記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

2024年アニメ映画評50・「がんばっていきまっしょい」

 10月ラストは愛媛が舞台のボート映画で、敷村良子の同名小説が原作。原作を読んで行こうと思っていたが、そんな時間も余裕もなかった。昔の実写映画・ドラマで人気を博すも、アニメは微妙。5点。
 小学生の村上悦子は、体格に恵まれ、足も速かったためリーダー的存在だったが、他の児童が成長するにつれ存在感を失い、6年時にリレーのアンカーでボロ負けしたため自信を喪失する。その後、進学校の三津東高校に入ったものの、自身を平凡と考えるがゆえ無気力に過ごしていた。埼玉県から高橋梨衣奈が転入し、ボート部加入を希望するが、部員は二宮隼人だけで部は休止状態だった。梨衣奈は部を復活させるため悦子と彼女の幼馴染・佐伯姫を引き込み部は活動再開。それを聞いた兵頭妙子と井本真優美も入部して女子5人となったため、舵手付きクォドルプル(漕ぎ手4人+指示役のコックス)の練習が始まる。初大会は散々だったが、練習を積み、数か月後の大会では最下位を脱出する。徐々に部員は親睦を深め、悦子は二宮へ恋心を抱く。ある時、部で夏祭りに行くが、下駄で足が擦れた悦子は皆とはぐれ、友人を探す最中に二宮と梨衣奈の歓談を見て愕然とする。その後、風邪で練習を休んだ悦子は遅れを取り戻そうと躍起になってオールを壊してしまい、その破片で姫が怪我をする。精神的にまいった悦子は練習に出なくなり、部は人数不足で半ば休部状態に。モヤモヤを抱えた悦子が市街地をぶらついていると、スポーツ用品店で港山高校の強豪ボート部のエース・寺尾梅子と遭遇、彼女が三津東を注視していることを知る。寺尾との会話でやる気を取り戻した悦子は部へ復帰。そして最後の県大会を迎えた悦子らは、港山に次ぐ2位入賞を果たして四国大会への切符を手に入れた。
 全編CGの作品で、ちょっとポリゴンピクチュアズっぽい。セルルック的な映像であり、キャラの顔はかなり可愛いし、瞳はかなり修飾が複雑。ただ、手足が運動部にしては細すぎるかな。手描きアニメだと気にならないが、CGはリアルに寄っているため、少しアンバランスに感じられた。この作品も光の美しさで魅せるアニメで海の表現は非常にきれい。
 ストーリーは頑張って欲しい感じだった。古式ゆかしいスポ根ものなので、やや地味なのは仕方ないが、ボートの試合シーンはカメラワークやエフェクトでもう少し派手にしてもよかったのでは? そこまでリアルに寄せんでも。また、最終盤の県大会において、ラストのゴールシーンをカットしたのは、正直どうなかな、と思った。試合は全体に大して盛り上がっていなかったし、カットも多かったから、ラストレースぐらいは最後まで見せてほしかった。そうすれば心動かされたんじゃないかと思うけれど。
 物語はかなり平坦で、これだけスポーツ競技アニメが溢れる中、目立つ個性がほぼ皆無だったのは手痛い。話がベーシックな以上、作画で惹きつけるという手もあったが、アニメーションに飛び抜けた感動はなかった。ただ、ボートという題材はかなり珍しく、実写作品では本作や「レガッタ」等いくつかあるが、アニメではほぼ初だろう。しかし、それだけ珍しい題材ながら解説がほぼないのは割と苦痛。率直に言って、そこまで人口に膾炙しておらず、戦略とかもよく分からないから、多少は蘊蓄があるべきだった。最低限、舵手付きクォドルプルの解説が欲しい。
 部の人間は分かりやすいキャラ付けで、兵頭と井本の間の確執が親同士の不和を反映しているところなんかは結構、面白いし、悦子が恋愛沙汰で部活に行かなくなるのは思春期っぽくていい。まあ、この3人以外は埋没気味であったが。一時間半だと、5人全員を掘るのはやはり難しい。脚本もそれを分かっており、基本的に悦子を深堀りしている。彼女の心情変化は割と細やかだったと思うが、だからこそ、最後の最後まで悦子と二宮の関係が整理されなかったのは気にかかる。姫には相談しそうだし、そこで本音をぶっちゃけさせるなどして、とりあずでもオチはつけるべきだった。そうしないと、練習へ戻る決心について説明が物足りなくなる。流石に、寺尾から諭されただけでは少し弱い。ただ、まあ悦子から二宮への恋心って深さがどれくらいかはイマイチ測りかねるので、いいなあ、と思っていた程度だったと取ればそんなに矛盾はないかもしれない。それに、強豪から褒められるってのも意外にやる気の源になるかもしれないし。
 要所要所で、アイドル・僕が見たかった青空の曲が流れるが、これ、必要か? と感じた。台詞が聞こえ辛くなったり、あまりシーンに合ってなかったりしてノイズにしか思えなかった。
 それにしても、本作のボート強豪校は体育会系の欠点を煮詰めたような、性格いとわろき奴らが多かった。あと、三津東高校はモデルの松山東高校同様、かなりの進学校なんだが、勉強は大丈夫か?


いいなと思ったら応援しよう!