高校生から知っておきたいサステナブルファイナンス
お金がどこからきて、どこに行くのか? を想像する子どもたちの力を育むことを目指すフィナンシェの会。その中でも一番伝えたい視点が、自分の選んだお金の流れで社会をより良いものにすることができる、ということです。
このようなサステナブルな社会の実現を目指したお金の流れを少し難しい言葉で説明したのが「サステナブルファイナンス」。買い物だけでなく、融資や投資を通しても、環境問題や社会課題を解決しようとする金融の取り組みを、分かりやすく紹介した教材が先日公開されました。
それがこちらの「はじめてのサステナブルファイナンス 金融の力で地球のピンチを救おう!」です。今回ご縁がありまして、監修としてこちらの企画に関わらせていただきました。
■ 「金融」は遠い世界の話でない。使い方次第で社会の課題を解決できるツールに
この教材は、高校生をターゲットに作成され、授業の1コマで使われることが想定されています。背景としては、(1)高校生で金融のベースの知識を習うケースが多い、(2)22年度からの学習指導要領改訂による資産運用を中心としたお金に関する記述の充実化、が挙げられます。
私自身が金融に興味を持ち始めたのも、正に高校生の時。それまで理系だった私は、社会科系の科目には全く関心がなく、金融も別世界の話でした。きっかけは、金融教育を通して、関心を持っていた環境問題の解決を目指した金融の仕組みがある、と知ったことでした。
教材では、銀行に預けた自分のお金が、どのようなルートを巡ってどんな課題を解決するのか?を図解したページがあります。普段銀行に預けたお金がどう役に立つのか想像することはないでしょう。この教材だけで金融が身近に感じられるわけではありませんが、少しでもお金の流れを想像するきっかけに、そして金融ってお金儲けだけではなくて私たちの社会を良くする使い方があるんだ!という新しい視点を、高校生の方々には気付いてほしいです。
■ ワークはサステナブルファッションも知るきっかけに
教材は、テキスト、動画、ワークの3種類。それぞれを組み合わせて教員の方が授業をカスタマイズできる仕様になっています。
特にワークに関しては、確認用のテスト形式の物や、A社とB社のサステナビリティレポートを読み、どちらの企業に投資をするかを議論できるような素材もあります。
実際に、資産運用会社ではESG(環境・社会・ガバナンス)の視点からも企業を評価することが一般的。高校生もSDGsや気候変動などの環境・社会課題に対して知識があることから、これらのESGの視点を投資の時に重視するのは当たり前、という伝え方はすんなり受け入れられるのではないかと思っています。
また、今回題材になっているのはアパレル企業。最近はサステナブルファッションという言葉も浸透しつつありますが、全員が一度は買ったもしくは買うことになる衣類の陰に、どのような環境問題や人権問題が潜んでいるのかを知るきっかけにもなるはずです。
■ ESD(持続可能な開発のための教育)と金融教育は親和性が非常に高い
サステナブルファイナンスの中にあるESG投資と言葉が非常に似ていますが、今の学校教育で浸透しているのがESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)です。
今の子どもたちはSDGsの認知度が高い、社会課題への感度が高い、という話も聞かれたことがあるかと思いますが、それは学校教育の中にこの概念が組み込まれていることも背景のひとつと言えます。
ご紹介したサステナブルファイナンスの教材は、ESDにも合致した内容。たとえば公共の「持続可能な社会づくりの主体となる私たち」、家庭基礎・家庭総合の「持続可能な消費生活・環境」という学習指導要領にも対応しています。
ここからは個人的な想いですが、このESDにこそ金融の文脈が欠かせない、という視点です。様々な環境問題や社会課題の解決には、日常生活での取り組みだけでなく、ビジネスの視点も欠かせません。更に、ビジネスの視点だけではなく、ファイナンスの知識もあれば、そのビジネスを更に大きくすることも可能かもしれません。またお金の流れを日常的に意識することができれば、毎日の生活も変わるかもしれません。
金融経済教育は科目数や他の受験科目などの関係から、学校での広がりには課題が残るという意見もあります。そのため、学校のESDと絡ませて金融の役割を伝える、というアプローチで、サステナブルファイナンスの認識が学校でも広まってほしい…!と考えています。
■ 高校生向けではあるものの、社会人もぜひ手に取って
ご紹介した教材は高校生がターゲットではありますが、国際的な潮流や基本情報、用語集も用意されています。そのため、気候変動やサステナビリティに関心のある方、ESG投資に興味がある方、サステナブルファッションを知りたい方など、大学生や社会人にも活用できるかもしれません。
まだまだサステナブルファイナンス自体が新しい概念。このようなタイミングで高校生に伝える教材作りに関わらせていただいたのは、本当に有難いことだと思っていますし、より多くの方に新しい視点を与えるきっかけになると嬉しいです。
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