エスカレート
機械的な交際だった。順調な交際、だけど何かが違う。何かを交わしても、何を食べても、何を貰っても、心には残らない。
ーねえ、私とどうなりたいのー
そう尋ねても、彼は答えなかった。その代わり、彼はたくさんのことを望んできて、私は望み通りにした。でも、その中には幸せなんてなかった。
彼はなぜ、私を選んだのかさえ、教えてくれなかった。ある時、彼は私の部屋に入って、何かを探していた。探し物が終わると、彼は私を怒鳴りつけた。私は反論するが彼は聞く耳を持たず、私に力をぶつけて、願望を押し付けた。私は彼が怖くなった。
私は部屋に連れ込まれ、四肢を押さえつけられる。このままでは心が死ぬ。そう思った私は全力で抵抗する。何か反撃できる物はないかを探し出す。必死の思いで見つけたトロフィーに手を伸ばしてから、私はトロフィーを思いっきり彼の頭に当てた。
彼の頭から多量の血が流れ出した。私は彼についに尋ねることにした。
ーなんで、私なの。なんで、こんなことするのー
彼の必死の答えは聞くに耐えないものだった。ただ、私が支配しやすかったからだ。
私は彼を許せなくなった。トロフィーを彼の頭上に上げる。彼の顔はとても醜いもので、命乞いもはしたなかった。私はトロフィーを振り下ろした。何度も何度も殴りつけた。
彼の亡骸はもう彼では無かった。取り返しのつかないことをしたが、悔いはない。私は大人しく電話に110のダイヤルを入れた。
(完)