幸せはあなたと「ハッピーマニア」について語り合うこと(後ハッピーマニア 2巻)
◆ネタバレがあります。
前回、あっという間に1巻を読み終わり…
ページをめくるのももどかしく2巻を読み始めると…
のっけからタカハシの母(加代子の義母・姑)の登場です。
そうそう、私はそろそろ出て来ると思っていましたよ、義母(あるいは義父か実の両親か)。
私は正編に当たる「ハッピーマニア」を読んでいなかったので
「加代子もタカハシも天涯孤独なの? その可能性もあるか…」
などと思いつつも、実は1巻の終盤はかなりもやもやしていたのです。
だって加代子は離婚を受け入れたけど、でも…
結婚って(状況にもよるけど)良くも悪くももっと家族ぐるみですよね?
2人だけでいろいろ決めちゃっていいのかな?
家族に相談とか報告ってしてるのかな?
もちろん結婚は成人した2人が合意していればいればできるわけで(保証人は必要ですが)、そして時代はどんどん個人中心になって、悪い意味での家族主義は薄らいでいるようにも見えます。
…ですが、とはいえ、現実的には相手の両親は義母、義父となり、きょうだいがいれば義理の兄やら義理の妹、時には姪や甥も一気に出来て突然親戚が倍増する、それが結婚。
当人たち以外にも関係者(見ようによってはステークホルダー)が沢山できるから、結婚も離婚も「二人が納得すればそれでいい…」では済まないことが多いはず…(いやいや二人だけで全部済むし、実際済ませてしまったよ? という例も知ってはいますが、それは例外中の例外ではないかと思うので置いておいて…)。
案の定タカハシの母はまずは加代子に詫びを入れ(この騒動は元はと言えばタカハシの浮気が原因だから)、離婚を阻止しようとするけれどそれが無理と分かるとほんの一瞬加代子の心配をし、しかし詩織と会って詩織が大好きになり、若い詩織なら孫を生んでくれるかもという野望を抱き、タカハシ(息子)は加代子に家もお金もあげると言っているけれど加代子も有責なら(浮気してるとか)慰謝料を払わなくていいから孫にお金を残してあげられる! と先走り、探偵を雇って加代子を尾行させるも生憎? 加代子は浮気しておらず…
のような
「ま、あるだろうな…(゜-゜)」
と思う行動をとりはじめます。
詩織は30代半ばくらいだから、もしかしたら孫を…と思うのは人情で、そして姑は加代子に対しても決して意地悪なわけではなく、詩織に肩入れする自分のずるさやあざとさも自覚している知的な女性なのだけれど…もうこの時点で正直に言えば義母にとって加代子はどうでもよく、眼中に無いのですね(正式に離婚していないからまだ息子の妻なのに…)。
一方で加代子は、詩織の見た目のかわいらしさはもちろん、謙虚さや優しい気配りに触れて(この女性は心根までもかわいいし、賢いのです)、
「こんな素敵な女性なら、タカハシが好きになるのも仕方ないな…」
としみじみ思います。
加代子には、これまで自分がタカハシの優しさに甘えて暮らしてきた、という自覚があるのです。
子供はいない、普通に仲良くしていたとはいえセックスレスだった。家事は適当、仕事はしていたこともあるけれど続かず、頑張って続けようという意志もなかった(タカハシもそれでいいと言ってくれていたし…)。
怠け者で、好き嫌いが激しくて、性欲には負けがちで、空気を読まずに思ったことをそのまま口にしてしまう。そして時には手も出てしまう(これはフクちゃんもね)。
加代子は自分のダメなところをきちんと理解していて、それを棚に上げたりはしません。いろいろとだらしないけれど、他人のせいにはしない。
だからこそ、浮気されただけでもショックなのに、自分で自分のダメさを直視してドツボに陥っています。他責しないから、逃げ場がないのです。
ところで、私はカウンターで日々いろいろな方とお会いするのですが、
結婚って本当に面白いな…と思うのは、
「結婚してみたら実の親より夫の親の方がずっと尊敬できて、自然体で話せて、大好きになった。今や夫より義理の両親と仲が良い」
とか
「結婚した妻には連れ子(息子)がいて、妻とはその後離婚したけどその連れ子とは絆が強くて、今も定期的に会っている(今日一緒に吞んでいるのはその彼です)」
とか
「母が再婚してしばらくはショックを受けていたけれど、新しく父になった人が人格者で、彼みたいになりたいと猛勉強して弁護士になった」
とか
「妻の兄の友達がプロのサッカー選手で、何気なく観戦に行ったらドはまり。生涯の趣味が出来た」
などなど、『結婚した当事者』たちが想定しえなかった、思いもかけない影響が多々あるのです(ここではあえてポジティブな出来事を集めました。予想だにしなかった陰鬱な関係が生まれることがある、例えば結婚前はそこまでこじれるとは誰も思わなかった嫁姑の諍い…などは皆さんいくらでもご存知と思いますので)。
結婚という石を人間関係の池に投げると、あちこちに様々な波紋が広がりるのです。
当然、離婚という石もまた…。
加代子は重い気持ちを持て余し、しんどくて寂しくて昔のセフレの田嶋に会いに行きます。
ところが慰められるどころか圏外通告され(昔はともかく今は性的に相手にできないとのご判断)、時間があるなら田嶋の妻(田嶋にとっては二人目の妻で、前妻と結婚していた時に不倫していた女性)が浮気しているようだから尾行して欲しいと頼まれます。
自分は8人も愛人がいながら、元は不倫関係だった妻の浮気が許せないとのことで…。
のけぞりながらも尾行を引き受ける加代子。
そして田嶋の妻・麻衣子のあからさまな浮気現場の写真を押さえ、しかも麻衣子の浮気相手の三島も知り合いだったので、流れで三島からも「自分に尾行がついていないか調べてほしい」と依頼され、探偵をすることになります。
理由はよく分からないけれど、あちこちから頼まれるというのは、加代子はこういうことに向いているのかも…。
とはいえそんな使いっ走りのような単発仕事でお金の心配が無くなるわけでもなく、むしろ心はより殺伐として、加代子は
もう…別に…次の恋愛に行かなくてもいいのかも。
猫を飼ったりしようかしら…。
と思ったりもします。そんなことをしたら恋愛幸福論「ハッピーマニア」ではなくなってしまう! というご意見もあるとは思いますが、現実的にはそれはそれでアリですよね。
むしろ今はこっちが多数派かもしれません。
なんだかんだ言って延々と恋愛や結婚に振り回されているここの登場人物たち全員が、旧人類のようにも見えます。
そしてそんな旧人類の代表的なタカハシが離婚届にサインして欲しいとやってきて、加代子はついに判を押します。いろいろと思うところはありながらも…。
ここでの二人の会話は、ぜひ漫画で読んで頂きたいです。
今は別居しているとはいえ、元は仲良く暮らしていた夫婦。
仲が良かったからこその、相手の手のうちが見える、お互いに次に何を言うかが想像できる夫婦漫才のようなテンポの良い会話。
話しやすいし、たとえこんな状況でもどこか落ち着くし、
だからこそ圧倒的にときめかない。
多分…この二人はもともと友達っぽいところがあったのでしょうね。よく似ているのです。
加代子もタカハシも
打算がない、ずるくない、自分の欲望に正直
姑の様子を見ていると、この「まあまあの大局観を備えた算盤をはじける母」がいたからこそタカハシのピュアは守られていたのだな…とも思いますが、とにかくこの夫婦、アウトプットの仕方は違ってても二人そろってこの素直でストレートな感じ…異質なところに惹かれ合いながらも、言語不要に分かり合えるところも沢山あった、相性は悪くない夫婦だったのでしょう。
…離婚してしまいましたが。
(ちなみに加代子にはフクちゃんというきちんと「打算の算盤」がはじける大人がついています。算盤がはじける人というのは、必要ならシレっと嘘がつける人でもあって、タカハシも加代子もこの能力は著しく欠けていますね…だから何歳になってもかわいいのですが)。
加代子とタカハシの離婚は成立したものの、タカハシの思い人・詩織は行方をくらましてしまい…
フクちゃんのツバメ・翔太と秀樹の愛人・寿子は繋がっているようで…
そしてその寿子はなんだか極めて悪い女のようで…
波紋が波紋を呼んで大波になりつつ、3巻に続きます。