01.サバイバルの基本道具の定番メソッドを確認する
サバイバルスキルの基本とも言うべき火熾し。当然ライターを持っていればそれで火を熾すに越したことはないが、より長期的なサバイバルを想定するならやはりメタルマッチを道具袋に備えておいた方が安心だ。フェロセリウムの急激な酸化(火花)を火種とするこの道具は、ガス〜オイルライターよりも機構が単純なので、水濡れや標高の変化に強く、燃料切れの心配もない。つまりあらゆる環境での火熾しに使えるというわけだ。ここでは当たり前過ぎて教則本でもあまり解説されてこなかったメタルマッチに焦点を当て、最もスタンダードな用法を解説する。
METHOD.01
メタルマッチは引いて使う
足の甲(周辺の石、丸太などでも良い)にナイフを固定し、メタルマッチをナイフの背に当てた状態から一気に引き抜く。風で火口が飛んでしまうような状況でなければ、これが最も着火率の高い基本形となる(風がある時の方法は「METHOD.05」で紹介)。この方法の利点は、固定したナイフの真下に火種(火花)が落ちてくれること。つまり火種の行方を予想しやすく、結果的に火口に乗せやすいので着火率が上がるのである。
METHOD.02
ストライカーにはナイフが最適
多くのメタルマッチにはストライカーが付属しているが、どれもオマケ程
度の小さなもので力が込められない。反面、火熾しのために大きなスト
ライカーを持ち運ぶのも無駄なので、結果的に野営に必ず必要なナイフ
が最良のストライカーとなる。そもそもここで述べる定番メソッドはどれもナイフの使用を前提としたものだ。
METHOD.03
火口は小さく、薄く、細かくする
メタルマッチで起こした火花を小さな炎に昇華させるための火口。周囲に落ちている乾いた素材を薄く削いだり、細かく砕いたりして作る手法はもはや説明不要だろう。火花の僅かな熱に反応させる、酸素と触れる表面積を広く取ることを考えて加工すると、そのままでは着火しない素材でも良い火口となる場合があるので試してほしい。
METHOD.04
焚き付け時はジッと堪える
初心者が間違いを起こしやすいのが、火口の小さな炎を焚き付け(小枝etc)に移す場面。不用意に息を吹きかけてしまうと、焚き付けの可燃性ガスを引き出すのに必要な熱が逃げてしまい鎮火してしまう。この段階では焚き付けを火種にかぶせて熱を留めることに専念すべき。
METHOD.05
風がある時はメタルマッチで火口を抑えるのが確実
先ほど述べた通り、道具面ではメタルマッチ付属の小さなストライカーを使うより、力が込めやすいナイフの背を使った方が大きな火花が作れる。ナイフの背のエッジが鈍った場合は、周囲の石で荒研ぎし、エッジを付け直せば良い。動作面ではナイフのハンドル末端を地面や足先に当てて固定し、メタルマッチをナイフの背に押し当てながら引く方法が定番だが、風がある状況では下記の方法を採るとよい。
【コラム】
メタルマッチとマグネシウムは別物!?
一般的にメタルマッチ=マグネシウムと勘違いされやすいが、正解は鉄とセリウムの合金「フェロセリウム」だ。ただ、それが全くの見当違いかというとそうではなく、着火温度が低く火花を散らせやすいフェロセリウムと急激に酸化させると激しく光と熱を放出するマグネシウムの特性を用いて、より強力な火種を作るメタルマッチもある。例えば米軍が用いるメタルマッチがそれだ。
02.メタルマッチを想定した火口の実力検証
以下ではメタルマッチで熾した火花を小さな炎に成長させる火口について考えていきたい。火口に使える代表的な天然〜人工素材をピックアップしているが、いずれも火花の微小な熱で組織が分解し、可燃ガスを放出できる極細の毛や極薄のフィルムのような形状を有している。素材に含まれる油分の差こそあれ、この特徴的形状を備えた、あるいはナイフなどでそれを再現できる素材であれば、多くのものが火口となる可能性を秘めているのだ。
TINDER.01
樹皮(白樺)
[燃焼時間/30 秒] ※写真の火口サイズで検証
豊富な油分を内包した 天然火口の定番
着火性能
燃焼特性
TINDER.02
綿毛(ススキ)
[燃焼時間/1分] ※写真の火口サイズで検証
抜群の着火性を誇る綿毛の代表格
着火性能
燃焼特性
TINDER.03
麻紐
[燃焼時間/30秒] ※写真の火口サイズで検証
火口にも使える定番の工作アイテム
着火性能
燃焼特性
TINDER.04
ファットウッド
[燃焼時間/1分30秒] ※写真の削り出したサイズで検証
省エネ性にも優れた火熾し専用品
着火性能
燃焼特性
TINDER.05
軍手
[燃焼時間/2分] ※写真の火口サイズで検証
専用着火剤に劣らぬ隠れた実力派
着火性能
燃焼特性
03.市販着火剤の実力検証
ここからはとにかく一度メタルマッチで火を熾してみたいというエントリー層、あるいは天候に関わらずガンガン焚火を楽しみたいヘビーユーザーに向けて、8種の市販の着火剤にメタルマッチで火を付ける実証テストを行った。結果はどれも大変優秀であり、ほぼ100%の確立で火熾しが可能だろう。
LIGHT MY FIRE[ライトマイファイヤー]
ティンダーオンアロープ
メタルマッチによる火熾しの大定番火口
着火性ランク:B
燃焼時間:約1分14秒 ※写真の分量による編集部調べ
UNIFLAME[ユニフレーム]
森の着火材
天然素材を用いて長時間燃焼を実現
着火性ランク:B+
燃焼時間:約7分20秒 ※写真の分量による編集部調べ
CAPTAIN STAG[キャプテンスタッグ]
ペーパー着火剤
持ち運びにも便利な玄人御用達の逸品
着火性ランク:A
燃焼時間:約4分10秒 ※写真の分量による編集部調べ
Esbit[エスビット]
固形燃料スタンダード
お湯も沸かせる信頼の固形燃料
着火性ランク:A
燃焼時間:約4分58秒 ※写真の分量による編集部調べ
NITINEN[ニチネン]
チャッカネン
抜群の入手性を誇る最も身近な着火剤
着火性ランク:A+
燃焼時間:約5分18秒 ※写真の分量による編集部調べ
LOGOS[ロゴス]
防水ファイアーライター
あらゆる局面で使える高い万能性が魅力
着火性ランク:A+
燃焼時間:約6分21秒 ※写真の分量による編集部調べ
Weber[ウェーバー]
ライターキューブ
天然素材を用いながらも高い着火性を発揮
着火性ランク:A
燃焼時間:約4分23秒 ※写真の分量による編集部調べ
Live Fire Gear[ライブファイヤーギア]
ライブファイヤー スポーツ シングル
メタルマッチのための超・省エネ着火剤
着火性ランク:B+
燃焼時間:測定不能