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よいカウンセラーとは誰なのか:わたしの回復のために誰と歩いていくのか

こんにちは,オンラインカウンセリングルームFiglabです。本日は『よいカウンセラーとはどのような存在なのか』,そして『回復の旅路を共に歩むべき相手をどう選ぶか』について考えてみたいと思います。
療法や資格で選択するのも有益なのですが,それはエビデンスと公的資格(多くは臨床心理士と公認心理師)や所属学会を確認すればいい話でもあるので,今回は「誠実で信頼できる他者」という点を私的に考察してみました。


私とは混乱が生じ,その混乱の中に取り残されている誰かである

カウンセリング(CounselingとClinical Psychologyを含む)は,その人の私的な生活や課題。障害に触れる行為です。多くの場合,カウンセリングに訪れる人は心理的・身体的な痛みを抱え、時には自他に傷ついた経験を持つ人です。不安やうつの背景には,「過度な恐怖や無力感を感じざるを得なかった状況」があり,それらは「私的領域に(何らかの外因によって)混乱が生じた経験」に他なりません。

たとえば,発達障害では診断基準の一つに「症状によって社会や職業、またはその他の重要な分野で臨床的に重大な機能障害が起こっている」という条件があります。これは,外的要因が整備され,日常生活に支障が生じない場合,同じ症状を有していても「障害」とは診断されないことを意味します。この「支障」の部分を,前述の「混乱」として考えることができます。

私は,この「混乱」を整えていく営みがカウンセリングであり,それは「バウンダリーの侵害」を修復していくプロセスと考えています。

バウンダリーとは,自分と他者(社会)の境界線を指し,まさに私的領域の境界線のこと表現する言葉です。このバウンダリーが侵害された経験を持つ人々にとって,カウンセリングは新たな安全な関係性を構築する機会となるのです。
バウンダリーについては以下の動画が余分な解釈もなくとても良い動画でしたのでご参照ください。


私にあうカウンセラーとは誠実さをもって,信頼を築こうとする安全な他者である

ここまで,カウンセリングを必要とする人とは「私的領域に混乱が生じた経験を持つ人々」であり,その混乱とは,まさにバウンダリーを侵害された経験であることを述べました。

バウンダリーを侵害された経験を持つ人々にとって,新たな他者(カウンセラー)との関係性を構築することには特別な意味があります。
それは単なる専門家との出会いではなく,あらためて「安全な関係性」を体験する機会となるからです。ここで言う「誠実さ」とは,カウンセラーが自身の専門性と限界を理解し,クライアントのバウンダリーを尊重しながら関わる姿勢を指します。それは時に「改善方法を提示し,共に模索しつつも改善を強要せずに,その人なりの混乱との向き合いやその過程を見守る」事であり,クライアントの自律性を守る態度でもあります。

この誠実さは,以下の三つの要素を含むと考えます。
まず,クライアントの体験を真摯に受け止め,理解しようとする姿勢です。これは表面的な共感や理解ではなく,その人の経験した「混乱」の重みを認識することを意味します。本質的な意味でその人の経験や気持ちをわかることはできません。ただクライアントの体験に近づき,そこに生じた感情や混乱の事実を認めることはできます。この認める行為を,セラピスト自身の価値観や目線で判断せずにただただ認めることは,誠実さのひとつの指標であると考えます。
次に,専門家としての適切な境界(バウンダリー)の設定です。これは皮肉にも聞こえるかもしれませんが,明確な専門的境界(バウンダリー)があることで,クライアントは安全に自己を開示することができます。それは過去の境界(バウンダリー)の侵害の経験とは質的に異なる,保護的な枠組みとして機能します。自他のバウンダリーを守るという営みがここでは行われます。その営みは,今までバウンダリーを侵害し,侵害される関係からの脱却の一歩めになります。
そして,この二つの要素を基盤として,徐々に信頼関係を築いていく過程です。これは一方的な関係ではなく,クライアントとカウンセラーが互いの境界を尊重しながら,協働で創り上げていく関係性です。
貴方はだれか?貴方と一緒にどんなことができるか?貴方にとって価値のある生活や未来は何か?貴方の現実の中で達成可能なものなにか?を,尋ね,提案し,その歩みを共に進める意志を示し続けることができる他者です。

「安全な他者」とは,クライアントの混乱(過去から今に続くバウンダリーの侵害体験)を理解し。それを修復する可能性を提供できる専門家を指します。
それは必ずしも即座の解決や劇的な変化をもたらすものではありませんが,新たな関係性の体験を通じて,クライアントが自身の「混乱」を整理し,より健康的なバウンダリーを再構築することを支援する存在なはずです。
人によっては「寄り添ってくれているけれど,少し物足りない」くらいの距離感が,バウンダリーを維持できる距離であることを留意してみてください。


どうか,貴方の歩みを共にしてくれるカウンセラーに出会えますように。
そしてその関係が,貴方の混乱をおさめ,小さな一歩を喜び合える関係でありますように。歩みの恐怖に打ち勝つ小さな後押しになりますように。


個人的には信田さよ子先生の姿勢に強く同意いたしますので,よければあわせてこちらもご覧ください。


どうか,今日があなたにとって少しでも優しいように。
Figlab


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