延ばすわけにはいかないのだろう。限られた時間で全員を活躍させ、かつストーリーにも厚みを持たせるというのは限界がある。であれば、今回の構成は妥当だと感じた。中途半端にストーリーを膨らませて、それぞれのプリキュアの活躍が少なくなるより全然いい。

誰かと繋がることで強くなる。それがプリキュア20年の答え。

ストーリーはとてもシンプルだったが、プリキュアからの視聴者へのメッセージは確かなものがあったと思う。

それは、「誰かと繋がることで強くなる」ということ。

映画のキャッチコピーが「繋ぐ」というだけあって、これを全面に出してきていた。

歴代のプリキュアシリーズで紡いできた人と人との繋がり。これが今回の敵によって崩壊した世界を再生させるキーになる。各シリーズの名場面が走馬灯のように映し出され、一度は敗北したプリキュア達が復活するシーンは涙なしには見られなかった。現在進行形でプリキュアを楽しんでいる人も、かつてプリキュアを楽しんでいた人も、みんなが感情移入できる粋な演出だ。

20年に渡ってさまざまなプリキュアが世に出されたが、全てのプリキュアに共通するのは、繋がりの大切さを丁寧に描いてきたことだ。時にはぶつかり合い、時には励まし合い、自分とは違う考え方を持つ者から刺激を受け、それを糧にしてプリキュアは成長し、強大な敵にも打ち勝ってきた。

「一人でできないことも、誰かといっしょならできる」
プリキュア達は口をそろえてそう言う。

敵は、「一人で何もできない弱いやつが群れたところで何も変わらない」とこの考えを一蹴する。

しかし、一人で何もかもできる存在などいないのだ。一人一人ができることは少なくても、異なる個性を持つ者どうしが繋がることで、その力は無限大に増殖していく。そうして、78人のプリキュア達は1つになって攻撃し、敵を倒すことに成功する。

現実世界でも同じだろう。なんでも一人でできる人は存在しない。どれだけ才能や地位や名誉のある人だって一人の力で成功した訳ではない。きっと色んな人の力を借りたはずだ。

人は誰かと繋がることで強くなる。そして、その強さは腕っぷしの強さではなく、心の強さだ。

映画の敵キャラは腕っぷしの強さに執着していが、プリキュアは心の強さを持っていた。ベタなメッセージではあるが、これこそがプリキュアの本質だ。改めて、プリキュア20年の答えを見た気がする。


主題歌「うれしくて」にも映画のメッセージが込められている

今作のエンディングテーマはいきものがかりの「うれしくて」。

主題歌を歌うアーティストとして、いきものがかりをチョイスするなんて…大人(特に女性)のツボをついてくるなあ…

うれしくて きらきら
飛び上がれ ひらひら
はじめての夢に挑むような気持ちで
空を駆け抜けて きらきら
笑い泣き ひらひら
おそれずに誰かと手をつないでね
虹がかかる その瞬間を
かなえにいこう かなえにいこう もっと

うれしくて

こちらはサビの歌詞だ。


「おそれずに誰かと手をつないでね」

子どもたちに向けられたものでもあるし、大人たちに向けられたものでもあると思う。

「みんな」ではなく「誰か」というのが個人的に好きだ。

私が子どもの頃は「クラスみんなとお友達になりましょう」なんて言われた。
でも、みんながみんな自分と合うわけではない。それに、本当に自分と合うのは物理的に距離が近い人ではないかもしれない。今はネットを使って世界中の人と繋がることができる。
繋がりたいと思う「誰か」は人によって違う。自分にとっての「誰か」を見つければいいのだ。(それが一番難しいんだけどね…)

しかし、人と繋がることで得られるものもあれば、失うものもあるかもしれない。誰かに傷つけられることもあるかもしれない。
映画の中では言及されていないが、人と繋がることにはリスクもある。それでも、人と繋がることには意味がある。だからこそ「おそれずに」の一言が入っているのだろう。

大人も子どもも生きていれば色んなことがある。心が疲れたときには、この映画と主題歌から「おそれずに誰かと繋がる」勇気をもらいたいものだ。

この曲、歌詞もさることながら、音が壮大で感動的だ。
映画ではこの曲にあわせて78人のプリキュアが踊るのだが、その画の迫力に負けない壮大な曲となっている。ボーカルの吉岡さんの伸びやかで優しく、それでいて力強い声も相まって、聴いているだけでも目頭が熱くなってくる。


裏テーマ?「始めるのに遅いなんてことはない。」

表のテーマは、これまで書いてきた「繋ぐ」だと思う。私には裏テーマがあるように思えた。

それは、「始めるのに遅いなんてことはない」ということ。

(以下、強烈なネタバレです)




敵(シュプリーム)はプリキュアを模倣して、自分はキュアシュプリームになり、パートナー妖精としてプーカを創造する。誰かと繋がることを否定し、腕っぷしの強さにのみ固執するキュアシュプリームに対し、プーカは絆の力を信じている。最終的にプーカもプリキュアに変身し、シュプリームの暴走を止める。

シュプリームはプリキュアに倒された後、消されるのではなく普通に生きている。そして、プリキュア達はシュプリームの人間体の姿の名前である「プリム」の名前を呼び、笑いかける。プリムのことを「仲間」だと言い、行いを責めることもない。

(いや、コイツ一回地球を崩壊させたんよ?そんなあっさり許しちゃダメでしょ!笑 と思ったが、プリキュアに対してそんな野暮なことは言うまい。)

茫然とするシュプリームにプーカが寄り添い、こう言う。

「ここから始めるプカ、もう一度、二人で」

誰かと心を通わせることをまだ知らないシュプリームは、ここからプーカと二人で歩んでいくのだろう。これまでのプリキュア達のように、ぶつかり合い、支え合いながら。

「こんな自分には無理」
「もう遅い」

なんて言い訳はいらない。いつからでも、どこからでも、何かを始めることはできる。そんなメッセージを感じた。歴代プリキュア達も、自分のコンプレックスや犯してしまった罪に悩みながらも前に進んできた。

私は、これは完全に大人に向けられたメッセージと解釈している。

いまからでも遅くないよ、一歩踏み出してみてね。

私にはそう聞こえた。

表テーマでプリキュアの答えを大々的に伝え、裏テーマで私たちの背中を押してくれる。憎い構成だな~ほんと。

まとめると、この映画は全年齢向け!

総じて、この映画は子ども向けではなく、全年齢向けに思えた。

子どもたちはプリキュアいっぱいのド迫力戦闘シーンだけでも楽しめるし、昔から応援してきた大人にとっては歴代の名シーンが見れて感動必至だ。

そして、この映画のテーマ「繋ぐ」は20年の歴史の中でプリキュアを愛したすべての人に向けられたものだと思う。子どもたちも、かつて子どもたちだった大人も。すべての人に。

プリキュアは子どものころ見て以来ご無沙汰だな~という方も是非見てもらいたいです。



以上!プリキュアファンの超長い独り言でした。
最後まで読んでくださってありがとうございました。



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