
涼菓お取り寄せゲーム
ぞくにいう「お取り寄せ」をした。
関東には、空港にしか店がないのだ。
お取り寄せは、おとなのたしなみ、という感じがして気分が高揚する。
でも現物を手にとって吟味できる訳ではないし、味も分からない。
商品名や商品説明、レビュー頼りのいちかばちか、である。まさに「おとなの」たしなみ。
水ようかんのような新食感に、栗の豊かな風味を引き出した「水モンブラン」と、砂糖を一切加えずに、きよみオレンジ約1.5個を贅沢に使った、みずみずしい洋生ゼリー「きよみの滴」を詰め合わせました。
《水モンブラン》に《きよみの滴》。
名前だけでマイナス0,3℃の清涼感がある。まさに、涼しさをかさねた涼菓の詰め合わせ。
栗と柑橘という組み合わせも目新しい。
マールブランシュなら間違いなかろう、と即決した。
注文してから数日、ゲームのコントローラーのような箱が届いた。

秋先取りのモンブランと、冬先取りのみかん。
みかんのゼリーはあまたあれど、水モンブランとはこれいかに。

モンブランのしぼりが、容器にまで再現されている。

容器から出してもなお、モンブラン感。そしてほんのすこしのそうめん感。
さっぱりしているのか、濃厚なのかいまいち想像がつかない。
マールブランシュの栞には、ご丁寧に口どけのチャート図が載っている。

つるんとしたのどごしから、濃厚な香りと味が口いっぱいに広がって、余韻を残して消えていく、という感じだろうか。
「スーッ・・・」がちょっとおもしろい。無言でスーを差し出してくる。

こういうクッションがあったらほしい。
くりぬいたところに、どすんとおしりを預けたい。
そして、チャート図にいつわりなし。
つるんとした舌ざわり、なめらかなのどごしから、まったりした栗と香り高いラム酒の風味がとろりと広がる。
ぷるぷるな見た目に反して、味はしっかりケーキのモンブラン。
濃厚なのに、甘さが口に残ることはなく、鼻から抜ける香りを残しながら消えていく。
たしかに、スーッ、ではなく、スーッ・・・である。
この三点リーダ―には、いつまでも味わっていたいという人間の心理まで反映されているような気がする。
夏にぴったりだし、ケーキのモンブランはクリームやスポンジがもたれてちょっと、というときにうれしい汎用性の高いモンブランである。
一方、きよみの滴。
きよみオレンジ、といいつつ、属性はみかん。

ネーミングの妙は認めつつ、安心安全のみかんゼリーでしょう、とあなどってかかる。

あなどったせいか、はぐれメタルのようになってしまった。
こちらがみがまえるまえにおそってきたり、すぐににげだしたりしないでほしい。
砂糖をいっさい加えずに、きよみオレンジ約1.5個をぜいたくに使っているというから、素材そのものの味が楽しめるだろう。

こちらも、果汁が弾けてきよみオレンジの風味が口いっぱいに広がり、さわやかな余韻を残しながら消えていくさまが分かりやすい。
こちらは「スーッ・・・」ではなく「スッ・・・」。

くりぬこうとしたら、本物のスライムのようになってしまった。
諦めてさっさと頂くと、やわらかくつるんとした舌ざわりのすぐあとに、ストレートな酸味が速攻訪れて驚く。
チャート図を少々あなどっていた。
砂糖不使用のため、こちらがみがまえる前にしっかりと酸っぱい。
図を再度見ると、ちゃんと先に酸味が書かれている。
しかし、えぐるような酸味ではなく、風が吹き抜けるようなさわやかな酸っぱさである。そのあとに、みかん本来の甘みが迎えにくる。
余計なものは入れず、まさにきよみの滴をあつめた、きよらかなゼリー。
そして、後味はたしかにスーッ・・・ではなく、スッ・・・である。
砂糖が使われていないからか、後味も逃げ足がはやい。
手軽に入手できるみかんゼリーではないし、後味もすぐに消えてしまうが、食べるとなにかがレベルアップしそう。
やはり正体ははぐれメタルなのかもしれない。
それにしても、《水モンブラン》に《きよみの滴》とは秀逸なネーミングだ。
わかりそうでわからなくて、でも魅力的。
自分が開発者なら《高汎用性モンブラン》に《はぐれメタルきよみ》とつけて、周囲から猛反対される。
高汎用性モンブランはWORKMANで売っていそうだし、はぐれメタルきよみは新宿2丁目にいそうだ。
ともかく、このお取り寄せは大正解・大成功・大好物だった。スーを差し上げたい。