男を太陽に、女を海に擬えていた。「花折」花村萬月

まじで良かった。たまたま手に取った本の舞台が京都の北白川界隈で驚き。それでいて京都(特に京大)が舞台の小説にありがちな京大生の退廃した生活を持ち上げる要素がこの本には無くて素晴らしい。あれはマジで嫌い。
内容としては官能小説並みに性描写が多いが、くどくなく、むしろ爽やかさまで感じる。沖縄と京都の描写が美しいからなのか。

「巧みに踊り、美しく苛む」

母が主人公と性について話している場面での言葉。首を絞められているのではなく、絞めさせているらしい。

「我謝さんは妙に威張った目つきで男のにおいを露わにした。それは留守にしていた室内と同じ混濁と湿気をまとっていたが、旺盛な命の気配が集中して凝固し、硬直しているせいで、汚れているにも関わらず清浄だった。」

こんなすごい勃起の表現あってたまるか。ストレートな勃起の表現なのに爽やかですがすがしい気さえする。


「男を太陽に、女を海に擬えていた。海よりはるかに大きいくせして太陽は海に吞みこまれつつある。夕日は海面を朱に染め上げることしか出来ずに海に沈みこんでいく。」

男と女を何かにたとえる表現ってたくさんあるけど、これはほんとに上手いと思った。作品を通じて男が女の手玉に取られていく場面が多かったから、ラストのこの言葉には深く納得した。夜が来ると太陽(男)が海(女)に呑み込まれていくという解釈ができる点もこの小説らしくて好き。


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