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「君の名は。」の感想:完璧なエンターテイメント

私は映画ファンを自認していますが、「新海誠監督の『君の名は。』は凄く良い映画ですよね」と思っていますので、2022年10月28日(金)に金ローで放送されるのを機に、そのことについて、ざっと(雑っと)書いてみたいと思います。

初めに書いておきますが、「君の名は。」を未だ観ていなくて、今度の金ローとかで、これから観ようとしている人は新海誠監督の「秒速5センチメートル」を観ておいてください。

嗚呼、私は貴方にこれを伝えることが出来て、本当に良かったと思っています…。

「秒速…」はAmazonプライムで300円で観れます。

さて、二番目に書くこととして、今回の文章は3部構成になっています。

まずは「君の名は。」を観たことが無い人向けに、とある伝説の男の話を通じて、是非「君の名は。」を楽しんでくださいね、というネタバレ無しの文章を書きます。

そして、次に「君の名は。」を観た人向けに、どうです言った通りでしょう?というネタバレ有りの文章を書きます。ネタバレパートが目に入らないように、ちゃんと開業を連打してスペース空けますのでご安心ください。

そして、最後の文章ですが、「君の名は。」を観て、「秒速5センチメートル」も観てる人向けに書きます。この文章が私の一番言いたかったことです。

さて、では「君の名は。」について、書いていきたいと思います。

「君の名は。」をこれから観ようとしている人は新海誠監督の「秒速5センチメートル」を観ておいてください。

「君の名は。」をこれから観ようとしている人は新海誠監督の「秒速5センチメートル」を観ておいてください。

The first rule of Fight Club is: you do not talk about Fight Club.

The second rule of Fight Club is: you DO NOT talk about Fight Club.

1.「君の名は。」を観ていない人向けの感想文

「君の名は。」がどんなあらすじかについては、数年前にすごく流行りましたので、言ってもネタバレにならないかと思いますが、東京に住む男子高生と、山奥の田舎に住む女子高生が、身体はそのままで、心だけが入れ替わってしまうという物語です。

さて、この文章を読まれている方にお聞きしたいのですが、高校生の男女の心と身体が入れ替わってしまったら、どうなると思いますか?

「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」とすごく興味を持ちませんか?

この「何かが起こりそう」が「君の名は。」では凄くうまく使われていると私は思っています。

ここで唐突に話を変えるのですが、以前何気なくテレビを観ていた時に、NHKでNHKアーカイブスという昔の番組を、前後に解説を交えて放送するというスペシャル番組をやっていました。

その時の特集が「あさま山荘事件」だったんですよね。

解説の後で「当時を語る」みたいな感じのゲストとして、欽ちゃんこと萩本欽一さんが出演されていて、当時のことを話されていました。そこで話されたことを私は強烈に覚えており、エンタメの本質を衝くものと思っていますので、紹介します。

欽ちゃんによると、当時、犯人グループが立てこもっている「あさま山荘」のテレビ中継を、日本全国、みんながじっと観ていたそうです(テレビの視聴率歴代No.1はしばらく「あさま山荘事件」の中継だったそうですね)。

そこで、欽ちゃんもテレビを観てみると、しかし、そこに映っているのは「あさま山荘の窓」だけなのでした。

犯人が立てこもってはいるものの、犯人の顔が見えたり、銃が飛び出てきたりしているわけでも無い、要するに、何かが起きているわけではない「窓」を、周りの人みんながかじりつくように、いつまでも、じ~っとテレビで観ている…

それを見て欽ちゃんは「俺たちは、視聴率を取る為に一生懸命、色んなことをして頑張っているのに、どうして、窓しか映っていないテレビに視聴率で負けているんだろう」と思い……そして、はっと気づいたそうです。

そうか…人がテレビを観るのは「何かが起こっている」からではなく「何かが起こりそう」だからなんだ、と。

それ以来、欽ちゃんは「何かが起こりそう」を演出するために、素人を起用したり、観客席を映したり、といった現代のバラエティ番組に通ずる手法を編み出していったそうなんですね。

この「何かが起こりそう」はテレビに限らず、色々なエンタメに映画にも当てはまると思います。

例えば、私も釣りを最近始めたのですが、釣りは魚がいない所に餌を落としても釣れないので、割と運がモノを言う趣味ということを最近知りました。

しかし、それでも毎週のように釣りに行ってしまうのは、釣り糸を海面に落とした後、「何かが釣れそう」、つまり、「何かが起こりそう」「この後どうなるんだろう」という感じが凄く楽しいからだと思っています。

映画に限らず、釣りやスポーツ観戦、ギャンブルなんかも、やはり、「何かが起こりそう」「この後どうなるんだろう」の高揚感みたいなのが、人々がそれに触れ続ける大きな動機の一つなのではないか、と思う所です。

さて、「君の名は。」の話にここで戻ります。

高校生の男女の心が入れ替わったら「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」ってすごく思いますよね。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「君の名は。」は2時間ずっと、かなり効果的な演出で「何が起こるんだろう」「何かが起こりそう」が続けられていて、「君の名は。」はすごく良いな、新海誠監督は見事な映画を作ったな、と私は本当に思っています。

実は、この「何が起こるんだろう」「何かが起こりそう」で鑑賞者を引っ張る手法は、映画としては、特別なものではなく、名作、しかも、「堅苦しくなく、観ていて本当に楽しい」と呼ばれる映画でもよく使われています。

例えば、私の親戚は「ニューシネマパラダイス(完全版)」を観た時に「いや~、長かったけど、この後、何が起こるんだろうとずっと思って目が離せなかった」と言っていました。個人的に思い浮かぶのは「ライトスタッフ」とかでしょうか。

これと同じこと、「何が起こるんだろうとずっと思って目が離せなかった」が「君の名は。」を観た時に多くの人にも起こると思います。

つまり、「君の名は。」は数々の超名作と同じ体験ができる素晴らしい映画です。是非、ご覧になって頂きたいと思います。

あと、「君の名は。」を観る前に、「秒速5センチメートル」を観ることをお勧めします。


























2.「君の名は。」を観た人向けの感想文

さて、「君の名は。」を観た人向けにこの映画が欽ちゃんのTV哲学「何かが起こっているからではなく、何かが起こりそうだから観る」を凄くうまく表現しているということについて、もう少々、詳しく書いておきたいと思います。

上の文章で、「高校生の男女の心が入れ替わったら「何が起こるんだろう」「何かが起こりそう」ってすごく思うはず」と書きました。

映画も最初は「あはは。まぁ、思春期の男の子だから、女子の身体に興味を持っちゃうよね」とか「女の子の方はトイレの時とか大変だろうなぁ」とか、まぁ、その辺のちょっとコミカルな感じのことは思い浮かぶかと思います。まぁ、胸くらいは揉むやろうな、と。

でも「君の名は。」はそれだけの映画じゃないですよね。そこら辺のお約束を、一通りこなして、そろそろ飽きてきたな、というところで、彗星の話が始まります。

実は三つ葉ちゃんの住んでいた町は3年前の彗星の落下で消滅していた、と。

初見時、女子力を活かして好きな女の人とデートとかをしてる時に、お、これはヌルい映画かな、こんなものかよ新海監督、と思い始めていた私は、「え、どういうこと?」と驚くと共に、「この後、どうなるんだろう」と凄くドキドキしてしまいました。

そして、「糸守町の真実」編もドキドキし続けつつ、そろそろ疲れてきた頃合いに瀧くんの頑張りで三葉ちゃんと再開し、ああ、良かったなあ二人が会えて……と思った後、「彗星落下」編に移る…

ここも、やはりあの図書館で死没者一覧に三葉ちゃんが載ってたことが効いていて「わわわ、どうなるんや」みたいにずっと思っていました。

あと、彗星を用いるというのは、ずっと夜空を見上げ続ける演出になりますが、新海監督はこれまでの作品で夜空の美しい描写を描き続けてきましたので、その得意技を活かすことが出来る見事な選択だな、とも思いました。

そして、彗星落下後、二人は出会えるのか…という最後の「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」が始まるわけです。

という感じで、「君の名は。」では「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」がかなり効果的に、ずっと続きます。

この塩梅が本当に見事で、映画館で初めて観た時は大学の時のクラブの同期の男と観に行ったのですが、エンドロールまですべて終わって、映画館が明るくなったとき、私は周りに人がいるのも憚らずに「あ~どうしよう、めちゃくちゃ良い映画やんけ…」と結構大きな声で独り言ちてしまいました。

そして、新海監督は遂に凄いエンタメの才能を開花させたな、と思ったのでした。

我々、アラフォーのアニメ・映画オタクにとって、新海誠監督に対する想いというのは、ある種の複雑さが有るのではないか、と思います。

高畑勲監督や宮崎駿監督など神代の時代の伝説の監督たち、それに挑むかのようにそびえる富野由悠季監督、押井守監督、そして、俺たちを導いてくれた庵野秀明監督、ジブリで苦労して、それでも見事な映画を作り上げた応援したくなる細田守監督、少々気合の入った映画・アニメファンなら、原恵一監督のことも、もちろん、応援していることでしょう。「君の名は。」公開の時点では片淵須直監督のことは恥ずかしながらほとんど知りませんでしたが、「この世界の片隅に」の公開年2016年は奇しくも「君の名は。」と同じ年。私は2016年の実写・アニメ含めてNo.1映画は「この世界の片隅に」なんです。

皆さんアニメの業界で苦労されていて、一緒にアニメを頑張りましょう、私たちはこれからも貴方達ついていきますと想いを込めて、我々、アニメファンは監督の皆さんに尊敬と応援のまなざしを向けてきました。

その中で、新海誠監督です。

新海監督は、もちろん、アニメ監督になる前に苦労された後、一歩一歩、作品ごとに努力して前へ進まれてきた、才能ある素晴らしい監督ということを、今では私は知っていますが、一番最初に新海監督に触れた「ほしのこえ」では、ご自身一人でパソコンを駆使して製作されたアニメということで、ものすごく感銘を受けたものの、DVDに一緒に入っていた女の人と猫のアニメなどを観るにつけ、こいつは我々オタクの側ではなくて、ライトなノリのチャラついた兄ちゃんか、と思っていました。異世界から来た、私たちの旧来の秩序を破壊する黒船のような存在。

映画的に言うなら、「ラスト・サムライ」におけるトム・クルーズ的な感じです。

なんというか、颯爽と現れた新参者に「アンだ、テメェは?」とすごむチンピラ的な気分でいたことを白状しなくてはなりません。そして、次のコマでは、新参者にボコボコされ学ランもボロボロの状況で倒れている訳ですが、それ置いておいて、我々はアニメ業界を揺るがす新海監督という男に関して一挙手一投足を監視せねばならないという使命を帯びた「監視者」でした。

というか、「『ほしのこえ』にいち早く気付いた俺たちが新海を育ててやったんだぜ」みたいな謎の上から目線を持っている感じではなかったかとさえ、「君の名は。」を観る前の自分を思い出します。

そんな新海監督も、見事な演出で2時間を観客に飽きさせずにハラハラドキドキの「何が起こるんだろう、何かが起きそう」という気持ちを途絶えさせずに、映画を作ることが出来る監督になったんだな、と感じてとても嬉しかったですし(何様やねん)、新海監督、私たちはこれからも貴方についていきます、と素直に思えるようになったのでした(何の話やねん)

という訳で、「君の名は。」を観た人に向けた感想文でした。

続いては、「君の名は。」を観て、かつ「秒速5センチメートル」を観た人向けの文章です。

上記までの話を「いや、それは違うやろ」と思われていた方も、次の最後の文章が、一番気持ちを込めて「君の名は。」について語るときに僕の語ることなので、「秒速5センチメートル」を観ていない方は、是非観てみてくださいね。
























3.「秒速5センチメートル」と「君の名は。」を観た人向けの感想文。そして、新海監督の監視者である、我々に向けての感想文

はい、という訳で色々と書いてきたわけですが、上には映画の面白さの本質みたいなことを書いているけど、ハッキリ言って、どうでも良い訳なんですよ。

ここまで、読んでいただいた方々なら、わかると思いますけど、「君の名は。」で一番、「何が起こるんだろう?」ってドキドキしたのはどこですか?

そうですよね。

ラストですよ。

私と同じ、新海監督の監視者の方々なら、「君の名は。」はこれまでの新海監督の映画の総集編的な意味合いが有ることは、もう、映画を観た時に分かっていることと思います。

序盤の方で、新宿御苑で第三のビールを飲んでる古文の先生が出てくるかと思えば、携帯のメールのやり取りとかは「ほしのこえ」ですし、夢がすごい重要な意味を持つ不思議世界なんか、「雲の向こう、約束の場所」な訳ですよ。

糸守町のクレーター湖も世間一般の皆さんは「君の名は。」の代名詞的に思われているかもしれませんが、我々にとっては「星を追う子ども」をここで出してきたか、いやー、新海監督、この映画にこれまでの監督人生を賭けている訳ですな、と思われていたことと思います。

鑑賞後にパンフレットを読むと、プロデューサーの川村さんだったかと思うんですが、「今回の映画は新海監督のベスト盤のようなイメージで行きましょう」みたいなのが「君の名は。」のコンセプトだったそうです。

そんな感じで、彗星も落下して、かなりドキドキしてしまった後、新海監督、この話をどう決着させるんだろうな、と思っている時に、おい、就活が上手くいってない男なんか出すなよ。

というか、おい。

おい!

EDテーマ的なやつをここで流すな!!

一般の皆さんはドキドキしつつ、なんだかんだ言って、最後は瀧くんと三葉ちゃんが出会うんだろうな、と思っていたと思います。

しかし、我々、新海監督の監視者は違っていたと思います。

瀧くんと三葉ちゃんは…

会わないかもしれない…!!

そうです。ここまで「秒速5センチメートル」を使ってないんですよ。

まさか、そんなことは無いでしょう、最後は会うでしょう、という考えは我々は持ち得ないです。

新海誠は…やる…

ここまで引っ張って、二人を会わせない可能性がある…

山崎まさよしの「One more time,One more chance」を聴きながら我々は、こいつは監視しないといけない、こいつは何とかしないといけないと思い、新海監督の監視者となることを誓いました。

上記に欽ちゃんのTV哲学の「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」を書きました。しかし、映画ではもっと大切なことが有ります。

「何が起こるんだろう?」「何かが起こりそう」と思わせたら、最後は見事に「何かを起こしてみせないといけない」のです。

「君の名は。」で、瀧くんと三葉ちゃんがが中央線と総武線に乗って四谷らへんで窓越しに見つめ合った時、私は後悔していたと言っても過言ではないです。

新海監督にちゃんと伝えておくべきだった。

釣りと違って、映画と言うのは、必ず魚が釣れないといけないということを、我々は新海監督を監視するだけで伝えていませんでした。

ここで、またお前は「秒速5センチメートル」をやるのか、新海。

頼む、思い直せ!

ここまでめっちゃいい感じで「何かが起こりそう」を進めてきたじゃないか。

起こせ!

頼む、新海監督!!

「奇跡」を起こせ!!

瀧くんと三葉ちゃんが、駅で降りても、我々監視者のドキドキは最高潮でした。

だって、「秒速」でもあんなにニアミスだったのに、最後は会えなかったんだぜ…

二人の距離が近づきます。

そして、二人は階段で出会います。

一般の方々は、ここで「ああ、ようやく会えてよかったね」とでも思ったんでしょうか。

我々は、違いますよね。

こいつらは、これでも、お互いを気づかない可能性がある…

二人は階段ですれ違います。

声もかけず…

お互いの顔も観ず…

ああ、新海、やってしまったな…

俺が…

俺たちが悪かった…

我々が監視者として、新海監督を導くことが出来なかった罪悪感に駆られたのは、しかし、ほんの一瞬でした。

瀧くんと三葉ちゃんはすれ違い…

そして、振り返ります。

「「君の名前は?」」

この瞬間、私は映画館で「全日本が優勝した」と感じました。

映画的に言うなら、「ラスト・サムライ」の最後のシーンでの渡辺謙さんの状態と言えます。

最後の突撃を新政府軍の横隊の一斉射撃によって粉砕され、トム・クルーズの腕に抱かれながら…

「Perfect... They are all... perfect...!」

その視線の先では、桜が咲き誇り、花びらは秒速5センチメートルで舞い落ちています。

「映画の面白さ」というのは、色々な形が有り、上記の欽ちゃんのTV哲学の他にももちろんたくさんのものが有ります。

「君の名は。」が大ヒットしたのは、「何かが起こりそう」以外にも素晴らしい演出・技術があったということは間違いありません。しかし、新海監督の監視者である我々として語りたいことを語る為に、今回、挙げさせていただきました。

私が「君の名は。」は見事な映画と思うのは、上記の理由です。

これだけを言いたいがために、書いてまいりました。

「君の名は。」、みんなで観ましょう。そして、観てない人が周りに居たら、「君の名は。」を観る前に「秒速5センチメートル」を観たほうが良いよと伝えてあげましょう。

では、何のことかわからないかもしれませんが、「君の名は。」を観る前の人が居たら「秒速5センチメートル」を勧めましょうという趣旨の感想文を終えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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