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小説作品

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石嶋ユウがnoteで書いてきた作品をまとめてあります。
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記事一覧

ショートショート『日本スランパー協会』

「おめでとうございます。あなたはスランパーです」  ネットで書いた小説が読まれない上に、…

石嶋ユウ
1年前
4

SF小説 『たけのこエレベーター』

 たけのこ。植物の一種である竹の若芽である。地域によっては食べ物として食されることもある…

石嶋ユウ
2年前
18

ショートショート『喋るギター』

 アコースティックギターを買った。アルバイトで貯めたお金を全て使って良いのを買った。これ…

石嶋ユウ
3年前
20

短編小説『線香花火の向こうに』

 車で一時間半かけて祖父母の家へとやってきた。庭は相変わらず丁寧に整えられている。家の中…

石嶋ユウ
3年前
8

君に贈る火星の

 マリーへ。  火星に到着してから十日が経ったよ。重たい宇宙服を着て、毎日ローバーで走っ…

石嶋ユウ
3年前
8

『建色家』(第二回かぐやSFコンテスト応募作品)

 バスに乗っていると、ふと、緑のビルが目に入った。僕はそれを見て思い出すことがある。僕が…

石嶋ユウ
3年前
11

ワールドエンドナポリタン

「俺、ナポリタンを食ってると、いつもイタリアを思い浮かべるんだ」  目の前で美味しそうに食べる哲郎がこう言った時、僕の中で彼との友情が崩れた。ググればすぐにわかることだが、ナポリタンはイタリア発祥ではない。つまり、ナポリタンにイタリアを求めるのは間違っている。それをどうして彼は求めるのだろうか? 彼の気持ちが理解できない。僕は冷ややかに笑う。 「いや、ちょっと待て。ナポリタンはイタリア発祥じゃないぞ。どうして、ナポリタンを食べてイタリアを思い浮かべるんだ」  僕が言い切ると

小説 『クリスマスに星々を』

 雪が積もる街を歩く僕はふと見上げた大きなクリスマスツリーを眺めて、今年も十二月二十四日…

石嶋ユウ
3年前
15

小説 『イミテーション・イルミネーション』

 白い息が空に舞い上がり、消えてゆく冬の夜空。私とミルクは人一人が入れる程の大荷物を持っ…

石嶋ユウ
3年前
22

ショートショート『Life is book』

 ペンを握って、言葉を綴る。人類はそこに深い意味を求め続けてきた。僕もそうだ。僕だって言…

石嶋ユウ
2年前
47

線香花火の向こうに

 車で一時間半かけて祖父母の家へとやってきた。庭は相変わらず丁寧に整えられている。家の中…

石嶋ユウ
3年前
7

エスカレート

 機械的な交際だった。順調な交際、だけど何かが違う。何かを交わしても、何を食べても、何を…

石嶋ユウ
3年前
2

二人の夜明け

 夜中の道を歩くこと三十分、私と彼はゆっくりと朝が来るのを待っていた。この日、どうして私…

石嶋ユウ
4年前
3

今日が終わる(掌編小説)

今日が終わる  今日が終わる。そう思うだけで僕は憂鬱だった。空の色は見事な夕焼け色で綺麗だとは思うが、感動はできなかった。街は黒に限りなく近い青色に包まれて、冷たくなって、それに抗おうと人々は温かな灯を灯しはじめる。  僕は夜の街を何も考えずに歩いている。いくべき場所などなくて、それでも、居場所を探しているかのように僕はこの延々と続く道を彷徨っている。  いつまで経っても世界は冷たくて、僕は僕に冷たくて、まるで永遠のようで、僕は夜が嫌だった。